遺族年金が改悪されるのか??

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遺族年金制度の内容が見直される予定があり、実際に改正された場合は様々な点が変更となるのですが、改悪だという声も上がっているのです。
しかし、実際にどのような点が改正されるのかがわからなければ、本当に改悪なのかは判断できないでしょう。
今回は何が変わる予定になっているのか、解説します。

遺族年金制度の改正はなぜ必要?

会社員や公務員など、厚生年金に加入している人がなくなった場合、亡くなった方が生計を維持していた遺族には遺族厚生年金が支給されるのです。
遺族厚生年金を受給する要件は男女によって異なるため、以前から見直しが必要ではないかと指摘されていました。

たとえば、子のない妻が夫に先立たれると年齢に関係なく遺族厚生年金が支給されるのに対して、子のない夫は55歳未満だと受け取る権利がないのです。
制度ができたときは専業主婦が多かったため、夫に先立たれた妻は生活に困ることが多いのに対し、夫は働いて生活できるという考え方がありました。

しかし、今では女性が働くのも当たり前になっており、共働き世帯も増えるなど社会の状況が変化しているので、極端に男女で差をつける必要がなくなったのです。
現在の状況に合わせるため、2025年から遺族厚生年金の制度を改正しようと話し合いがされています。

2025年に予定されている遺族厚生年金の主な改正内容としては、まず20代~50代に配偶者と死別した人で子がいない場合の遺族厚生年金の変更です。

5年間の有期給付に変更される予定となり、改正後は要件の1つである年齢に関わる男女の差が解消されることになるのです。

今の制度に従った場合、女性は30歳未満だと5年間の有期給付、以降は生涯受給できるのですが、5年間の有期給付の対象年齢が段階的に引き上げられる見込みです。
一方で男性の場合は、20代~50代に妻と死別して子のいない人は、改正法の施行日から5年間の有期給付の対象になります。

今のルールでは、子どもがない夫は受給する条件が限られていたのですが、改正後は5年間受け取ることが可能となるのです。
支給期間が短縮されて、子のない妻の遺族厚生年金の支給期間が短くなることから、年金額を増やす措置を行うことも考えられています。

現在の遺族厚生年金の年金額は、「死亡した配偶者の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の金額」です。

改正法の施行日から有期給付加算(仮称)が創設される予定で、5年間の有期給付では給付額が増えることになります。
改正によって年金額が増額されれば、生活が落ち着くまでの間もらえる年金額が増え、公的に手厚い支援を受けることができるでしょう。

遺族厚生年金の受給要件のひとつに生計維持要件があり、現行制度では「同一生計要件」と「収入要件」を満たさなければ支給されません。

今回の改正では、50代以下の子どもがいない世帯においては、収入に関する要件がなくなることが予想されていました。
配偶者が死亡した場合は少なからず生活があるため、同一の生計という要件に当てはまれば受給できるようになります。

夫が亡くなったとき、一定の要件に該当する妻の遺族厚生年金に加算される、中高齢寡婦加算も廃止が検討されている制度です。

中高齢になってから夫が亡くなった場合、働くことが難しいケースも少なくないため、年金額に加算がありました。
しかし、今は女性も働くのが当たり前になっていて、就労環境も改善されていることから、徐々に廃止へと向かうことになるのです。

年金制度が改正された場合の影響

配偶者が亡くなった際は、年齢や子どもがいるかどうかなど、様々な要件によって改正の影響についての違いがあります。
どのような影響があるのか、需給機関や金額には変化があるのかを、事前に確認しておいた方が良いでしょう。

今回の改正では、50代以下で配偶者と死別していて、夫婦だけだったという人が主な対象となります。
高齢になってから配偶者が亡くなった場合に受け取る場合は、現行制度からあまり変更がありません。

しかし、今後の制度の変更点次第では老後の老齢厚生年金の受給額が今までよりも増える可能性があるのです。

またたとえ改正されたとしても、すでに受け取っている年金に関しては改正後の影響を受けることがありません。
一定以上の年齢ですでに受給が開始している場合は、特に問題なく引き続き年金を受け取ることができます。

今回の改正は、子のいない配偶者の遺族厚生年金に関する改正が中心なので、子のいる配偶者は基本的に影響を受けず、現行通りに給付を受けることができるでしょう。

ただし、中高齢寡婦加算が廃止されると、加算額がなくなる分だけ現行制度よりも受給額が減ってしまうかもしれません。
子どもの年齢の要件など一定の要件に該当して中高齢寡婦加算の対象になるケースは、対象外となってしまえば特に影響を受けることはないのです。

なお、寡婦に対する年金制度も廃止に向かっていますが、施行日前に受給権が発生している寡婦年金は引き続き受給できるので、大きな問題とはなりません。
配偶者と死別した夫婦だけの家族の場合、現行制度では男性は55歳未満だと遺族厚生年金の支給対象外です。

しかし、法が改正されると改正後は、20代~50代の男性も新たに5年間の有期給付の対象になります。
一方で女性の場合は、配偶者と死別して子がいない人の遺族厚生年金は、対象年齢がだんだんと高くなっていきます。

現在よりも対象年齢が幅広くなっていき、段階的に年齢が上がっていく予定となっています。

まとめ

2025年に遺族厚生年金の制度を改正することが議論されていて、50代以下の年齢で配偶者と死別した場合は5年だけ受給できるように変化することになるのです。
また、子どもがいない妻が受給する場合は支給期間が短くなるため、代わりに増額するという考え方も出ています。
寡婦を対象とした加算制度は今後廃止に向かうのですが、施行日前に受給権が発生していれば現行制度のまま維持されることになるでしょう。