学校で使用する教科書といえば紙のものが基本ですが、2019年度からは代替教材としてデジタル教科書が使用できるようになったのです。
紙の教科書にできない様々な利点もあるものの実際には不評といわれていますが、なぜでしょうか?
デジタル教科書が不評なのはなぜか、理由について解説します。
現場では懸念の声が多い
デジタル教科書は紙の教科書と同じ内容を端末の画面に表示するもので、現在は紙の教科書の代替教材として扱われているのです。
国では正式な教科書として認められることを目指しており、正式教科書化すれば動画や動かせるグラフ、音声なども利用できるようになります。
同時に紙の教科書と同じく国の検定を受けることになり、使用義務の対象にもなるのですが、現場では懸念の声も多く上がっているのです。
政令市などを中心に90市区の教育委員会にアンケートを取った結果、約6割が懸念を持っていると回答しています。
懸念している理由としては児童生徒の健康面や学習への影響に対する心配で、全体の半数は紙中心の教科書を望んでいるのです。
文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会は、9月にデジタル教科書を正式な教科書として国の検定や採択、使用義務の対象にする審議のまとめを公表しました。
紙とデジタルのどちらかにするだけではなく、紙にQRコードを掲載してインターネト上の動画や音声などの教材も含めて教科書にするハイブリッド型も示したのです。
審議のまとめを踏まえたうえで109教育委員会にアンケートを行い、90教委の回答で懸念がある、どちらかといえばあると61%が回答しました。
具体的な割合としては、あると回答したのは12%、どちらかといえばあると回答したのが49%、どちらかといえばないが29%、ないが10%となったのです。
また、具体的な懸念点を10項目から複数回答で選択した結果では、最も多いのが視力の低下や姿勢の悪化などの子供の健康面への影響で69%が回答しました。
次いで多かったのが、災害や停電、大規模通信障害が起こったときに教科書を見ることができなくなるという点で67%でした。
学習への影響を懸念する声も目立ち、児童生徒が文字を書く時間が減少するというのが37%、授業と関係ないネットや動画、ゲームの操作をしてしまうが28%となりました。
一方、期待する点も複数回答で選択した結果では、英語などの音声の読み上げを97%が選び、動画やアニメーションを利用できるという声も多かったのです。
望ましい教科書の形態を聞いたところ、紙が中心のハイブリッドで、デジタルは補助的な使用にするというのが50%で最多となりました。
紙中心を選んだ理由には、鉛筆で書き込んだり教科書をめくったりすることで学習内容を把握しやすいといった意見があったのです。
一方で、デジタル中心のハイブリッドは9%と最も低い選択割合に留まり、あまり望まれない形となりました。
文部科学省では来年の通常国会で学校教育法など関連法を改正して、2030年度から学校現場で使用できるようにすることを目指しているのです。
デジタル教科書は導入するべきなのか
日本でもデジタル教科書の是非を問う議論が熱を帯びていますが、北米では世界に先駆けて教育現場へのデジタル化のため導入しました。
しかし、ここ数年で紙の教科書に回帰する動きが増えているため、日本でも導入に関しては慎重に取り組んでいく必要があるでしょう。
しかし、デジタル教科書に関しては是か非かのどちらかにするだけではなくもっと解像度を上げて議論をしていく必要があります。
デジタル教科書に反対する理由として、同じ内容ならデジタル媒体よりも紙媒体の方が理解力や記憶力で優位になるといいう研究結果があるのです。
確かに、デジタルと紙を比べると複雑な文章や長文の読解は紙の方が優位になるといわれています。
また、記憶を定着させるという観念から見るとレイアウトが変わらないという特性を持つ紙媒体の方が有利になるといわれているのです。
紙の優位点があるため、紙の教科書を廃止して全てデジタル教科書に切り替えるという主張をしても、認められるとは考えられません。
是か非かでいえば、デジタル教科書を導入するべきではない、利用するべきではないということになるのでしょう。
しかし、文部科学省が2020年度に実施した小学生に対する調査では、デジタル教科書の方が効果を実感できるという結果が出ています。
デジタル教科書でも教科書に直接書き込むことのできる機能があるため、活用することで自分なりに試行錯誤しやすくなったのです。
また、線を引いたところをクラス全体で瞬時に共有することで、自分の考えと他者の考え、視点の違いを比較しやすくなるというメリットも挙げられています。
また、特別な配慮が必要な子どもには欠かせないツールとなり、文字を拡大したり背景色とのコントラストを強くしたりすることもできるのです。
読み上げ機能を使用することで視覚や聴覚に障害がある子どもの助けになり、学習障害などの特性があって紙の教科書が読めない子どもたちが救われています。
現在ハイブリッド型が特に望まれているように、紙とデジタルのどちらかに限定するのではなく両方使用できるようにするのが望ましいのです。
国語の文章は紙で読んで算数の計算問題はデジタル教科書に回答を書き込むようにし、社会の年表は紙で見て理科の実験は動画コンテンツでもリアルに体感できます。
場面ごとに使い分けるようにするだけではなく、個人の特性に合わせて紙の方が適しているか、デジタルの方が理解しやすいか血といった使い分けもできるのです。
子供の個性に合わせて教科書を選ぶことができるようにして、紙かデジタルかを選ぶのではなくどちらも使用できるようにしましょう。
特性に応じて使い分けることができるようになれば、子供たちにとって最善の利益につなげることができるはずです。
まとめ
デジタル教科書は紙の教科書と同じ内容を端末の画面に表示するだけではなく、動画にしたりグラフを動かしたり、音声で読み上げたりすることもできる教科書となります。
国では正式教科書化を目指しているのですが懸念する声も多く、紙の教科書を中心としたハイブリッド型での導入が最も有力となるでしょう。
紙とデジタルのそれぞれのメリットを生かし、併用することでより学習の理解が深まるようになります。


