日本は食が豊かな国といわれていますが、一方で、食料自給率は40%前後と決して高くはなく、半分以上を輸入に頼っているのです。
自給率が低くても輸入できているなら問題ないと思うかもしれませんが、食料の自給率は安全保障にも関わってくるのです。
食料の自給率と安全保障の関係について、解説します。
安全保障と食料安全保障の違い
食料の自給率と安全保障には関係があるといわれてもピンとこないかもしれませんが、安全保障ではなく食料安全保障なら関係があるように思えるでしょう。
安全保障という言葉は普段耳にすることはないのですが、最も有名なものだと日米安保条約があります。
安保というのが安全保障のことで、アメリカ軍が日本国内に駐留しているのは条約に基づいて定められているのです。
一般的には軍事的なものとして用いられる言葉ですが、今では範囲が広がってエネルギーや経済、さらには食料なども含まれるようになりました。
安全保障だけではなく食品安全保障という言葉もあるのですが、具体的にどのような意味で使われているのでしょうか?
まず一般的な安全保障というのは、国家が軍事的手段を用いて、国民の生命や財産を守ることをいいます。
一方、食料安全保障というのは国家が食料の国内生産、もしくは備蓄や輸入をして食料を確保し、十分な食料が国民にいきわたるようにすることです。
日本国憲法や法律の内容から見ても、食料に関しての安全保障は非常に重視されていることが分かります。
まず、日本国憲法の第25条第1項には、すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するという条文があるでしょう。
特に広く知られている条文で、日本国民は十分な食料を得ることのできる権利があるという意味でとらえられています。
日本の食料に深く関わる農林水産省も、国には国民がきちんと食料を適切な価格で入手できるようにすることを掲げているのです。
また、2024年に改正された食料・農業・農村基本法でも、食料安全保障に関して定義している点があります。
良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、国民一人ひとりが問題なく食料を入手できる状態として、食料安全保障の確保が基本理念の1つになっているのです。
しかし、今の日本では食料自給率が非常に低く、国民が十分な食料を得るためには食料を外国から輸入することが不可欠となっています。
日本が主に食料を輸入しているのは、アメリカ、中国、オーストラリア、タイといった国々です。
食料の輸入依存は年々進んでいて、カロリーベースの食料自給率でみると1965年には73%でしたが、2021年には38%に低下しています。
また、食料以外にも肥料や飼料、種子といった農業に必要となる資材の多くも輸入に頼っているのが現状です。
したがって、万が一全ての資材の供給が停止した場合を考慮すると、日本では食料を約9%しか自給できていないという試算もされています。
また、農業が機械化されたことで石油が必須となっているのですが、日本の石油はほぼすべて輸入に頼っているためさらに下がる可能性もあるのです。
食料や関連する資材などの多くを輸入に頼っている現在、他国の方針変更によって輸入が止まると食料が得られなくなってしまうリスクにさらされています。
ロシアのウクライナ侵攻や中東紛争に加えて台湾有事や北朝鮮情勢などの、食料を取り巻く地政学的リスクが改めて注目されているのです。
例えば、台湾有事で日本へ物資を運ぶための海上ルートである台湾海峡や南シナ海のマラッカ海峡などが影響を受けた場合は、食料が届かなくなる可能性があります。
国内情勢ではなく他国の情勢に食料調達を左右される現状は、決して安全とはいいがたいでしょう。
食料の武器化とは
食料の輸出入をめぐっては、時として他国による食料の武器化という形をとるときもあります。
具体的にはどういうことかというと、ある国が他国の食料供給を制限したり途絶えさせたりする戦略のことです。
古くは、ナポレオンの大陸封鎖令があり、日本も第二次世界大戦でアメリカに食料調達を妨げられ、ロシアがウクライナに侵攻した際も小麦の供給が断絶しました。
また、ある国が自国の食料生産を優先するという政策を打ち出したことで、他の国に悪影響を及ぼすケースもあるのです。
近年では中国が2021年に肥料の輸出を制限したことで、日本の食料供給の妨げとなりました。
様々な安全保障と同じく、食料安全保障も日本の国家安全保障の重要な部分となっているのです。
しかし、消費者の皆様は食料安全保障がそれほど身近で重要なものだという認識がないという人が多いと思います。
2024年に実施されたアンケート調査の結果を見ると、そもそも食料安全保障という言葉を知らない人がおよそ8割となったのです。
また、日本のカロリーベースの食料自給率についてきちんと知っている人も10人中3人という結果になりました。
食料安全保障を達成するための障害となるものは何かという質問には、およそ半数が価格高騰や世界規模での不作と回答しているのです。
しかし一方で、食料安全保障に関連する地政学リスクについての回答を挙げた回答者は約27%に留まりました。
もちろン天候不順や円安なども様々な食料の価格に影響を与えるのですが、、地政学上のリスクとも密接な関係があるのです。
地政学上のリスクが今まで以上に高まる中、私たち消費者も様々なリスクに目を向ける必要があります。
今後も食料の供給を確保するためには、食料安全保障に対する理解を深めていくことが必要となるでしょう。
食料は何もしなくても手に入るものではないということを自覚して、安定した供給を得られるようにしましょう。
まとめ
日本の食料自給率は38%とかなり低く大部分を他国からの輸入に頼っているのですが、もし輸入を止められてしまうようなことがあれば日本の安全は守られません。
食料安全保障というのは国家が食料の国内生産、輸入、備蓄によって国民を飢えから守ることですが、十分に守られているとはいえず、実際に輸入できなくなる例もあるのです。
生活の根幹となる食料を他国に頼りきりになっている現状について、今一度考え直す必要があります。

