日本の電力問題を解決⁈ペロブスカイト太陽電池について

その他

2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、再生可能エネルギーが広まりつつありますが、日本は太陽光発電設備を設置する平地が少ないという問題があります。

再生可能エネルギーの更なる拡充のため、現在ペロブスカイト太陽電池という新たな太陽電池が開発されているのです。

今までのものと何が違うのか、解説します。

ペロブスカイト太陽電池とは?

太陽電池といえば、広い土地に黒いパネルが並んでいたり、住宅の屋根などに設置されていたりするイメージがあるでしょう。

現在の太陽電池の多くはシリコン系太陽電池と呼ばれるもので、光を吸収する層の材料にシリコンが使用されています。

他にも、化合物系や有機系などがあるのですが、太陽電池の中ではシリコン系が最も普及しているのです。

日本は、すでに太陽電池の設置場所が限られているため、今後どこに設置するべきかという問題があります。

設置場所の問題を解決する技術として現在注目されているのが、シリコン系太陽電池にはない特性を持つペロブスカイト太陽電池です。

従来の太陽電池では設置できなかった場所でも設置できるので、設置場所の問題を解決できる技術かもしれません。

ペロブスカイトは特殊な形態の結晶構造のことで、ペロブスカイト太陽電池では発電層に用いられているのですが、様々な特徴があるのです。

ペロブスカイト太陽電池は、材料を塗布・印刷できるため、製造工程が少なく、大量生産が可能となることから、低コスト化での製造が可能となるでしょう。

また、シリコン系太陽電池とは違って、薄いフィルム状のものであれば曲げることもできて、軽量化することができます。

主な原料は、日本の生産量が世界第2位であり、世界シェアの約3割を占めているヨウ素というのもメリットです。

日本で生産されているため、自国内だけでサプライチェーンを安定して確保することができるというのもメリットに含まれます。

メリットは多いものの、まだ新しい技術なので成長の余地があり、寿命が短く耐久性が低いこと、大きくするのが難しいことなどの課題があります。

また、変換効率にまだ課題が残されているものの、近年では解決したといえる点もあるため、実用性も高まっているといえるでしょう。

どのような分野で活用される?

ペロブスカイト太陽電池にはいくつかのタイプがあるので、タイプごとの活用分野、今後の開発目標などについて、解説します。

たとえば、軽量でフレキシブルなタイプは、耐荷重が少ない屋根や垂直面に設置することが可能で、場所を選ばず発電できるでしょう。

特に注目されているのが屋内・小型タイプで、小型の機器類に貼ることでIoTデバイスなどの新たな市場への展開に期待が持てます。

また、超高効率型は、設置面積の制限などから高いエネルギー密度が必要とされる、航空や交通などの分野で利用される可能性が高いでしょう。

量産するのはまだまだ多くのハードルを越えなくてはならないため難しいのですが、市場のニーズは必ずあるといっていいでしょう。

多くの国で開発が進められているものの、日本は世界最高水準の技術開発というアドバンテージがあり、大型化や耐久性においても他国よりリードしています。

ペロブスカイト太陽電池は設置できる場所が多く、軽量で柔軟性に優れている太陽電池であり、製造工程が少なく低コスト化が見込めます。

ペロブスカイト太陽電池の開発は官民問わず行われていて、NPOが開発プロジェクトを立ち上げて数年内の実用化を目指している例もあるのです。

複数の企業が製造技術や開発に取り組むための支援も行われていて、各社が様々な取り組みを実施しています。

たとえば、積水化学では耐荷重が少ないような屋根や垂直の壁面などにも設置が可能な、軽量かつフィルム型の太陽電池を開発しているのです。

非常に薄く軽量でありながら、耐久性10年相当、発電効率15%という高性能な太陽電池の開発に成功しました。

また、JR西日本で2025年に開業する駅の広場にも、設置されるという予定が立てられているのです。

高層ビルの側面に大容量の太陽電池を導入する計画などもあり、複数の企業で協力して行う実験なども公表されています。

海外での開発状況

様々な研究開発の成果が実りつつある一方で、中国やポーランド、イギリスなど海外の各国でも開発が進められています。

早くも量産に取り組む動きも見られていて、競争が激化する状況にあるため、日本が競争に勝ち抜くためには、早急に実用化を進めていく必要があるのです。

そこで、2023年8月には産業構造審議会で、早期社会実装のために開発事業の予算を増額することを決定しました。

今後は、基盤技術の開発事業やコストパフォーマンスの向上、大型化などを実現して実用化する事業が必要となるでしょう。

また、量産技術なども確立して、実証事業などを拡充していくことも必要になるので、しっかりと準備しておきましょう。

ペロブスカイト太陽電池の産業化を確立するためには、早急に量産体制を整えて生産体制を整備し、需要を増やしていく必要があるのです。

量産技術を確立すること、生産体制を整備すること、需要を創出することを早急に行う必要があります。

政府ではGX経済移行債を活用し、生産拠点整備のためのサプライチェーン構築を支援していく方針です。

GX実行会議でとりまとめた分野別投資戦略においては、サプライチェーンの構築について支援するという点が盛り込まれています。

また今後、世界的に普及させるためには、性能の評価に対しての国際的な基準が必要となるでしょう。

2023年4月におこなわれたG7気候・エネルギー・環境大臣会合では、合意文書にペロブスカイト太陽電池の内容が盛り込まれました。

まとめ

現在のシリコン系の太陽電池には、設置場所の問題などがあるため、新たに開発されたペロブスカイト太陽電池に注目が集まっています。

設置場所に優れ、壁面や曲がった場所などにも貼り付けて設置することができる太陽電池で、大量生産が可能でコストを抑えることもできるでしょう。

日本だけではなく海外でも開発が進められている技術ですが、現状では日本にアドバンテージがあるといえます。