工場の火災での近隣の建物に損害を与えたら?

工場で起こる爆発や火災事故は近年相次いでいる状況です。重大事故が発生した場合には、企業はどのような経済的な影響を受け、企業や経営者の法的責任について考えていく必要があります。


失火法は爆発事故や重過失には適用されない
もしも工場が出火元となり、その火が周囲に類焼したとしても失火法により民法409条の不法行為による賠償責任は負わなくて良くなります。
ただし爆発事故の場合には失火法の適用はありませんので賠償責任が発生しますし、火災事故であっても重過失の場合には適用にはなりません。

・重過失とは
特別注意を払わなかったとしても十分に防ぐことができた事故が重過失に該当します。これが個人の日常生活であれば簡単に重過失だと判断されることは多くありません。しかし業務に起因する場合は別で、判断が厳しくなります。
工場はそもそも電力や動力などの規模が一般家庭よりも極めて大きく、取扱いについては慎重さが求められます。そのため工場で火災が起きた場合には失火法は適用されず、不法行為に基づいて賠償責任を負うことになるでしょう。
会社および経営者の法的責任
大規模な爆発や火災事故が起きた場合、さらには死傷者が出た場合には、会社や経営者は様々な法的責任を負うことになります。

・販売先等に対する賠償責任
契約に基づいた供給責任を履行することが不可能となったことで、取引先や販売先に生じた損害を賠償する責任が発生する可能性があります。
民法上では債務不履行による損害賠償責任の発生要件として、債務者の故意や過失、またはそれらと同様の事由が必要であると定められています。
しかし大事故が起きた時には事故原因調査が実施されますので、会社に何らかの過失があったことが明らかになれば販売先は損害賠償を請求してくることになるでしょう。

・刑法上の責任
管理監督責任者の注意義務は現場担当者の注意義務とは異なったものであり、経営者等は管理監督義務を怠った業務上過失致死傷罪といった刑法上の責任を問われる可能性があります。

・会社に対する責任
経営者は株主代表訴訟によって責任を問われる可能性もあります。
株主代表訴訟は取締役などが会社に損害を与えているのに、会社が該当する取締役に責任を追及しない場合に株主によって行われます。会社を代表して株主が役員(経営者)の責任を追及する訴訟を起こします。
ただし株主代表訴訟は、原告の株主が経営者にどのような過失があったかを特定して立証しなければなりません。しかし簡単なことではなく、株主は経営者が内部統制体制やリスク管理体制の構築義務を怠ったことが事故に繋がったと主張することが多いようです。
工場で火災が起きた時の損害リスクに備えておくこと
このように工場で火災が起きた場合には、会社や経営者は損害にたいする賠償責任を負う可能性が高くなります。多大な賠償金リスクに備えておくことが必要と言えるでしょう。