新たに誕生したサービスが瞬く間に拡大し、既存産業を脅かすデジタルディスラプション。

経営戦略

新たに誕生したサービスによって、既存産業がダメージを受ける例は珍しくありません。
昔からある現象ですが、近年はデジタル企業の台頭が増えて既存産業がダメージを受ける例が増えています。
デジタルディスラプションと言われる現象が起こっているのですが、具体的にはどのような現象なのでしょうか?

デジタルディスラプションとは

デジタルディスラプションは、デジタルによる崩壊(disruption)ということです。
デジタル技術によってもたらされる破壊的イノベーションのことで、デジタル企業が台頭することで既存産業がダメージを受けて市場が崩壊することを指しています。

特に顕著なのが、インターネット動画配信サービスの増加です。
毎月定額で自由に動画を見ることが出来るサービスが広まったことで、既存のレンタルビデオ業界は支城が大幅に縮小しています。

小売業界も、Amazonが登場したことで市場が崩壊の危機を迎えています。
経営破綻に追い込まれている小売店も増えていて、ニッチなサービスを見つけて独自の価値をアピールすることで生き残る小売店も増えています。

デジタルディスラプションは海外で起こっている事態だと思っている人も多いのですが、実は日本でも様々な分野でデジタルディスラプションが生じています。
いくつかの事例について、紹介します。

子供服を中心としたリサイクルショップを展開する企業は、最盛期には国内に74店舗ありました。
しかし、最終的には破産してしまったのです。

破産の原因となったのは、急速に台頭したフリマアプリです。
顧客も商材も奪われてしまったため、経営が立ち行かなくなったのです。
スマホ完結型サービスを構築して、既存ビジネスとは異なる付加価値があるサービスによるデジタルディスラプションによって、破産に追い込まれてしまいました。

全国に161店舗を展開する老舗の中規模書店チェーンでは、インターネット通販で本を購入する人が増え、デジタルコンテンツも腐朽したことで売り上げが悪化したため、私的整理の一種である事業再生ADRを申請し、受理されました。

インターネットでの書籍販売やデジタルコンテンツでは、デジタルデータによる課題の数値化で短サイクルの効果検証を繰り返し、さらに改善するために業務プロセスを見直して全体最適化を図って、リアル店舗よりも競争力を高めることを目指しています。

デジタル企業も、後発のデジタル企業によってデジタルディスラプションを受ける例もあります。
かつてはアクティブユーザー数が1500万人を超えていた人気のコミュニティサイトは、米国企業の実名制コミュニティサイトが日本に来たことで敗北しました。

既存のコミュニティサイトは匿名制であり、実名制へと移行することも検討していたものの既存ユーザーに忖度したことで移行が遅れていて、実行する前に後発企業が日本市場へと進出してきたのです。

実名制はデータが正確になるため、広告のターゲティング制度が高まります。
知り合いの可能性がある相手を自動で表示する機能もあり、高いネットワーク効果によってユーザーを拡大しました。

携帯ゲーム業界をけん引していた企業は、2012年から業績が低迷し、2018年には約3分の1まで落ち込んでいました。
スマホゲームが増える中で、これまでのガラケー向けの自社プラットフォームにこだわったせいで乗り遅れてしまいました。

なぜ、デジタルディスラプションが起こるのか

デジタルディスラプションが起こる原因は、まずイノベーションのジレンマです。
業界でトップクラスのシェアを誇る企業が、顧客の意見を聞き入れて製品サービスを改良していくことに力を入れている間に、破壊的イノベーションへの対応が遅れてしまい市場でのリーダーシップを失うことがあります。

かつての世界最大の写真用品メーカーも、デジタルカメラの普及に伴う市場拡大に乗り遅れたことで、経営破綻に陥ってしまいました。
デジタルカメラ自体は開発していたものの、当時は性能が劣っていたため軽視していたのが原因です。

日本企業がDXを進める際に問題となるのが、人材不足です。
特に、ICT人材企業に偏在していることが問題となります。
また、既存のシステムもDX推進の妨げとなっています。

既存システムの機能が制約となってしまい、ビジネスプロセスの変更が困難になっている例があります。
また、既存システムから必要データを取り出すことが出来ないケースや、WEBサイトやスマホアプリとの連携ができないケースもあります。

破壊的イノベーションを起こす企業の多くは、DXによって新たな価値創造に取り組んでいます。
しかし、日本企業のDXは、社内業務を効率化することが目的となっていることが問題となります。

デジタル技術は業務効率化に適しているものの、生き残るためにはデジタルを前提とした組織が求められます。
新しい製品やサービスを通じて、新たな価値を創出していくデジタル・トランスフォーメーションに取り組む必要があります。

デジタルディスラプションへの対処として、自社でDXによる新たな価値を生み出していかなくてはいけません。
DXの進め方で、特に気をつけたい点とはどこでしょうか?

まずは、組織を改革して推進体制を構築しなくてはいけません。
日本では経営層が関与しないことが多いと言われているため、DX推進のためには経営層が深く理解して、企業全体を巻き込む必要があるでしょう。

デジタル・トランスフォーメーションは、制度や規制、文化、慣習によって実施が阻害される例もあります。
法制度など、時間がかかることもあるものの、業務をデジタルで完結できないような手続きやリモート勤務を認めない就業規則、セキュリティポリシーなど、社内で取り組むことが出来る点は多いので、まずは社内から始めましょう。

デジタル・トランスフォーメーションの推進には、デジタル技術に詳しいだけではなくビジネスへの理解やデジタルデザインのスキルがある人が求められます。
必要に応じて、外部のリソースも利用しましょう。

まとめ

老舗で、以前からのやり方にこだわっている企業の中には、デジタル企業の台頭によって市場を奪われ、倒産してしまう企業もあります。
デジタル企業によって市場が崩壊することをデジタルディスラプションといい、実際に多くの企業が業績を悪化させています。
デジタルディスラプションに対抗できる企業づくりには、DXの推進が必要です。
DXを推進できる企業となるため、人材の確保にも努めましょう。