災害サプライチェーンリスクを可視化する方法

事故・災害リスク

サプライチェーンは、生産者から消費者まで商品が届けられる工程を示したものです。
災害が起こった時、サプライチェーンには大きなリスクが生じることとなるのですが、問題を早急に解決するには災害サプライチェーンリスクを可視化しておく必要があります。
災害サプライチェーンリスクを可視化する方法を、解説します。

災害サプライチェーンとは?

サプライチェーンは、サプライ(supply・供給)をチェーン(chain・鎖)として例えたものです。
商品の原料の生産者から、消費者の元に届くまでの一連の流れを示しています。

サプライチェーンは、原料の調達、製造、在庫管理、物流、販売、消費などの段階に分けられます。
ただし、1つの段階を複数に細分化したり、チェーンの先が複数に分かれたりすることもあります。

例えば、スマートフォンのサプライチェーンを示すと、最初に原材料を手に入れて部品を作成し、金属フレームや液晶パネル、半導体などの部品を調達します。
部品は工場で組み立てていき、また別のスマートフォンのパーツを製造し、全体を組み立ててスマートフォン本体を作り上げます。

スマートフォンが完成したら、専門店や倉庫に配送します。
スマートフォン専門店で販売し、倉庫に配送された分は専門店で売り切れた時の在庫、もしくは通信販売の注文に応じて発送することとなります。

商品が消費者の手元に届くまでの間には、いくつもの過程を経ているのです。
米のようにほぼそのまま届く商品であっても、収穫から脱穀などをして検査をし、袋に詰めて出荷され、販売店や倉庫に運ばれるなどの過程を経ています。

しかし、一般的なサプライチェーンは、何事も起こっていない状態を基準としています。
自然災害などが起こってしまうと、サプライチェーンは機能しなくなるのです。
災害時に備えるために、災害サプライチェーンを考えておいた方がいいでしょう。

災害サプライチェーンは、災害時に機能するサプライチェーンです。
例えば、台風が来た時に操業が止まる可能性が高い工場であれば、別の工場で調達できるように準備しておくのです。

流通に関しても、複数の配送業者を利用していれば、災害が起こった時に動くことのできる配送業者を選んで依頼できるでしょう。
災害時でも、問題なく動くことができるように備えておくのが、災害サプライチェーンです。

ただし、普段は全く利用していないのに災害時だけ頼んでも、対応してもらえない可能性が高いでしょう。
災害サプライチェーンを機能させるには、普段から利用しておく必要があります。

災害時に備えるのであれば、普段から最低3か所は利用できるようにしておくべきです。
メインとなる利用先が5割、サブが3割、非常時の備えとなる利用先を1割以上として利用しておけば、いざという時に利用する量を増やしても対応できるでしょう。

災害サプライチェーンリスクの可視化

災害サプライチェーンは、いざという時の備えになります。
しかし、リスクについても把握しておかなければ、常に不安を抱えたままの運用となってしまうかもしれません。

災害サプライチェーンのリスクは、出来るだけ可視化しておくのが望ましいのです。
可視化しておくことで、リスクと対策を具体的に考えることができるようになります。
可視化すると、リスクというのは何なのか、どの程度のものか、対応策は何かを明確にできるのです。

災害サプライチェーンリスクへの対応ができていない場合、迅速な対応が必要となる災害時において、自社がサプライチェーンリスクの起点となってしまう可能性があります。
結果、多くの取引先に迷惑をかけてしまうことになるでしょう。

通常のサプライチェーンリスクについても、もちろん備えておく必要はあります。
しかし、災害サプライチェーンは更に対応が重要となるのです。
なぜかというと、災害時は代替手段も簡単には用意できないからです。

リスクを可視化する方法は、いくつかあります。
1つは、箇条書きの様に起こりうるリスクと関連情報を書き出していく方法です。
1人で考えて書き出していくよりも、複数人で議論をする形で洗い出していった方が、多角的な考え方も出来て抜けているものも少ないでしょう。

災害サプライチェーンリスクでは、サプライチェーン全体で起こりうるリスクか、一部のステップで起こりうるリスクかを判断し、起こる可能性がある場所に可視化したリスクを振り分けます。
どのステップで、何に気を付ければいいのか、一目でわかるようにしておきましょう。

もう1つは、リスクマップ、もしくはリスクマトリクスと呼ばれる方法です。
リスクマップというのは、リスクを図表で示し、発生頻度や影響度を記載するものです。
縦軸で影響度、横軸で発生頻度を示して、リスクの等級を5段階に分けていくというのが、一般的な方法です。

リスクを可視化して、対策を講じる優先度の高いリスクが一目でわかるため、リスク対策を的確に考えていく際には非常に便利です。
ただし、影響度が大きい、発生頻度が高いリスクの対策だけをしておけばいいというわけではないので、注意しましょう。
発生頻度、影響度共に少ないリスクであれば、対策は後回しになっても問題ありません。
経営資源にも限りがあるので、全てのリスクに常に備えておくことは無理でしょう。
しかし、発生頻度と影響度のどちらかが高いリスクであれば、対策を講じておくべきでしょう。

リスクについて把握して、対策を行うプロセスをリスクマネジメントといいます。
リスクを洗い出して、分析や評価を行い、適切な対策を講じるためのもので、リスクマップを作成する際も用いられます。

近年は、AIが多くのデータを蓄積して分析していることで、リスクの予測もかなり正確にできるようになっています。
災害サプライチェーンリスクに備えるには、AIによるリスク予測も取り入れるのもおすすめです。

まとめ

通常のサプライチェーンとは違い、災害サプライチェーンでは災害時でも正常にサプライチェーンが機能することが優先となります。
普段のサプライチェーンとは重視する点が異なるため、リスクについても異なるのです。
災害サプライチェーンリスクに関しては、混乱を防ぐためにも可視化しておくべきでしょう。
可視化をする際は、リスクマネジメントによってリスクマップを作成するのがおすすめです。