中小企業のゾンビ企業化の実態に迫る!

その他のリスク

新型コロナウイルスの感染拡大が続く現在、中小企業の中には経営難に陥るところも少なくありません。
その中でも増えているのが、ゾンビ企業と言われる状態の企業です。
ゾンビ企業とは、いったいどのような状態なのでしょうか?
また、どのくらい増えているのか、その実態について解説します。

ゾンビ企業とは?

新型コロナウイルスの感染拡大が終息する様子を見せない状態で、コロナ禍によって売り上げが減少してしまった企業には実質無利子・無担保で融資をする「ゼロゼロ融資」と言われる融資が実施されました。

元々この融資を行ったのは、政府系金融機関の日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などです。
しかし、利用希望者が多く対応が間に合わなくなったことから、2020年5月から翌年3月までは民間金融機関でも受け付けていました。

日本公庫では、零細企業や個人事業主には最大6000万円、中小企業の場合は最大3億円まで実質無利子の融資を行っていました。
もし返済が滞った場合、元本の8割、もしくは全額を信用保証協会が肩代わりし、利子についても各都道府県が補給することになっています。

運転資金なら最長15年、設備投資の資金なら最長20年借りることができ、もっとも長ければ最初の5年間は元金の返済が免除されるようになっています。
このゼロゼロ融資を中心としたコロナ対応のための融資総額は、56兆円以上にもなりました。

この融資を受けることで、本来であれば倒産しているような状態の中小企業も、持ちこたえることができています。
その結果、ゾンビ企業化が進んできたのです。

ゾンビ企業というのは、本来倒産している状態であるはずなのにまだ営業を続けている企業のことを言います。
対外的に言うと、正常な支払ができない企業、バランスシート上で債務超過の状態になっている企業などが当てはまります。

また、銀行融資の返済条件を変更するようなリスケ企業、過剰債務を抱えている非効率企業などもゾンビ企業と言えるでしょう。
マクロ経済学的視点でいえば生産性の低い企業、政治的には雇用の確保ができない企業などが当てはまります。

国際決済銀行では、ゾンビ企業の定義として3年以上ICR(インスタント・カバレッジ・レシオ)が1未満であり、なおかつ設立10年以上の企業としています。
これが、最もよく使われる定義となっています。

現在のゾンビ企業化

上記の定義に当てはまる企業を確認するため、帝国データベースの企業財務データベースの中で2020年決算の時点で設立10年以上、ICRが3年連続で判明している企業を抽出すると10万社以上になります。
その中で、ICRが3年以上1未満の企業を探すと、 およそ1万2千社と11%強という結果になりました。

2007年以降ゾンビ企業化がどう推移していったのかを見ると、上昇し始めたきっかけとなるのが2008年のリーマンショックでした。
2010年度決算では、全体の2割近くがゾンビ企業化していたのです。

当時は、中小企業が連鎖倒産するのを防ぐために中小企業金融円滑化法が2009年末に思考されたため、業績の好転ではなく融資によって延命した企業が増えたことが原因と考えられます。

その後は10%台で推移してきたものの、2020年になり前年度1.4%増の11.3%になりました。
これは、コロナ禍においてゼロゼロ融資や各種支援策が執行されたことが原因なのでしょう。

データベースに十分な情報が登録されてない企業も含めたゾンビ企業の数を推定してみると、どのくらいになるのでしょうか?
企業財務データベースではなく、企業概要データベースを基に計算してみましょう。

企業概要データベースには、経営実態が確認されている事業者が登録されています。
その企業の総数が146.6万社であり、その11.3%がゾンビ企業とするとおよそ16.5万社がゾンビ企業化していると思われます。

同じ計算方法で過去の推移をみると、2011年にはゾンビ化企業が27万社以上になっていて、20年度はそこから4割近く減少していると言えます。
しかし、19年度から見ると1割以上増えていることになるのです。

ゾンビ企業の特徴を見ると、まず業種別では建設業がおよそ3分の1と最も多く、次いで2割ほどを製造が占め、若干少ない割合で卸売、さらに1割ほどはサービスが占めています。

最も多くの割合を占める建設の内訳は、職別工事に分類される鉄筋鉄骨工事が14%ほど、総合工事の一般的な土木建築工事が12%強、設備工事に分類される電気工事や管工事が8%弱となっています。

また、従業員別では5人以下の企業が3割ほどで、6~20人の従業員がいる企業が37%ほどとなっています。
全体の7割は、従業員20人以下の中小企業なのです。

そして、倒産件数は徐々に増えています。
2022年7月の倒産件数は499件となり、2年3か月ぶりに3カ月連続で前年同月よりも増加しているのです。

そこに加わるのが、ゼロゼロ融資の元本返済です。
返済期限を迎える企業は2021年末から増えていて、今年の夏に返済企業数がピークを迎えると言われているのです。

しかし、コロナ禍が長引いたことで業績が回復しなかった企業も多く、返済が厳しいところも多いと予測されています。
ゾンビ企業化しているところは、特に返済が難しいでしょう。

そのため、ゾンビ企業の倒産リスクはかなり高まってしまうと思われます。
ゾンビ企業のうち、ゼロゼロ融資を利用しているところは8割ほどです。
そのうち、15%ほどの企業は返済を不安視しているのです。

これまでが延命されていた状態とすれば、倒産するのは仕方がないと言えるかもしれません。
しかし、多くの企業が一斉に倒産するようなことがあれば、少なからず経済的混乱が生じてしまうこととなるでしょう。

対策として、まずは取引先にゾンビ企業化しているところはないかを確認してみましょう。
もしも取引先が該当するようなら、連鎖倒産とならないよう対策をしておく必要があるでしょう。

まとめ

現在、中小企業の中でゾンビ企業となっているところが増えています。
コロナ禍対策の融資を受けた企業の中には、元本返済が始まったタイミングで経営難に陥るところも多いと思います。
そういった企業との取引がある場合は、不渡りや未払いなどのリスクを想定して事前の対策が必要となるでしょう。
取引先のことを調べて、連鎖倒産にならないよう注意してください。