消費税増税は多くの国民や企業が反対する政策ですが、実は大企業は強く反対しない、あるいは容認する姿勢を見せるのです。
なぜ大企業が反対しないのかというと、輸出戻し税による還付や法人税引き下げ、下請けへの価格転嫁などが背景としてあるのです。
大企業が消費税増税に反対しない具体的な理由について、解説します。
消費税増税は大企業にとってメリットがある
大企業、とりわけ自動車や電機、機械といった日本の主要な輸出産業が消費税増税に反対しない最大の理由は、輸出戻し税という制度の存在です。
消費税は日本の国内で消費されるモノやサービスに対して課される税金なので、製品を海外の市場で販売する輸出に対しては日本の消費税を課すことができません。
ただし、製品を製造して輸出する大企業も国内で部品を買い、原材料を仕入れて工場を建設する際には下請け企業やサプライヤーに対して消費税を支払っているのです。
企業が国に納める消費税は原則として、売り上げ時に顧客から預かった消費税から仕入れ時に他社へ支払った消費税を差し引く仕入税額控除を行って計算します。
しかし、輸出大企業の場合は売り上げの多くが輸出で税率0%なので、預かった消費税はほとんどゼロになるのです。
一方で支払った消費税は国内での仕入れに伴って大量に発生しているため、計算式は必ず大幅なマイナスとなり、国がマイナス分を還付金として大企業に現金で全額返還します。
税率が5%から8%、10%へと引き上げられると、大企業が仕入れ時に支払う消費税額もそのまま膨らんでいくでしょう。
国から戻ってくる還付金の額も税率に比例して巨額になるため、消費税率の引き上げは輸出大企業にとって国から還付される手元流動性の増加をもたらすことになります。
日本の税制改革の歴史を紐解くと、消費税の増税は常に法人税の減税や企業の社会保険料負担の抑制とセットで議論され、実行されているのです。
政府では、現役世代や企業業績に依存する所得税や法人税などの直接税の割合を減らし、世代を問わず国民全員から徴収できる消費税を増やすべきという意見を推進しています。
経団連も日本の法人税率が諸外国と比べて高すぎるため、グローバル競争に勝てず企業が海外移転してしまうと長年主張して、結果として法人税は大きく引き下げられたのです。
大企業の視点に立てば、たとえ消費税が増税されて国内の消費が冷え込んでも、法人税率が下がれば税負担はトータルで相殺されプラスになることもあります。
自社の直接的な利益を守りグローバルな株主への配当原資を確保するためには、法人税減税と消費税増税を交換したほうが経営戦略として極めて合理的だったのです。
下請け企業への価格転嫁と節税
消費税の本質的なリスクは、増税分のコストを最終的に誰が財布から出すか、つまりどこで価格に転嫁するかということにあります。
大企業が反対しないのは、自らが負担を背負うのではなく自社のサプライチェーンに連なる数多くの中小企業や下請け企業に転嫁できるからです。
大企業は、中小企業や下請け企業に対して圧倒的な優位性を持っているため、自社の利益率を維持するために仕入れ先に対して交渉することができます。
消費税が増税されたとしても納品価格は税込据え置きにしてほしい、増税分は企業努力で実質的な本体価格の値下げを行い吸収してほしい、と要求できるのです。
下請け企業や中小零細企業は、大企業との取引を切られることを恐れて泣く泣く要求を呑まざるを得ないケースが後を絶ちません。
本来なら消費税は次の流通段階へ順番に転嫁していくべきものですが、BtoBの力関係で大企業は増税によるコスト上昇を下請け企業に押し付けることができるのです。
自社の身を切ることなく周囲に痛みを分散できる構造があるため、大企業経営陣にとって消費税増税は業績を直撃する脅威にはなりません。
インセンティブ消費税の税額計算のメカニズムそのものが、大企業が人件費を削減し、増税の悪影響を回避する強力な動機を生み出しているのです。
消費税を計算する際、社内の従業員に支払う給与には消費税がかからないため、給与をいくら支払っても企業の売り上げから差し引ける消費税(仕入税額控除)には使えません。
しかし、外部の派遣会社に支払う派遣費用や外部の請負業者に支払う外注費には、消費税が課されているのです。
企業が正社員を雇用する代わりに業務を外部委託したり派遣社員に切り替えたりすると、支払いは消費税が含まれる仕入れとして扱われます。
外注を増やすことで、大企業は自社が国に納めるべき消費税を大幅に減らすことができるのです。
消費税率が8%から10%、あるいはそれ以上に上がれば上がるほど、正社員を雇うよりも外注化・非正規化を進めた方が企業の得られる節税効果は跳ね上がります。
大企業は雇用の流動化を進めながら税制の仕組みを巧みに利用して自社の税負担を軽減できるため、増税を不都合と捉えない経営環境が整っているのです。
消費税を増税すれば国内の消費が冷え込んで大企業の製品も売れなくなるのではないかという指摘は一見正しく思えますが、大企業は国内市場への依存度が低くなっています。
日本を代表する大企業の多くは、売上や利益の過半数を北米、アジア、欧州などの海外市場から得ているのです。
日本国内の消費税が引き上げられて国内市場が一時的に低迷したとしても、海外市場が好調であればグループ全体の業績への影響は少なく済みます。
さらに、過去数十年にわたる法人税減税やコストカット、非正規雇用の拡大によって、日本の大企業は巨額の内部留保を蓄積しているのです。
資金的な体力が潤沢であるため、増税直後の短期的な消費減退期があっても経営が揺らぐような事態には陥りません。
景気変動への耐性があるからこそ、マクロ経済的な消費冷え込みのリスクを過度に恐れることなく政府の方針に賛同を示すことができるのです。
まとめ
大企業が消費税増税に反対しないのは、輸出戻し税により増税されるほど巨額の還付金が戻ってくることや法人税が減税されて企業負担が相殺されていることなどがあります。
強い立場を利用して増税分のコストを下請けや消費者に転嫁することもでき、税制上の仕組みを利用して雇用の非正規化や外注化で節税もできるのです。
消費税の増税は、大企業にとっては他の税制優遇を受けられるチャンスでもあるため反対する理由がありません。

