若者の大量退職時代に考えるDEI&Bの「B」Belongingの重要性。

事業運営リスク

2021年から、米国では若者の大量離職が重大な社会問題になっています。
日本でも同様の兆候が見える現在、企業はD&Iを重視するようになりました。
D&IにはさらにEquityが加わってDE&Iと言われるようになったのですが、米国ではさらにBが加わってDEI&Bという概念が登場しています。
DEI&BのBとは何か、解説します。

DEI&BのBとは?

The Great Resignation(大量離職時代)と呼ばれる、米国で起こっている社会問題は、日本でも起こり得るのではないかと考えられていて、実際にその兆候が表れています。
日本の企業は、若者の大量離職に備える必要があります。

若者の大量離職の背景には、先輩や上司に対する考え方の変化があると考えられています。
かつては悩みを打ち明けて将来の夢を共有できる先輩が、今は取り繕った姿だけを見せる評価者と考えるようになったのです。

心を開くことができない上司と1on1ミーティングを行ったとしても、問題は解決しません。
特に、若い世代は協調性を重視するため、本心を隠すのも上手いのです。

上司が部下の気持ちや不満を知るためには、まず心を開いてもらわなくてはいけません。
本心を隠したままだと、上司からは推し量ることができないのです。
本心を知らないままだと、満足そうに見えていたにもかかわらず、いきなり退職してしまう、ということがあるのです。

既に大量離職が社会問題となっている米国では、企業文化の改革として掲げていたDE&Iという概念にBを加えた、DEI&Bという新たな概念が生まれています。
BはBelonging(帰属意識)という意味で、組織やグループの一員として自分が認められているという安心感を指します。

日本の企業では、以前から帰属意識を重視していました。
しかし、日本の企業の帰属意識は多くの場合、従業員が企業の一員ということを意識して、企業に利益をもたらすのが自分のためになる、という考え方を持つことととらえられています。

DEI&BのBは、企業のために従業員があるという考え方ではありません。
心理的安全性が保たれた居場所が企業にある、という考え方が中心であり、どちらかと言えば従業員が企業に所属することにメリットがあるという考え方です。

Simmons UniversityのInstitute for Inclusive Leadershipでは、職場環境のDEI&BにおいてBelongingを高めるためには、心理的安全性の確保と意図的に会議などの意思決定の場に巻き込んで参加機会を与えることというアクションが重要と定義しています。

なぜ新たな概念が加わったのかというと、企業担当者の立場になって考えた場合はD(多様性)もE(公平性)もI(包括性)も用意して、より良い職場づくりに尽力していると言えるかもしれないのですが、働いている従業員が居場所として感じられない場合は、いくら努力しても一方通行でしかありません。

働いている個人の観点から見た場合は、自分をありのままで受け入れてくれる、理解してくれると感じる居場所になる、Belongingが重要になります。

大量の離職者が出ている現代、企業では会社視点での正解に寄り添うだけの現状を解消する必要があります。
企業に求められているのは、個人の主観的視点や気持ちに寄り添っていくことです。

Belongingを実現するために

企業の中には、従業員の個性や考え方を理解して受け入れるのではなく、会社が求める人材となるために社風を黙って受け入れ、自分を求められたように変えていくことを求めるところもあります。

しかし、今は時代が変わっています。
若い世代には、Belongingとしてありのままの自分を理解してもらえ、受け入れられる企業が必要となっているのです。

日本の企業は、Belongingを重視するように変化しているでしょうか?
意識を変化させている企業も増えていますが、まだまだ旧態依然とした企業が多いのが実情です。

新型コロナウイルスの感染拡大という、これまでの生活様式を一変させるような大きな出来事があって長く続いたことで、若い世代は自分の働く企業を改めて見返し、今後の働き方について考えるようになりました。

若い世代の従業員は自分の気持ちを改めて考えて、気持ちに正直になろうと考えたことで、大量の退職者が出始めているのです。
若手を抜擢する仕組みがあれば、若い世代の成長を支援してBelongingを実現できるのではないか、という考えも出始めています。

大量の離職者が出る大きな原因は、企業が従業員に成長の機会を提供していないという点を従業員が不満に思っていることです。
米国では、不満の解決策としてリスキリングが注目を集めています。

リスキリングというのは、技術革新やビジネスモデルの変化に対応できるように、新たな知識やスキルを学ぶことです。
2020年にダボス会議で発表され、岸田総理も所信表明の中で、5年間で1兆円を投資すると表明し、新語・流行語大賞にもノミネートされました。

企業で働く個人に期待している場合は、リスキリングを実施することで従業員に投資をして、成長を支援していくべきでしょう。
リスキリングを実施することで、働く場所としてのBelongingを創出する支えとなるのです。

Z世代は学ぶ世代であり、18歳から24歳までの若者の80%近くは、学習がキャリアを成功させるカギになると考えて行動に移しています。
学習のためにも、リスキリングは必要な制度と言えるでしょう。

米国では、若者の大量離職を防ぐために、リスキリングを重視しています。
日本でも注目が集まってきていいるのですが、実際に実施している企業はまだそれほど多くありません。

企業は雇用を流動化することも大切ですが、個人の成長する機械を創出することも大切です。
創出できない場合は、従業員がBelongingを感じることができず、若い世代を中心として日本でも大量退職時代がやってくる可能性があります。
変化を受け入れず、ありのままの企業でいると、優秀な人材も流出してしまうかもしれません。

まとめ

米国で起こっている若者の大量離職は、決して他人事ではありません。
既に、日本でも同様の問題が起こる兆候があります。
企業では、従業員がすぐに仕事を辞めないよう、Belongingを重視した組織作りが必要とされます。
リスキニングを実施して、従業員に成長の機会を与えるようにしましょう。
日本で大量離職という事態が起こらないように、企業は必要に応じて変化していく必要があるでしょう。