事業承継において想定される問題はどこにあるのか?

経営戦略

事業承継は、そもそも後継者がいないなどの問題を抱えている人が行うものであり、その解決策としてはM&Aや売却などがあります。
しかし、事業承継をする際にもいくつかの問題点が想定されます。
具体的には、どのような問題点があるのでしょうか?
また、それらはどう解決するべきでしょうか?

事業承継の問題点とは?

事業承継は経営者が決断するべき問題ですが、その影響は経営者だけではなくその会社で働く従業員、あるいは取引先にも及びます。
責任を放棄すると、従業員や取引先のリスクとなってしまうのです。

これまで事業を経営してきたことで、技術やノウハウは長い時間をかけて蓄積されているため、それを次の世代へと引き継いでいくのも経営者の大事な役割です。
そのためにも解決したいのが、事業承継の問題点です。

事業承継においてまず考えたいのが、従業員の雇用を守ることです。
後継者がいないまま廃業となった場合は解雇せざるを得ないのですが、事業承継が成功したとしてもやはり従業員のことは考えなくてはいけません。

中小企業の場合、古くから働いているベテラン従業員も少なくありません。
長い間苦楽を共にしてきた従業員に対しては、納得のいく説明をしておくべきでしょう。
たとえ合併などの選択肢を取ることになっても、従業員を守るのは経営者の大事な仕事です。

経営者が変わることで、従業員の反発が起こって経営陣と対立してしまう可能性もあります。
特に経営者の子どもが跡を継いだ場合、経営方針が変更される可能性も高くベテラン従業員からの反対が起こりやすいでしょう。

この対立をうまくまとめることができればいいのですが、まとまらなかった場合は大量の退職者が出る可能性もあります。
事業承継の際は、従業員に理解してもらうことも必要となるのです。

事業承継をする企業が、これまで順風満帆な経営をしてきたとは限りません。
事業自体は黒字でも、設備投資などで多額の負債を抱えていることもあり、その場合は個人保証も後継者が引き継ぐよう、銀行から求められることも考えられます。

すでにある会社の経営を引き継ぐのに、多額の負債があるマイナスからのスタートとなるのは避けたい人が多いでしょう。
また、これまで通りに経営できるとも限らないのです。

なぜかと言えば、経営者の個人保証は企業への信用があってこそですが、それ以外にも経営者自身の信用も担保としているため、後継者がそのまま保証できるとは限らないのです。そのため、金銭面には注意しましょう。

経営者の死亡によって事業を承継し、企業の保有する資産も相続させるのであれば、経営者が遺書を作成して次の経営者を選んで指名しておく必要があります。
しかし、場合によっては相続人が複数になることもあるでしょう。

その場合、残った親族からは遺留分として資産の一部を請求されてしまうかもしれません。遺留分の請求は当然の権利なのですが、それを認めてしまうと企業を経営していくための資産が減少してしまうため、事業の継続が困難となる可能性もあるでしょう。

問題点をどう解決するべきか

事業承継に伴う問題点を解決するには、いくつかの方法があります。
想定される問題点を解決できる方法を選択して、適切な時期にそれを実施することで問題が起こらないように対策ができるでしょう。

まず、事業承継の計画を早期に開始すれば、スムーズに事業承継ができるでしょう。
後継者を選んで育成し、経営状況を把握するなどの準備には、時間がかかります。
なるべく早く計画をスタートして、経営状況や改善点などを知っておくと、承継も速やかに可能となります。

事業承継については、中小企業庁からガイドラインが発行されています。
そこでは、事業承継の準備には5~10年かかるとさえていて、特に後継者の育成には時間がかかります。

後継者候補が身内にいればいいのですが、いない場合は候補を探さなくてはいけないため、特に時間がかかるでしょう。
親族内承継の場合も、経営者が後継者育成をしっかりと行うことで事業承継の成功率は高まるでしょう。

会社を後継者に引き継ぐ場合は、自社株や事業用資産なども譲渡することになります。
その際は本来、贈与税や相続税がかかるのです。
しかし、事業承継税制を利用すると贈与税や相続税は猶予、もしくは免除されます。

事業用資産や自社株を相続するための手続きは個人資産よりも複雑で、時間がかかります。税金を納めると、経営に支障が出ることもあるでしょう。

猶予や免除があると、こういった問題点は解決できるでしょう。
平成30年度の税制改正からは、更に支援を拡充するために10年間限定で特例措置が設けられ、さらに負担を抑えられるようになっています。

経営においては、資金がなくてはいけません。
また、経営状況によっては他にも多くの問題点があるでしょう。
そういったことを事前に解決しておくことで、承継はスムーズに進むようになります。

どうしても問題点が大きく後継者が見つからない場合は、M&Aを検討してみるという選択肢もあります。
この方法は、後継者が見つからない場合でも承継できるというメリットがあります。

しかし、その場合の後継者は自社のことを特に知らない人が多く、従業員からの理解を得るのが難しくなることがあります。
また、売却先が見つからなければそもそも不可能な手段でもあります。

自分では判断が難しいといった場合は、専門家に相談してみることも検討してください。
事業承継の専門家は、フィナンシャルアドバイザーや仲介業者などです。
特に、M&Aは個人で行うのは困難でしょう。

仲介型の場合は売り手と買い手の間を取り持ち、フィナンシャルアドバイザーはそれぞれに専属のアドバイザーがつくため、安心して手続きができるでしょう。
専門家がいれば、安心して手続きを進めていくことができます。

まとめ

事業承継は、後継者がいない企業が事業を存続させるためのものですが、実際に手続きをする上では様々な問題が出てきてしまいます。
その中でも特に起こりやすい問題については事前に確認し、解決方法まで準備しておくことが必要となります。
せっかく承継するのであれば、問題点はないほうがいいでしょう。
どんな問題が起こっているのを知って、対策を怠らないようにしてください。