水も兵器化されてしまうという意味

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イランとアメリカ、イスラエルとの戦争が激化する中、水さえも兵器化されてしまうことが大きく懸念されるようになっています。
生物が生きるうえで欠かせない水ですが、兵器化されてしまうというのはいったいどのような意味なのでしょうか?
水も兵器化されてしまうという意味について、解説します。

イランの戦争における水の兵器化

イランでは、イスラエルとアメリカによる空爆を受けて最高指導者であるハメネイ師が死亡したことで、後継者に次男のモジタバ師が選出されたのです。

後継者となったモジタバ師は反米強硬派として有名で、イランは今後革命防衛隊を中心としてさらに強硬な軍事独裁国になっていくと思われます。

イランはペルシャ湾の湾岸諸国にドローンやミサイルで攻撃を加えており、バーレーンでは国内の海水淡水化プラントが損傷したことを発表したのです。

ペルシャ湾岸諸国は砂漠気候なので天然の淡水はほとんどなく、海水淡水化プラントは国民にとっての命綱となっています。

湾岸協力会議(GCC)加盟国は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、カタール、オマーン、バーレーンの6カ国です。

6カ国だけでも、合計で400もの海水淡水化プラントが稼働しており、海水から作られる水の約半数は中東アフリカで製造されています。

砂漠の国である湾岸諸国は海水からしか水を得ることができないのですが、今までGCC諸国では海水淡水化プラントが攻撃されることは考えられなかったのです。

水は食料と並んで人間の生活に必要不可欠なものであり、手に入れることができなくなると国家の安全保障は崩壊してしまいます。

現在はホルムズ海峡もイランによって封鎖に近い状態となっているため、原油や天然ガスなども世界中で混乱が広がっているのです。

ホルムズ海峡を通って運ばれる原油はアジア市場に向かうものが多いため、アジアの国の中には使用制限や輸出制限に踏み切った国も増えています。

GCC諸国では食料が輸入できなくなっているため、食料品の高騰や品不足などが始まっているのです。

戦争においては水さえも兵器として使われるというのが現実なのですが、水は古くから兵器として使われることが多いものなので、備えは常に必要となります。

水が兵器化される恐怖

水は日常の中にあるもので、特に日本では安全な水が豊富にあるため水難事故以外では脅威を感じる人は少ないでしょう。

しかし、水は古来より兵器化されることが多く、意図的に支配、操作されることで政治や軍事における圧力手段として用いられることもありました。

中国では現在巨大ダムプロジェクトを推進しており、チベット自治区が源流のブラマプトラ川に墨脱(メトク)ダムを建設しようとしているのです。

メトクダムは水流の落差を利用した水力発電のために建設しようとしているのですが、ブラマプトラ川は下流でインドやバングラデシュに流れこんでいます。

複数の国を流れる国際河川なので、意図的に放水を操作することで下流域では洪水や干ばつが起こる可能性があるのです。

インド政府では、中国政府によって水が武器化されるのではないかと警戒を強めています。

水は生命を支える重要なものですが、古代中国では城の近くの川をせき止めて城を水没させるという戦術があったのです。

また、ルネサンス期にはレオナルド・ダ・ヴィンチが軍事技術に水を利用することを構想していました。

上流でせき止めて川を干上がらせたり、複数の可動堰を設置して敵が橋を渡る際に水で押し流したりするといった作戦を考案していたのです。

レオナルド・ダ・ヴィンチは水が生命の原因であり時には死の原因となるという言葉を残しており、水を自然の根源の力ととらえて恵みと脅威に関心があったことが分かります。

過去には、井戸に毒物や汚物を投げ込むことで集団を無力化するという戦術も時折みられるものでした。

関東大震災の直後には、朝鮮人が井戸に毒を入れたというデマが流布したことで、朝鮮半島出身者や朝鮮人に間違われた日本人が虐殺されるという事件も起こっています。

また、茨城県では井戸から高濃度のヒ素が検出され、旧日本軍の毒ガスの分解生成物と推定される有機ヒ素も確認されたのです。

現代の戦争においても、巨大ダムや水道インフラなどが攻撃を受けることがあり、2023年にはウクライナ南部のカホフカ水力発電所ダムが決壊しました。

決壊によって約80か所の都市や集落が浸水して数万戸の住宅が被害を受けたと政府から発表されており、原因は管理道路に仕掛けられた爆発物による破壊と報道されたのです。

攻撃がロシア側か、あるいはウクライナ側かは判明していないのですが、意図的な攻撃であれば明確に国際人道法に違反する行為といえます。

戦争犠牲者保護条約とも呼ばれるジュネーブ諸条約においてもダムや発電所、水道施設などは文民の生存に不可欠なものとして攻撃を禁止しているのです。

また、近年ではサイバー攻撃によって水が兵器化することも懸念されており、2021年にはアメリカのフロリダ州オールズマーの水処理施設がハッキングされました。

水道水に供給される水酸化ナトリウムの量が不正に変更されたのですが、職員が異常をすぐに発見したことで被害は未然に防がれたのです。

実例が出たことでアメリカ全体の水道関連機関ではサイバーセキュリティを強化したのですが、従来の物理攻撃とは違うので防ぐことができるかはわかりません。

サイバー攻撃は離れた場所からの攻撃であり、敵が見えないため完全に防御するのは難しく、敵の痕跡も辿れるかはわからないのです。

アメリカの研究機関によると、2010年以降にダムやダムの建設現場がサイバー攻撃やテロの標的となったケースは40件以上あるといわれています。

2020年にはエジプトとエチオピアとの間でナイル川をめぐり、サイバー攻撃の応酬があったと報じられているのです。

また、イスラエルではポンプ施設を中心とした水インフラがイランのサイバー攻撃を複数回受けていると報告しています。

直接的な攻撃だけに限らず、サイバー攻撃によっても水が兵器化されつつある今、戦況は複雑な様相を呈することとなるでしょう。

まとめ

イランがバーレーンの海水淡水化プラントを攻撃したことで、同じく海水淡水化プラントが命綱となっている湾岸諸国の緊張が高まっています。
水が兵器化されてしまうといわれている今、過去の戦争における水の兵器化とは違う脅威にさらされていることを知っておく必要があるでしょう。
特に近年では水関連施設へのサイバー攻撃の事例が増えているため、サイバーセキュリティも強化しなくては水を守ることができなくなります。