サル痘とは?

その他のリスク

新型コロナウイルスの猛威が収まらない現在、新たにサル痘の感染も拡大しつつあります。
欧米などで感染者が増えつつあったのですが、2022年7月に日本国内でも感染者が確認されています。
サル痘というのは、どのようなものなのでしょうか?
その特徴について、解説します。

サル痘とは

サル痘というのは、サル痘ウイルスの感染によって起こる人獣共通感染症の1つです。
1958年にカニクイザルから分離されたことでサル痘と呼ばれるようになりましたが、自然宿主はげっ歯類と考えられることが、遺伝子解析でわかっています。

人間への感染が初めて確認されたのは、1970年のコンゴ共和国でのことでした。
最終的には11か国で患者が発生していて、中央アフリカや西アフリカの熱帯雨林ではげっ歯類やサルなどの動物の間で感染環を形成しています。

ヒトからヒトへの感染は日常生活において稀であると考えられていて、人は終宿主と考えられています。
しかし、接触感染やヒト間の感染も成立し、ヒトが感染した場合は天然痘と似た発熱や発痘などの症状が見られるものの、その症状は比較的軽微で感染力も天然痘には劣るとされています。

ヒトの死亡率は、およそ1%から10%程度と言われていて、サル痘の予防には種痘が有効と言われています。
流行している地域以外では、サルの検疫が感染拡大防止に効果的でしょう。

なお、サル痘ウイルスは大きく、コンゴ盆地系統群と西アフリカ系統群に分けられます。
この2つを比較すると、コンゴ盆地系統群のほうが死亡率も高く、ヒト間の感染性も高いとされています。

感染した場合の潜伏期間は7日から21日ほどで、顔面や手足の末端部分に症状が多く発生します。
最初は水疱ですが、時間が経過すると膿疱となり痂皮がみられるようになる発疹は発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感といった症状が出てきます。

発症した後は、2~4週間ほどで症状は軽くなるか、快方へと向かうことになります。
死亡率はそれほど高くないものの、ナイジェリアで流行した2017年から2022年の間には558人に感染し、そのうち8人が死亡しています。
アメリカでは2003年に流行しましたが、死者は出ていません。

そして2022年になり、欧米諸国で感染例が確認されて7月14日には世界の感染者数が1万人を超えています。
7月25日には日本で初めての感染者が確認され、7月29日にはアフリカ大陸以外では初となるサル痘の感染による死亡者がブラジルで報告され、30日にはスペインでも報告されています。

2022年のサル痘の流行

なぜサル痘が注目されているのかというと、2022年になって欧米を中心として、サル痘のアウトブレイクが起こっているからです。
2022年5月にイギリスで発見された、一連の症例から始まりました。

この始まりは、サル痘が風土病となっているナイジェリアへの渡航歴がある個人の感染が5月6日に確認されたことでした。
サル痘は中央アフリカや西アフリカで主に広がっているので、それ以外で広まったのは初めてのことでした。

5月18日からは、さらに多くの国や地域から感染例が報告されていて、ヨーロッパに限らず南北アメリカ、アジア、オーストラリア、アフリカでも感染者が確認されました。
7月23日までで、合計1万7千件を超え、現在までは4万件以上の確定症例があります。

現時点で、疑いはあるが未確認の2か所を含め、97の国と地域で感染が広まっています。
WHO(世界保健機関)では、PHEIC(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)の発生を宣言して、発生状況を世界的な健康上の緊急事態に引き上げました。

サル痘の感染者を見ると、風土病となっているアフリカ大陸以外での感染については、97%が男性との性行為をする男性のコミュニティ、その中でも特に、複数のパートナーを持つ男性のコミュニティで発生しています。

そのため、感染者の大部分は男性です。
しかし、必ずしも同性との性行為で感染しているわけではなく、小児や女性が感染している例も報告されています。

また、今回の感染流行ではこれまでの報告とは異なる症状も報告されています。
これまでは、風邪に似た症状の他、皮疹から水疱、膿疱などになる症状や、敗血症、気管支肺炎、角膜炎などの合併症を起こす症例もあるといったものでした。

しかし、今回のサル痘では前駆症状である発熱、リンパ節腫脹などが見られないケースがあり、病変が全身に及ぶ発疹は見られず、会陰部や肛門周囲、口腔などに集中していること、同時に異なる段階の皮疹がみられることなどが指摘されています。

診断方法は、主に水疱や膿疱の蓋や内容液、もしくは組織を用いたPCR検査による遺伝子の検出です。
それ以外の方法としては、ウイルス粒子の照明やウイルス分離・同定、蛍光抗体法などがあります。

また、地領は基本的に対症療法であり、国内で利用することができる薬事承認されている治療薬は存在していません。
欧州ではテコビリマットという特異的治療薬があり、日本でも特定臨床研究が実施されています。

また、天然痘ワクチンを接種することで、およそ85%発症を予防することができると言われています。
流行地では、感染者や感受性のある動物と接触しないよう注意することが大切です。

海外と往来する場合は、体調の変化に十分注意しましょう。
もし、サル痘と疑われるような症状がみられた場合は、マスクを着用し発疹部位をガーゼで覆うなどの対策をしたうえで、速やかに身近な医療機関へと相談しましょう。

海外から帰国した人は、体調に異常がある場合は速やかに医療機関を受診し、診察する医師には海外渡航歴があることを伝えてください。
また、感染予防として感染者や有症状者とは寝具等の共用や直接・間接的な体液等の接触、長時間の飛沫を避けるようにしましょう。

サル痘は、アルコールやホルマリン、紫外線によって不活化されます。
石鹸やアルコール消毒剤による手指消毒も、感染拡大防止に効果的です。
新型コロナウイルスの感染拡大で徹底するようになっていますが、今一度しっかりと消毒するよう気を引き締めましょう。

まとめ

サル痘は、コロナ禍の陰に隠れて広まりを見せています。
これまでは欧米で広まっていたものが、とうとう国内でも感染者が出てきています。
ここから広く感染していく可能性もあるので、油断することはできません。
また、感染することが多いコミュニティなどから、同性愛者への偏見・差別を助長する可能性もあります。
その点にも注意をしながら、感染拡大を防ぐようにしましょう。