ニューノーマル時代のサプライチェーンマネジメントとは?

事故・災害リスク

新型コロナウイルスの感染拡大は、人々の生活に大きな影響を及ぼしました。
サプライチェーンも従来の形からは変化が求められ、デジタル化が必要という声も上がり多くの変化が生じています。
ニューノーマル時代において必要とされる、サプライチェーンマネジメントとはいったいどのようなことなのか、解説します。

サプライチェーンの可視化

新型コロナウイルスが発生した当初、中国を中心としてサプライヤの操業、出荷が停止され、日本企業の中にも部品の調達において多大な影響を受けたところは少なくありません。

また、日本や欧米でも感染が拡大していく中で、自社の生産や物流に大きな影響が生じてしまい、対処に悩んだ企業も多いでしょう。
一度ピークを迎えた後も、再拡大のリスクに備える必要がありました。

多くのリスクと共存することとなったニューノーマル時代は、サプライチェーンマネジメントにも非常時への備えが求められます。
改めて、自社のサプライチェーンについて能力やリスクを正確に把握していないことに気づいた企業が多く、再確認が必要となりました。

過去に様々な災害があったことで、ある程度リスクについても把握してBCP対策ができていると考えていた企業も多かったのですが、同時多発的にリスクが顕在化したことで対応に追われ、対策が不十分だったことに気づくこととなりました。

まず求められるのが、需給調整に必要となるサプライチェーンのリスクを可視化することです。
サプライチェーンのリスクは、調達、生産、物流、需給調整の4つに分けられます。

調達において可視化が必要なのは、サプライヤの階層と生産能力の可視化です。
生産能力というのは、生産拠点ごとの生産・供給能力のことで、全体ではなく拠点ごとに把握しておき、生産ができなくなった拠点を把握することで低下する生産能力もわかるようにして、代替となるサプライヤも確保しておきます。

機械メーカーの中には過去の震災や洪水から学び、直接取引するサプライヤだけではなく4~6階層下までの部品サプライヤの生産拠点まで把握して、生産拠点のエリアを分散せることを意識しているところもあります。

生産リスクの可視化では、生産拠点や製品ごとのハード面での可視化があり、多くの企業が取り組んでいます。
今後はハードだけではなく、従業員や原材料などのソフト面での可視化も必要となるでしょう。

物流リスクは、自社や物流拠点の保管能力の可視化、並びに業務に必要となるリソースとして従業員や製品在庫などのソフト面の可視化が必要となります。
物流拠点の中には多段階の倉庫を持つケースもあり、一拠点が機能不全になると他の拠点にも影響することがあるため、配送手段や代替方法の確保も必要です。

需給調整は、意思決定における前提条件を可視化しなければいけません。
到達や生産、物流の能力やリスクだけではなく、既存顧客やオーダーも可視化して、いざという時の優先順位などの方針を可視化する必要があります。

サプライチェーンの多重化

サプライチェーンは、ビジネスのグローバル化に伴って広範囲に広がり、複雑になってしまっているため、シンプルになるよう見直そうとしてきました。
しかし、シンプルにしすぎたことで対応できないケースもあり、ビジネスが止まってしまうこともありました。

サプライチェーンは、多重化が求められています。
多重化するポイントには、調達や生産、物流、需給調整の4点があります。
それぞれのポイントで、どのように多重化するのかを解説します。

調達において多重化が必要とされるのは、サプライヤとキーパーツ管理です。
サプライヤの多重化は、調達カテゴリごとのサプライヤパネルを整備して、情報を整理しましょう。

いざという時に調達できるように、切り替えについても事前に調整しておくことが求められます。
とある電子機器メーカーでは、普段から主力6割、準主力3割、代替候補1割と3か所以上に分けて発注するルールを定めています。

キーパーツは、サプライヤの多重化に合わせて保管する拠点を分散し、多重化する必要があります。
企業によっては、日常の開発レベルからキーパーツの切り替えや使用量の抑制など、リスクを抑える試みをしているところもあります。

生産の多重化は、生産を複数の工場でできるようにしておくことです。
生産できる工場を増やすには、計画から実行までのプロセスや生産指示の共通言語のBOMの標準化などが必要となるでしょう。

物流は、複数拠点からの輸送体制を確保することを考えて、自社レベルだけの多重化ではなく、他社と共同配送や汎用品を扱う場合のスワップ協定の構築などが、多重化するためのポイントになります。

切り替えに向けては、手配プロセスや品質に関する事前調整などが必要です。
顧客側から生産ラインや供給ルートの指定、もしくは認証がある場合は、顧客を巻き込んで事前の調整をする必要があるでしょう。

需給調整においては、調達や生産、物流能力を多重化したうえで、グローバルレベルで一元化することが必要です。
同時に、顧客の需要情報についてもグローバルレベルで一元化することが前提となります。

限られた選択肢の中から、最適な意思決定をするための基準やプロセスを作り上げることも必要で、さらに意思決定の機能や権限も多重化している企業もあります。
メーカーの中には、本社や各エリアの統括会社が被災したケースに備え、意思決定の代替ルールを定めて役割を整備しているところもあります。

ビジネスにおいて、様々な変化が訪れているニューノーマル時代では、サプライチェーンマネジメントも従来通りというわけにはいきません。
今までとは異なる形で、必要な機能を備えた形へと変化させていく必要があるのです。

まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、サプライチェーンにも変化が現れました。
従来のサプライチェーンでは、物流が滞るなどの大きな影響が生じることもあったため、ニューノーマル時代に合わせたサプライチェーンマネジメントが必要とされるようになったのです。
サプライチェーンには、可視化や多重化が求められ、常に代替手段を確保しておくことも必要となっています。