ソウル雑踏事故から学ぶ群衆心理と危機意識

事故・災害リスク

2022年10月29日に韓国の首都ソウルで起こった雑踏事故では、多くの人が巻き込まれて150名以上の死者が出てしまいました。
この事故の背景には、群集心理があるのです。
また、事故に巻き込まれたときに備えて危機意識も持つべきでしょう。
事故の背景となった群集心理と、持つべき危機意識について解説します。

事故の背景にある群集心理とは?

そもそも、雑踏事故が起こる雑踏というのはどのようなものでしょうか?
基本的に、人が詰まると雑踏が出来上がります。
しかし、雑踏には共通する特徴があるのです。

まず、雑踏というのは人が集まるということが予測できるものです。
一般的に、雑踏は恒例的、もしくは年中的な行事に関連してできるものなので、事前予測が可能なのです。

ただし、近年ではその傾向が若干異なることもあります。
インターネットでの呼びかけによって、突発的に多人数が集合するというケースもあるため、予想できるケースは多いものの絶対ではありません。

また、雑踏に警戒する行事としては、祭礼や花火大会、様々なイベント、スポーツ競技、競馬や競輪などの公営競技、その他花見や観月会など娯楽を目的とした多数の人出がある催し物などです。

小さなイベントなどではなく、特に混雑が予想されるものが特に警戒されます。
近年では、ハロウィン時期の渋谷などが最重要の警戒対象となっています。
過去、花火大会の帰り道で事故が起こったこともあります。

雑踏事故が起こる原因として、群集心理が挙げられるのはなぜでしょうか?
それは、個々人の影響は少なくても、群衆になった時には危険度が高まるからです。
危険度が高まる理由は、いくつかあります。

雑踏というのは、単なる人の集まりです。
それぞれに役割を持っているわけではなく組織性もないため、どこに注意すればいいということがありません。

そして、ここに区別されず全体として雑踏と言われるため、匿名性が高く理性が低下しやすくなっています。
異常な雰囲気に巻き込まれてしまうと、無責任性や無批判性がさらに高まり暗示にもかかりやすくなります。

群集心理には、いくつかの特徴があります。
暗示にかかりやすくなり、普段なら信じないような流言や冗談などを真に受けやすくなってしまう軽薄性もその1つです。

個人に対しての責任感が弱くなり、集団の雰囲気に流されやすくなって道徳や秩序、
規範に対しての理性や意識が失われやすくなる無責任性や、感情がシンプルになって興奮しやすくなり、極端な偏りのある行動をとることが多くなる興奮性なども特徴です。

自己を恐れる気持ちや自分の行動が思い通りにならないことなどに怒りを持ち、暴力行為に走りやすくなる特徴が暴力性です。
交通整理に従わず、自分勝手で直情的に行動する直情性や、他人の非常識な行動が伝染してしまう付和雷同なども特徴に含まれます。

危機意識について

雑踏事故は、その雑踏を構成する群衆全体の意識が影響するものです。
しかし、雑踏事故を想定し、危機意識を持つことはできるでしょう。
雑踏事故を制御するために、まずはどのようなケースで起こりやすいのかを考えてみましょう。

雑踏事故が起こる可能性が高いのは、袋小路やトンネル、階段などの空間が限られていて逃げ場がないケースです。
遮る物がない場所ではそもそも密集することが少ないため、事故も起こりにくいのです。

事故を防止するために気を付けることとしては、まず人が常に動き続けるようにすることです。
それも、スピードを出さずにゆっくりと動いていかなければいけません。

急いで動いてしまうと、他の人にぶつかりやすくかえって危険になります。
また、静止している状態では周囲に圧力がかかりやすいため、どこかでバランスを崩すと群衆雪崩や将棋倒しなどが起こりやすくなるのです。

また、接触を避けるためにも人の流れが衝突するようなことがあってはいけません。
原則として、一方通行にしなくてはいけません。
その場合は、前後との接触に注意しましょう。

また、滞留を防ぐ必要もあります。
そのためには、群衆の流れに沿わず停止している群れを成している人物を排除しなくてはいけません。

雑踏事故は、そうそう起こるものではないと思うかもしれません。
しかし、実際に日本でも雑踏事故は何回も起こっています。
また、韓国や上海、台湾、イギリス、ペルー、サウジアラビア、アメリカ合衆国など世界中でも起こっています。

今回のソウルの雑踏事故は、ハロウィンのイベントでの人出の想定が甘く、事故が起こりうる状況であるというリスク認知ができていないことが問題でした。
事故が起こるかもしれない、という危機意識が足りていなかったのです。

また、事故の当事者にも危機意識が足りなかったと言えるでしょう。
過剰な過密状態になっている空間で、何が起こるのかを想像していなかったことが事故につながっています。

雑踏事故は、災害時などにも起こり得ます。
地震や火事などで建物から逃れる際に、ビルのように大きな建物で人が多い場所であれば、階段に多くの人が殺到すると考えられます。

この時、雑踏事故に対する危機意識がなければ、我先にと逃げ出そうとして人にぶつかったり、転倒したまま他の人に踏まれたりする危険性が高まります。
小学校で行った避難訓練が、危機意識を高めるために有効だったのです。

雑踏事故が起こる可能性のある場所では、危機意識を高めて万が一に備えておくべきでしょう。
人口密度が高まってきた場合は、事前に抜け出すことも大切です。

まとめ

ソウルで起こった雑踏事故は、多くの犠牲者を出した痛ましいものでした。
将来、同様の事故が起こることを防ぐためにも、事故の原因となった群集心理や事故を想定した危機意識、そして事故が起こった場合の備えなどを欠かさないようにしましょう。
人が集まる場所以外にも、火事などの災害で避難する時に群衆と交わることもあり得ます。
そういったケースにも、備えておきましょう。