東京都の無担保・保証人無しで1500万円融資について

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東京都で、2022年6月から開始した施策が、話題となっています。
無担保、保証人なしで1500万円の融資を受けられるというものですが、問題になっているのはその対象が外国人企業家であるという点です。
なぜ、このような施策が行われることとなったのでしょうか?

外国人の資金調達支援事業とは?

東京都では、2022年6月28日から外国人起業家向けの支援申し込みの受付を開始しました。
外国人起業家を対象として、最大1500万円を融資するというものです。

支援対象者の条件は、まず東京都政策企画局で事業計画の認定を受けていること、日本国内で5年以内に創業していること、事業活動の制限を受けない在留資格を有していること、東京都内に本店か事務所を置いている法人の代表者であることの4つです。

返済期間は10年以内で、据置期間はその内3年以内です。
融資利率は固定金利で2.7%以内になっていて、保証人は原則法人代表者、もしくは不要であり、担保も不要です。

この政策ですが、実はネット上で炎上しています。
外国人が創業することで、東京都が1500万円も融資してくれる夢あふれる政策ですが、無担保なので使いきったら帰国すればおしまいだと言われているのです。

融資の原資となるのは、都民の税金です。
それを無駄に扱うような政策には、反対意見も多いのです。
反対意見が多い理由としては、小池百合子都知事が中国寄りの立場と思われていることが大きいでしょう。

小池都知事はかつて、コロナ禍によって日本国内全体で医療物資が不足している状況で、中国に東京都の医療用防護服33万6千着を無償で提供していました。
また、日中国交正常化50周年を記念して、東京タワーを真っ赤に染め上げた事でも話題となっています。

7月には、中国の著名な彫刻家である呉為山氏が手掛けた鑑真銅像という作品の除幕式が上野公園で行われ、それに出席しています。
また、その場で「交流を通じて素晴らしい未来を築き上げる」という発言もありました。

都内の新築住宅に対して、太陽光パネルの設置を義務化しようという動きもありますが、これにも中国への配慮があるのではないかと思われています。
現在、世界中の太陽光発電の機器のうち、8割は中国企業で生産しているのです。

このように、小池都知事は中国びいきと思われてしまわれかねない点が多くあるのです。
そんな中、注目された外国人起業家への支援もまた、中国人を想定していると考えられてしまうのは仕方がないことでしょう。

融資は簡単に受けられない

この外国人起業家の支援をする政策には、多くの申し込みがあります。
2022年8月中旬の時点で、既に100件を超える申し込みがありました。
では、その中で認定を受けたのは何件くらいなのでしょうか?

実は、現時点で認定されている企業は1つもないのです。
スキームとしては、申請を受けて事業計画アドバイスを行い、事業計画を認定して融資手続きの日本語化サポートを行ったうえで統括支援機関と取扱金融機関との連携で融資を行い、融資実行後は経営サポートを行うこととなっています。

しかし、実際には東京都の審査でも認定を受けている外国人起業家は皆無で、まだ次の段階に進むことができていません。
金融機関審査にも進んでいない状況なので、外国人起業家に税金をばらまく施策ということではないのでしょう。

実は、日本の外国人起業家は、諸外国と比較してかなり少ないといわれています。
世界最大の経済大国と言えばアメリカですが、アメリカでは移民やその2世が経済をリードしているのです。

例えば、アメリカの大企業Googleの共同創始者であるセルゲイ・ブリン氏はその名前からも分かるように、ロシアからの移民です。
それ以外にも、アメリカの大手IT企業は外国出身者が創業者であることが多いのです。
グーグル、テスラ、ウーバー、ズームという有名企業には、創業者が外国人、あるいは移民であるという共通点があります。

アメリカの中でも、多くのIT企業が本拠を置いているのがシリコンバレーです。
その中で、外国人起業家は半数近くになるのです。
その他の国でも、外国人起業家はかなりの割合を占めています。

例えば、ベルリンでは43%が外国人起業家であり、ロンドンも42%を占めています。
アジアでいうと、上海では36%、シンガポールの場合は35%、中国の北京も23%が外国人起業家です。
それに対して、日本の外国人起業家はわずか2%しかいません。

現在、外国人起業家は莫大な税収を生み出す可能性があるとして、世界各国で誘致の競争が激しくなってきているのです。
今回の政策は、日本もその競争に遅ればせながら参加をしようと考えたもの、ともいえるでしょう。

経済産業省でも、2019年から自治体との協力の元、外国人起業活動推進事業をスタートしています。
これは、来日した目的が起業である外国人の一時的な在留資格を認めるスタートアップビザという制度です。

この制度は、これまでに福岡市を皮切りとして大阪市、横浜市、東京都渋谷区などが活用しています。
国としても、外国人起業家の誘致には力を入れているのです。

また、外国人ばかりが優遇されているように感じるかもしれませんが、実は日本人向けの制度も存在しています。
それは、東京都産業労働局が行っている、東京都中小企業制度融資『創業』というものです。

これも今回の外国人起業家向けの融資と似たような条件で利用できるのですが、違いとしては融資できる金額が最大3500万円という点があります。
つまり、今回話題となっている融資は、この制度を外国人まで広げ、融資上限金額を引き下げたともいえるのです。

外国人起業家が参入すると、日本市場には多様性によるイノベーションが創出されることになり、市場の活性化につながると考えられます。
そしてユニコーン企業が生まれるようなことがあれば、国や自治体などの税収も増えることになるでしょう。

しかし、そういった動きは日本国内の起業家でも、問題なく起こすことができるものでしょう。
外国人起業家を支援する制度を制定するよりも、まずは国内の起業家向けの制度を周知徹底するのが先決なのではないでしょうか。

まとめ

今回、東京都で始まった外国人起業家向けの施策は、わざわざ制定する前に行うべきことがいくつもあるものであり、次期尚早ともいえます。
守るべき順序を守らずにこういった施策を決定したので、ネット上でも炎上することになるのです。
海外に目を向ける前に、まずは国内の人的資源に目を向けましょう。
それを活用することで、十分な効果が得られると期待できるはずです。