スイスチーズモデルで組織事故を考える

スイスチーズモデルというのを聞いたことがあるでしょうか?
安全管理のモデルとしてよく引用されており、特に組織事故について考える際はスイスチーズモデルを引用することが多いのですが、具体的にはどういった考え方なのでしょう。
今回は、こうした考え方について、解説していきます。

スイスチーズモデルとは

スイスチーズモデルというのは、スイスチーズをモチーフとしたリスク管理の考え方です。
スイスチーズというのは、チーズの中でも内部にボコボコと穴が開いているチーズのことで、スイスチーズモデルではそのチーズを薄切りにしたものを何枚も重ねた状態をイメージします。

内部に穴が開いているとはいっても、その穴は不規則なものです。
一つ二つを重ねたとしてもどこかの穴は重なるかもしれませんが、枚数を重ねるうちに隙間が埋まっていくため、徐々にその穴が最後まで通じる可能性は低くなるでしょう。

リスク管理においても同様に考えて、1つの考えに基づいた防護壁では事故が起こる可能性が高くても、異なる視点からの防護壁を複数組み合わせることでその安全性は高まっていきます。
1つでは完璧な防護壁はなくても、いくつも重ねることで完璧に近づいてくだろうというのがスイスチーズモデルです。

事故というのは、こうした隙間を通り抜けることで生じるというのが、スイスチーズモデルにおける事故の考え方です。
そしてその原因となるのは、個人だけではなく様々な人の影響や組織的な問題が要因となることが多い、とされています。

どういうことかといえば、チーズの穴はランダムとはいえ、探せば近い場所に穴が開いているピースも見つかり、またうっかりと穴が一直線に揃うような角度でピースを並べてしまうこともあるでしょう。
そういったヒューマンエラーが、事故を引き起こすと考えられるのです。

このモデルを考えたのは、ジェームズ・リーズンというイギリスの心理学者ですが、日本人はあまりスイスチーズに馴染みがないので、ピンとこない人もいるかもしれません。
しかし、絵本やアニメ、イラストなどでは代表的なチーズとして穴あきチーズが登場することが多いため、イメージは出来るでしょう。

組織事故

医療事故を代表とする、組織事故について考える際にはスイスチーズモデルがよく用いられます。
その際には、エラーの種類として潜在的、もしくは即発的の2種類へとハッキリ分けて考えています。

そのうち、特に注目されるのは即発的とされるエラーです。
これは、事故の直接的な原因となりうるエラーを指しているもので、ヒューマンエラーだけではなく設備やシステムのエラーなども含んでいます。
それらのエラーが原因となり、事故を発生させる、もしくはその可能性がある場合に、即発的エラーといわれます。

なぜそのようなエラーが起こるかというと、その背景としてあるのが組織的、もしくは局所的とみられる潜在的な要因です。
その要因がいくつも存在する中で、エラーが生じるとそれが引き金となり事故が発生することになります。

スイスチーズモデルでは、チーズの穴を潜在的な要因のイメージとして、その穴を通り抜けていくのが即発的エラーと考えます。
つまり、潜在的なエラーが顕在化したものが、即発的なエラーということになるのです。

こうしたエラーは単発的に発生するのではなく、複数のエラーの連鎖、もしくは組織的な発生をすることから、事故というのはそのほとんどが組織事故に該当する、と考えられています。

こうした事故を防ぐために、防護壁となるチェックをさらに増やすことを考える場合も多いのですが、それでも穴がある以上は完璧に防げるものではないでしょう。
事故の可能性をなるべく減らすためには、絶え間なく安全管理を続けていくしかありません。

まとめ

多重に防護壁を用意しても、その穴を通り抜けていくエラーが生じることで事故は発生します。
防護壁に空いている穴というのは、完全に塞ぐことは難しいのが現状です。
こうした穴が開いた防護壁を例えて、スイスチーズモデルといいます。
起こりうる事故の多くは、こうした穴を人為的なミスが通り抜けていくヒューマンエラーによるものとされているので、安全性を高めるには安全管理を欠かさないようにしていきましょう。

 

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