気候変動リスクと火災保険料との関係

事故・災害リスク

近年、豪雨や大型台風による被害が増えています。
これは気候変動が主な原因となっているのですが、こういった気候変動リスクと火災保険料とは関係があるということをご存知でしょうか?
ここ数年、火災保険料が値上げされているのは、気候変動リスクが原因なのです。
その理由について、解説します。

気候変動はなぜ起こる?

ここ数年は、毎年のように大賀台風や豪雨などが起こり、日本各地で被害が生じています。
北海道から九州まで、様々な場所で起こっているため、被害に遭われた方も多いのではないでしょうか?

特に大きな被害をもたらしたのが、2018年に西日本で起こった豪雨や、2019年に襲来した台風15号、19号です。
また、気温も年々上昇し、2018年には埼玉県越谷市で41.1度を記録しています。

原因となっているのは、気候変動です。
気候変動には、大きく2つの要因があります。
それは、自然要因と人為的要因です。

自然要因というのは、海洋変動や火山の噴火などによって大気中に漂う塵などの粒子であるエアロゾルの増加や、太陽活動の変化によるものです。
これらの自然要因については、人間がどうやっても変えられるものではありません。

変えられるとしたら、もう一つの人為的要因です。
これはいくつかの要因があるのですが、その中でも特に注意したいのが温室効果ガスの増加です。

このガスは、地球を覆う大気中に含まれるもので、適度な濃度で存在することで気温を人間が住むことの出来る範囲に保っているのです。
しかし、これが増えすぎてしまうと、熱がこもり過ぎてしまい温暖化へとつながるのです。

温室効果ガスにはいくつかの種類があるのですが、その中でも特に温暖化への影響が大きいのが二酸化炭素です。
人間も呼吸の際に二酸化炭素を吐き出すため、なじみが深いでしょう。

そして、二酸化炭素は生活する上で欠かすことができない電気エネルギーを生み出す過程で、大量に排出されるのです。
これを減らさない限り、温室効果ガスを減らすことができず、温暖化を止めることもできないでしょう。

気候変動による災害が起こっているのは日本だけではなく、世界各国で起こっています。
世界中で、気候変動リスクを減らすための取り組みが行われているのですが、具体的にはどのようなものがあるでしょうか?

特に有名なのが、欧米諸国が目標として掲げている「2050年温室効果ガスゼロ」でしょう。
これは世界中でスタンダードになりつつあり、日本でも2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする、カーボンニュートラルを目指すと宣言しています。

これを実現するためには、国民一人ひとりの意識を変えていくことが大切です。
例えば、冷房や暖房の設定温度を1℃でも変える、通勤や買い物にはなるべく公共交通機関や自転車を使って自動車の使用を少なくする、駐車する際はエンジンを切るなどの小さい取り組みから始めていきましょう。

気候変動と火災保険料

気候変動によって大きな被害が生じるリスクがある中で、助けとなるのが火災保険や地震保険です。
こういったものは長期間の契約となるため、少しでも安い方が家計の負担が軽くなるでしょう。

しかし、火災保険料は気候変動の影響を受けます。
災害が起こりやすい今、火災保険料も値上げされているのです。
その原因は、やはり自然災害の被害が増えていることにあります。

火災保険で保障される範囲は、火災だけではありません。
契約内容にもよりますが、浸水や水濡れ、風災、雪災なども含まれます。
そのため、災害が多くなると損害保険会社は想定していた以上の保険金を支払うことになります。

損害保険会社は、保険料を集めてその中から保険金を支払っています。
保険料よりも保険金が多くなってしまうようでは、保険会社が赤字となってしまいます。
そのため、支払う保険金が増えると保険料を値上げせざるを得ないのです。

実際に、災害が増えている現在は損害保険会社の火災保険の損益が赤字となっていて、既に10年以上もそれが続いています。
そのため、損害保険料率算出機構では2021年6月に、火災保険料の目安となる参考準率を10.9%引き上げると発表しています。

また、火災保険の付帯契約となる地震保険についても、保険料が平均14.7%値上げされます。
これは一度にあげるのではなく、2017年、2019年、2021年の3段階に分けてあげられました。

また、気候変動リスクを鑑みて、火災保険料の契約期間にも影響を及ぼしています。
損害保険料率算出機構では、現在10年契約である火災保険を5年へと大幅に短縮することを検討していると発表しています。

契約期間は、かつて最長36年でした。
しかし、2015年に最長10年へと短縮されています。
今回さらに短縮することで、収支の改善を目指すと思われます。

しかし、加入者から見れば保険料が上がる機会が増えてしまい、今までよりも負担が大きくなってしまう可能性が高くなってしまうのです。
このように、気候変動リスクが高まると火災保険料や契約期間にも影響してしまうのです。

保険料が値上がりするというのは、加入者側から見ると嬉しいものではありません。
しかし、保険会社としても値上げしたいわけではないのです。
値上げせざるを得ないほど、気候変動リスクが高まり自然災害が増えているということです。

自然災害は、急激に減っていくことはありません。
たとえ国民全員が二酸化炭素の排出量を削減するよう取り組んだとしても、その効果が見えるのはかなり後になるでしょう。

その間、いつ起こるか分からない自然災害に備えておくためにも、火災保険には加入しておかなければいけません。
補償内容や付帯契約なども見直しつつ、適切な補償を受けられる保険に加入しておきましょう。

まとめ

気候変動リスクが高まり自然災害が増えると、火災保険の加入者が保険金を請求することが増えます。
そうなると、増えた保険金の支払いをカバーするために火災保険料や地震保険料を挙げざるを得ないのです。
自然災害の増加は、保険料の増加につながります。
それを防ぐためには、日頃から少しずつでも二酸化炭素排出量の削減を意識して、カーボンゼロの目標に近づけていく必要があるでしょう。