スマートシティにおけるデジタルリスク

事故・災害リスク

効率的な都市運営ができるスマートシティは、最近よく聞かれるようになってきました。
構想からいよいよ本格的に実施されてきたものの、いくつかの課題があるのも確かです。
その中でも、デジタルリスクは解決しなければいけない問題の1つです。
スマートシティにおけるデジタルリスクには、どう対処すればいいのでしょうか?

スマートシティとは?

スマートシティは、国土交通省が提唱した街づくりの構想です。
都市が抱える諸問題に対して、ICT等の新技術を活用しつつマネジメントが行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区というのが、その定義です。

地方都市には、観光や農林水産業、教育、医療、雇用、防災など多くの固有の課題があります。
こういった課題を、ICTなどを活用して解消し、マネジメントが行われるのが、スマートシティです。

これに関しては、既に平成24年度から26年度にかけて、ICT街づくり推進事業としてモデル実証が行われています。
平成27年度からは、その実証などから創出された各課題分野の成功モデルを各地に展開するための補助事業も開始されています。

現代の都市が抱える問題には、人口減や高齢化、訪日外国人への対応、教育の高度化、医療費の削減、災害対応などの課題が複合化しています。
財政難の都市も多く、分野別の情報システムの共有化も急務とされています。

街づくりにおいては、従来の土地や建物を中心としたハード面中心の街づくりから、データを活用したソフト面での街づくりへとテクノロジーがシフトしています。
諸外国の先進都市では、既にスマートシティの取り組みが先行しているので、それを参考にできます。
そうして、Society5.0時代に求められる街づくりへと推移していくのです。

行政サービスには必要な共通のプラットフォームを構築して、あらゆる分野の議題解決に活用することが効率的でしょう。
ソフト重視の街づくりには、データを積極的に収集して分析し、アプリ開発に活かすなどの行動が必要とされます。
それにより、データ利活用型スマートシティによって、議題を解決できるようになります。

スマートシティのデジタルリスクとは?

スマートシティのデジタルリスクは、いくつかあります。
既に海外ではスマートシティが推進されているので、そこでの事例を紹介しながら解説していきます。

カナダでは、2017年にトロントの南東部をスマートシティとして再開発するプロジェクトが発表されました。
当初の予定では、マスタープランを2018年末までに完成させることになっていたのですが、ここでプロジェクトが難航しました。

データ収集において、個人の特定が可能となるデータが大量に収集されてしまったのが問題となったのです。
そして、プロジェクトが発足してから1年後に、プライバシー問題のためプロジェクト委員会の専門家が辞任してしまいました。

更に、2019年4月にはプライバシーの権利を侵害する計画とカナダ自由人権協会が主張して、カナダ連邦政府に対して訴訟を起こす事態となりました。
このように、データ収集に関しても慎重に行わなければ、大きな問題となることがあるのです。

デジタル化の進展は、サイバー攻撃者の標的になる可能性を高めてしまう点も、注意しなくてはいけません。
かつて、サイバー攻撃によりウクライナで大規模停電が起こされたことや、自動自転車の制御を奪うことができると証明されたことを忘れるわけにはいかないのです。

米国カリフォルニア州では、プライバシー保護やサイバーセキュリティに対する法制度を進めて、先手を打っています。
特に、IoTセキュリティ法は米国でも初めての法律です。

スマートシティの実現の準備として、多くの都市ではIoTセンサーやネットワークカメラを設置して、データを収集します。
しかし、この時点ですでにプライバシー保護やサイバーセキュリティへの備えをしておかなければ、計画も途中で止められてしまう恐れがあるのです。

デジタルリスクへの対策

デジタルリスクへの対策としては、まずIoT、および5Gセキュリティが考えられます。
具体的な対策は、海外や国内ですでに実施されたスマートシティの事例から学びつつ要件を考えていくべきでしょう。

まず、ニューヨーク市では観光サービスの向上を目的として、Wi-Fiを活用した相互コミュニケーション可能な通信基盤を提供しています。
2ブロック以内のローカル情報やサービスをリアルタイムに配信して、Wi-Fiを経由してデバイスへと提供しています。

また、それに伴って観光客がスマートフォンやデジタルサイネージ、カメラなどのIoT機器を接続できるように、セキュリティを施したWi-Fiアクセスポイントを展開しています。
そして、収集したデータは共通化されたプラットフォーム内で適切に連携して、観光や広告、防犯、防災などに活用されています。

バルセロナ市では、Wi-Fiを共通インフラとして各種のスマートシティ・サービスを提供することで、30億ドルの価値を市内に創造しました。
そして、Wi-FiなどIoT機器接続インフラやデータ共有・接続認証等のネットワーク、通信プラットフォームを共通化することで、セキュリティを維持しています。

国内の事例では、まず北海道札幌市でサービス提供やオープンデータ化に対して地元企業などの多数の主体が参画できる体制を整備しました。
人流データや購買情報、路面情報などを提供できる体制を整えると共に、個人情報に関しては匿名加工されたデータを収集・分析するようにしています。

福島県会津若松市では、市民参加を促進するデジタルコミュニケーションプラットフォームを活用して市民や観光者などとの接点を強化し、デジタルデータを基にマーケティング改善できるようデータの集積・分析を行っています。
パーソナルデータは、匿名化されて活用されています。

この他に、地域が連携してセキュリティ人材を育成する動きも現れています。
セキュリティ人材が不足している中で、育成には力を入れる地域も多いでしょう。
どのような人材が求められているのかを把握して、必要な人材の育成に協力していきましょう。

まとめ

スマートシティは、そこに住む人や観光で訪れた人にとって、非常に利便性が高いものです。
ネットワークによって距離という垣根が取り払われ、多くの情報を基にしてその都市の在り方を適切に変えていくことができるため、都市の魅力もさらに増すことになるでしょう。
それを活用するには、デジタルリスクへの対策を欠かすことはできません。
どのような対策が必要なのかを把握して、それぞれがセキュリティ対策を出来るようにしておきましょう。