2025年7月20日に投開票が行われた参議院議員選挙において、自民党と公明党の連立与党は過半数の議席を確保することがかないませんでした。
与党の大敗を受けて石破政権に批判が集まっているのですが、石破政権はもう退陣せざるを得ないのでしょうか?
石破政権の今後の見通しについて、解説します。
参院選大敗の影響
自民党総裁の石破茂首相は、参院選大敗を受けた自身の進退に関して政治日程が集中する8月に最終判断する意向を固めたとのことです。
自民議員や閣内、地方組織から退陣要求が続出していて、もはや引責辞任は不可避な情勢となっています。
また、日米関税交渉が合意したことも影響しているとみられますが、首相は関税交渉の影響は精査したうえでなければ答えられないとしているのです。
午後には麻生太郎最高顧問と岸田文雄前首相、菅義偉副総裁とともに党本部で会談を行いました。
参院選で大敗しながら続投を表明した意図を首相経験者の3氏に説明するとともに、進退を巡り対応を協議するとみられているのです。
一方、自民旧茂木派に所属した中堅・若手らは、参院選の結果責任を問うために両院議員総会の実施を求める署名活動を始めました。
石破首相は、参院選から一夜明けた21日の記者会見で日米の関税交渉や物価高の国難を理由に挙げ、続投する意思があることを表明しているのです。
自民党内では続投に批判の声が出始めていて、石破おろしの動きにもくすぶりがみえ、政権の足元が揺らいでしまえば政策推進力は弱まります。
首相は自民党本部において、総裁として参院選を総括する記者会見に臨み、責任という言葉を10回用いて続投の考えを説明しているのです。
大敗の責任をとって首相の座を退くのではなく、国政を停滞させないために続投するのが責任だと淡々と語っていました。
2007年の参院選後の両院議員総会では、当時の安倍晋三首相に辞任を迫ったこともあるのです。
しかし、今回は立場が後退したことで正反対の行動をとっているようにも見えるのですが、18年前と今では何が変わったのかはわかりません。
かつての自らの言葉との整合性を意識し、辞めない理由を丁寧に説明して自民党を比較第1党として関税、物価高、自然災害への対応に責任を持つと断言しているのです。
壇上に並んだ自民党幹部は、一様に硬い表情で首相の記者会見を聞いていたのですが、納得はできません。
今回の参院選に敗れたことで、2024年10月の衆院選、25年6月の東京都議選に続く3連敗を喫することとなったのです。
首相の続投への意欲とは裏腹に、党内の不満を抑えきれるのかという問題もあり、記者会見に先立って自民の臨時役員会では首相続投への批判が出ています。
出席者によると、福田達夫幹事長代行が20日の投開票後に同僚議員から20本ほどの電話を受けたとのことでした。
首相に対しては、若手に不平・不満がたまっていることを把握しておいてくださいと伝えたのですが、首相からは明確な返答を得られていません。
また、石破首相が森山裕幹事長ら党執行部を全員続投させると明言したことについても、疑問の声が上がっているのです。
河野太郎選挙対策委員長代理は、21日に辞表を木原誠二選対委員長に提出したことを自身のXにて明かしています。
河野氏は、関税交渉の最中に首相が辞任しないのは理由があるにせよ、選挙の責任者である幹事長がまだ辞表を出していないのはおかしいと投稿しているのです。
自民党の空中分解を招く可能性も
石破総理は、かつて安倍総理に対して参院選での敗北で退陣を迫っていたのですが、自分は衆議院と参議院の両方で負けて続投すると表明しています。
しかし、党幹部の中には石破首相の続投に納得がいかず、自分はいつ辞めてもいいと考えている人もいるのです。
X上でも、石破総裁の退陣を求めるというハッシュタグが広がりを見せており、東京都や福島県、山口県などの自民の地方議員も使用しています。
自民党の高知県連は21日に参院選敗北の責任に関して、党総裁の早期退陣を党本部に申し入れる方針を決めているのです。
党内では石破おろしの動きがうねりとなって強まる可能性があり、麻生太郎最高顧問と茂木敏充前幹事長も会談によって意見を交わしました。
参院選大敗を踏まえて、石破政権や党内情勢に関して話し合ったのですが、岸田前政権で要職を務めていた両氏は現在、非主流派となりつつあるのです。
石破首相は、2009年の麻生政権において閣僚として麻生おろしに加担していたため、両者の溝はいまも埋まっていません。
唯一派閥として残っている麻生派が首相退陣を求めることになれば、政権運営が行き詰まってしまう可能性もあるでしょう。
また、小林鷹之元経済安全保障相は参院選での大敗について、国民から最後通牒をつきつけられたようなもので、信頼が失墜したことを重く受け止めるべきだと述べています。
今後さらに不満の声が強くなってしまえば、首相も無視し続けるのは難しくなってしまい、党則に則って総裁選を前倒しで開催することになる可能性もあるでしょう。
8月1日にはトランプ米政権による相互関税25%の発動期限を迎えるのですが、関税交渉がうまく進まなければ石破おろしの口実になるかもしれません。
自民、公明両党は衆参両院ともに過半数を持たない少数与党に陥るため、予算や法案の実現に野党の協力が不可欠となるのです。
自民党内で足元がぐらついてしまえば、政策推進力をさらに欠くこととなるのですが、野党各党は石破政権との連立を拒否しています。
国民民主党の玉木雄一郎代表は20日夜のNHK番組において、石破政権が続いても約束を守らない政権に協力するつもりは全くないと明言しているのです。
首相が政策で親和性を見いだすのは立憲民主党の野田佳彦代表で、首相の続投表明を踏まえ臨時国会に内閣不信任決議案を出す考えも示唆しています。
可決されれば、憲法の規定で首相は10日以内に衆院解散か内閣総辞職を選ばなければならなくなるのです。
まとめ
今回、衆議院議員選挙と都議選に続き参議院議員選挙でも自民党が敗北することになったため、石破首相が続投を表明していても退陣を迫る動きが顕著となりました。
石破首相も、かつて安倍元首相が参議院議員選挙で敗北したときは退陣を迫ったことがあるため、自分の行いが返ってきたという見方をする人もいるでしょう。
何より、今後は国会において野党の協力が不可欠となるため、協力を得やすいように責任を取る人は必要となります。