介護の現場/外国人受入れ問題

平成28年11月に交付された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」により、平成29年11月1日の施行から技能実習制度の対象になる職種に介護職種が追加されます。
将来的な日本の超高齢化社会にあわせて、今後は質の高い介護職員を養成していくことが必要になると考えられるでしょう。
ただし介護の現場では介護に対する知識や技術、倫理が大変重要になる対人援助サービスですので、外国人労働者などを受入れるにあたり注意しておくべき問題を理解しておく必要があります。


日本語でのコミュニケーション能力は十分か
介護を行うということは、身体的な技術以外に言葉で働きかけることも重要ですので、外国人労働者が日本の介護現場で働く場合には日本語でのコミュニケーション能力を必要不可欠とします。
そのためにも本来であれば、先に日本人の介護職員の処遇を改善し労働環境を整備することが優先されるべきだと言えるでしょう。
能力の高い外国人労働者なら受入れるべき?
特定の国や地域間に生ずる関税などを撤廃して、サービスやモノの貿易自由化を図る目的で締結されるFTA(自由貿易協定)を基準に、さらに経済関係が強化することが目的の協定にEPA(経済連携協定)があります。
介護現場においてのEPAは、日本の介護を学ぶこと以外に一定レベルの日本語取得が要件になっています。
EPAで資格を取得し、日本の介護現場で実際に働いた外国人が、帰国した母国で中核的な人材になれることは素晴らしいことだと言えます。
そしてEPAと同じく、日本で介護福祉士を取得した外国人も一定の知識や技術を備えていると考えられるので、介護現場で働き続けて行くことに問題はないでしょう。
それでもやはり日本語でのコミュニケーション能力が備わっていることが必要です。
実際に介護現場で起きている外国人労働者の問題
しかし、一定の能力が備わっていると判断できる介護福祉士の資格を取得していたとしても、実際の介護現場では色々な問題が存在しています。
例えば実際に報告されている問題だけでも、次のようなことが挙げられます。

・外国人労働者に教育ができないことで、実態的には皿洗いなど簡易的な作業が仕事になっている外国人が多く、それでも給与は日本人介護職員と同等であること

・外国人労働者は入浴介護を安全に行うことができるかというレベルで、周囲が観察し続ける必要性があること

・実際の業務はできていないのに、資格を有していることで給与のことばかりを主張するといった権利の訴えを強く行う外国人労働者がいること

・日常的会話はできたとしても専門性が必要な会話は成立しないこと

・給与などに不満を持ったことや帰国などをきっかけに、電話一本なく辞めていく人がいること
外国人労働者の受入れを人材不足解消に繋げるには
一定の能力が評価される外国人労働者の受入れについては、単純に量を増やすのではなく実際に介護業務ができる外国人労働者でなければ人材不足を解消することにはなりません。
現場における様々な問題を解決するためにも、コストや手間、さらに配慮などといった部分をどのように対応していくかを検討することが必要になると言えます。