備蓄米とは?

事故・災害リスク

長く続いている日本の主食である米の高騰によって、国民の家系が大打撃を受けている中、政府は備蓄していた米の放出を決定しました。
備蓄していた米に関しては、なかなか市場に出回らない、米の値段が下がらないなどの声も聞かれていますが、そもそも備蓄していた米とは何なのでしょうか・
備蓄米について、解説します。

備蓄していた米とは?

米の価格が高騰を続ける中、日本政府は備蓄していた米の放出を決定したのですが、備蓄していた米というのはそもそもどのようなものでしょうか?

備蓄していた米は正式には政府備蓄米といい、日本国政府が凶作や不作などが起こったときの流通を安定させるために食料備蓄として保存している米のことをいいます。
1995年に発足した制度で、米の生産量が上位である北海道や新潟県、東北地方で生産された米を主に確保しているのです。

発足した経緯としては、1993年に日本の米は作況指数74と戦後以来類を見ないほどの不作に見舞われたことが発端となりました。
日本国政府では、戦時中にあった食糧管理法に基づいて米を管理していたのですが、備蓄については一定量の持越し在庫の保持しかありませんでした。

しかし、1992年に続いて1993年にはさらなる不作となったため、持越し米が不足しており在庫が尽きてしまいました。

平成の米騒動とも呼ばれ、他国から米を緊急輸入して対応し、翌年には収量が回復して騒動が落ち着いたものの、世界の米市場は大きく乱れることとなったのです。

日本の主食である米の安定供給と凶作への備えに課題が残されていることが分かったため、政府では食糧管理法を廃止し、新たな法律を施行して備蓄米を始めました。

主な内容は?

政府では、当初は150万トンの米の確保を適正水準としていましたが、200万トンを超えて財政負担が大きくなったことから100万トンと定めているのです。

毎年20万トン以上を購入し、5年で100万トンとして古いものから入れ替えていく方式となっています。
5年が経過した米は飼料用として売却され、一部は学校給食やフードバンク、子ども食堂などに無料で提供されていて、主食用として販売されることは概ねないのです。

備蓄米は、政府寄託倉庫というJAなどの倉庫で低温保管されていて、米の在庫が不足した時に放出されることとなっています。

2020年の農林水産省の会見では、確保している米が約100万トンあり、さらにJAや卸売業者などの在庫が約280万トンあることを発表しているのです。
また、同じく主食となっていて輸入が主な小麦は安定供給を図るため、輸出国から国がまとめて購入しています。

ちなみに、小麦に関しては国が確保しておく制度が2010年に廃止となっていて、現在は民間に任せることとなっているのです。
しかし、政府が確保している米は凶作や不作に備えるためのものであり、国家の食料安全保障が目的ではありません。

災害時にも放出されることはあるのですが、非常食とは異なるため、緊急の食料は各家庭で用意しておくことが推奨しているのです。

なぜ放出することになったのか

有事に備えて保管されている米ですが、2025年3月から民間市場へと放出することを発表しています。
なぜ放出することになったのかというと、まずは米価格の高騰を防ぐために流通の目詰まりを解消することが狙いといわれているのです。

米の価格が高騰している原因については、農林水産省は市場にある米の量が足りないからだと考えています。

昨年の主食用米の生産量は18万トン増えたのですが、JAなどが集めた米の量は21万トン減少しているのです。
米の減少量を補うため、農林水産省は21万トンの確保していた米を放出することにしました。

米の値下がりが期待される中、決断が遅い、値上がり前に放出して欲しかったという意見も出ているでしょう。
2024年の時点では米が不足気味ではあったものの回復の余地があると思われており、慎重に判断した結果今となりました。

また、農林水産省が米を出し渋っていたといわれていますが、その理由は生産調整などの配慮が無駄になるのを恐れたためです。

農家では、ロシアのウクライナ侵攻や円安によって農業の生産コストが上昇してしまい、経営も厳しくなっていました。
しかし、今回の米価格の大幅な値上がりによって、ようやく利益となる水準を満たすことができたのです。

もし農林水産省が米を放出すれば需給の均衡が崩れてしまう可能性があり、大きく値下がりするのを防ぎたいと考えていたとも考えられます。

では、なぜ方針を転換して放出を決めたのかというと、米の価格の高騰が限度を超えて止まらなかったからです。
米の価格は上がり続けていて、2月上旬には昨年の2倍近い価格になっており、まだまだ下がる気配が全くないのがきっかけとなりました。

米の放出に関する指針を、災害時や深刻な不作のときとしていた方針を転換し、流通への影響をいったん無視して放出することにしたのです。
主に昨年から保管していた米が出されたのですが、一昨年のものも一緒に出されています。

昨年のものは店頭に並ぶことを想定していますが、一昨年の米は基本的に弁当や外食など中食向けに販売することが予定されているのです。

また、政府から出された米は今後お店で売られるようになり、一般家庭でも購入できるようになるといわれていますが、市場ではほとんど見られません。
米の流通は、原則的に生産者からいくつかの業者を介して流通していくものです。

集荷業者と呼ばれているのが通称JA、農業協同組合のことで、流通における総元締めという立場になっています。

政府から出される米は集荷業者による入札で売却され、集荷業者に引き渡されるのが3月半ばであれば当月中か翌月頭には消費者に届くでしょう。
スーパー等で米の在庫を切り替え次第販売されると想定されていますが、農林水産省では備蓄米の流出が十分かなどの状況を確認しています。

しかし、なかなか見かけることがないという不満の声もあるため、一度しっかりと確認した方が良いのではないでしょうか?

まとめ

備蓄米というのは国が確保して保管している米のことで、1993年に起こった記録的な不作をきっかけとして1995年から始まった制度となります。
毎年20万トン購入して5年間保管するという制度であり、5年が経過すると飼料用米やボランティアなどに販売されているのです。
今回は、比較的新しい米が放出されて米の高騰を食い止めることを目的としているのですが、市場にはなかなか出回りません。