会社役員個人に対して訴訟になるケースは3つのパターン

役員が果たすべき義務に違反して会社に損害を生じさせた場合、その損害を賠償する責任を負うことになります。
役員が果たすべき義務には、善管注意義務、忠実義務、監視・監督義務などがありますが、これらの義務違反で生じた損害については、それぞれ直接担当している職務とは関係のない役員に対しても会社訴訟や株主代表訴訟が提起されるという可能性もあります。

主にどのような訴訟になるケースが多いのか、3つのパターンに分けて考えることができますが、まず役員が果たすべき義務を確認しておきましょう。

 

・善管注意義務違反
会社の取締役としての注意を尽くして業務を遂行する義務です。有害物質や危険物の取り扱い業務、環境管理や公害防止などの業務の場合には、単に排出基準を守れば良いだけでなく有害化学物質や危険物質に関しての高度な注意義務が課せれると考えられます。

・忠実義務違反
株主から会社経営を任されている役員になると、法令や会社定款の遵守はもちろんのこと、会社のため業務を忠実に遂行するといった義務も課せられます。

・第三者に対する責任
職務遂行に起因して第三者に損害を与えた場合、その第三者に対する損害賠償責任を負うことになります。
主な法的責任には、会社法上の特別責任、そして民法の不法行為責任があります。
公害事故や不法投棄など、悪意や重大な過失と解釈される可能性の高い
法行為責任などはその損害を賠償することになります。
訴訟になる3つのケース
以上のような役員の責任に対して、違反があれば役員個人に対する訴訟が行われます。その形として3つのパターンがあります。どの形の訴訟になるかは、その時の状況などによって異なるでしょう。

・株主代表訴訟
役員が会社に対して損害賠償責任を負うことになった場合、役員個人に対して責任追及する主体は会社になります。
6か月以上引き続き株式を所有する株主は、会社に対して役員を訴えるように監査役に請求することができます。
しかし提訴請求から60日を経過しても会社が役員を訴えない場合には、株主が会社に代わり役員に対して責任追及の訴えを提起することができます。

・第三者訴訟
役員が故意・重過失等で第三者に損害を与えた場合、第三者が役員に対して損害賠償請求することが可能です。

・多重代表訴訟制度
親会社の株主が子会社に代わり、子会社の権利である損害賠償請求権を行使して子会社の取締役の個人責任も追及する訴訟です。
もしも役員個人が訴えられた時のために
このように、事業を遂行することで生じる賠償責任に対する訴訟は、会社と代表取締役が被告となって損害賠償金や弁護士費用は会社が支払うことになることが一般的です。
しかし株主代表訴訟や第三者訴訟による損害賠償金や弁護士費用の支払いは役員個人が支払うことが原則となりますので、万一の備えとして会社役員賠償責任保険などに加入しておく必要があるでしょう。