天心VS武尊地上波撤退から考える、ペーパービューの功罪

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昨今の日本では、テレビ離れが深刻になっていると言われています。
その代わりに見られているのが、ペーパービューです。
その影響か、6月19日に行われた那須川天心VS武尊の試合がこれまでの地上波放送ではなく、ペーパービューになっています。
地上波撤退から、ペーパービューの功罪について考えてみましょう。

地上波の変化

テレビの地上波は、昔とは大きく変わってきています。
得に変化しているのが、スポーツの扱いでしょう。
昔と比べて、スポーツの放送が大きく減ってきているのです。

昔であれば、オフシーズンを除いて野球の試合はテレビで毎日のように流れていました。
また、プロレスなどもゴールデンタイムに流れていたのです。
サッカーなども、Jリーグが発足してからは多数の試合が放送されていました。

しかし、BS/CS放送が登場してからはスポーツ専門チャンネルも登場し、地上波での放送は減少していきました。
主要な試合は地上波でも放送していましたが、それ以外はBSやCSで放送されるようになったのです。

そして、デジタル放送へと切り替わりBSもチャンネル数が増えたことで、地上波からはほとんどスポーツ放送が消えてしまったのです。
そして、スポーツが好きな人の多くはスポーツ専門チャンネルに加入するようになりました。

さらに、現在はネットでの放送が増えていることで、より気軽にスポーツ観戦ができるようになりました。
そして、その中でも増えているのがペーパービューです。

ボクシングや格闘技の試合では、1番組ごとに数千円の課金が必要なペーパービューでの放送が増えています。
これは、ファイトマネーが高額な米国では一般的な方法となっています。

しかし、日本では格闘技の試合を無料で見られる状態に慣れているため、この方法が定着するかどうかは難しいと考えられています。
その中でも注目されたのが、今回の「那須川天心VS武尊」の試合です。

これまで、那須川天心の試合の生中継は、フジテレビで放送してきました。
しかし、今回の試合に関してはフジテレビ側と放送契約を結ぼうとはしたものの、契約には至らなかったのです。

そこで、この試合に関してはフジテレビで放送するのではなく、abeamがペーパービューでの完全独占生中継を行うこととなり、視聴を希望する人はチケットを購入して見ることになりました。

かつて地上波で放送されてきた格闘技は次々に無くなり、一大ブームとなったK-1もかつては地上波のゴールデンタイムに放送されていたのですが、それからBSやCSへと移行して現在はスカチャンのペーパービューなどで生中継されています。

那須川天心選手は、これまでフジテレビで大みそかに放送されたRISINに出演していたため、地上波の放送には慣れているでしょう。
しかし、対戦相手の武尊選手は地上波放送がないK-1の選手なので、今回の試合での地上波放送には期待していたと思われます。

ペーパービューの功罪

今回の試合の様に、格闘技の試合の中継が地上波から撤退し、ネット上のペーパービューになったことには、良かった点もあれば悪かった点もあります。
功罪の詳しい内容について、考えてみましょう。

まず良かった点としては、選手のファイトマネーに上乗せできるという点があります。
海外では、ボクシングなどの格闘技の放送はペイパービューが当たり前です。
もちろんスポンサーもいますが、それに加えてペイパービューの収益の一部をファイトマネーと一緒にもらえるのです。

海外と比べて、日本の格闘技のファイトマネーはそれほど多くありません。
例えば、ボクシングのファイトマネーは日本チャンピオンの場合、1試合当たり100万円ほどと言われています。

世界チャンピオンになると、1試合につき1000万円以上もらえると言われています。
世界バンダム級王者の井上尚弥選手の場合、2試合連続で100万ドル、日本円にして1億円以上のファイトマネーを獲得しています。

過去、日本人で最も高いファイトマネーを獲得したのは辰吉丈一郎VS薬師寺保栄の試合で、その時は双方に1億7000万円ずつ支払われたのです。
しかし、海外ではファイトマネーの桁が違います。

アメリカのボクシング元5階級制覇王者のフロイド・メイウェザーの場合、2015年の1試合でのファイトマネーは約144億円でした。
対戦相手にも、約96億円が支払われています。

これは最高額ですが、それ以外にも数十億円のファイトマネーや独占放送契約料を受け取っている選手は多数います。
ボクシング人気が高いアメリカでは、ファイトマネーもかなり高額になっているのです。

那須川天心選手は日本の格闘技のトップクラスですが、その収入は年間でおよそ6000万円から1億円ほどと推定されています。
これは、ファイトマネー以外のCM出演料やスポンサー契約料、YouTube広告の収入なども含まれています。

日本と海外では、格闘技の選手の収入がこれほど異なるのです。
そして、海外では格闘技の試合がペーパービューなのは当然となっています。
そのため、ペーパービューが増えることで収入も近づくのではないか、と思われます。

しかし、ペーパービューになったことで新規のファンを獲得しにくくなる、という問題もあります。
数千円のペーパービューを購入するのは、元々のファンがほとんどとなるでしょう。

地上波での放送ができなかったことで、ネット上では子供たちに夢や未来を見せられない国になる、選手のモチベーションを下げる行為だといった批判が殺到していました。
那須川選手も、ツイッター上でお金のためではなく未来のためにやっているのに、子どもたちはどうするんだという発言をしています。

ペーパービューになると、地上波とは違って子どもが見たいと思っても、なかなか見ることができないでしょう。
そういった意味でも、地上波放送はあって欲しかったという考えが当然といえます。

ペーパービューになったことで、このような功罪があったのです。
格闘技については、その内容をよく考えて地上波とペーパービュー、どちらにするべきかをよく考えてみるべきでしょう。

まとめ

今回、通例では地上波で放送される試合がフジテレビとの契約ができず、ネット上のペーパービューでの放送となったことで、地上波撤退した場合のペーパービューの功罪について考える必要が出てきました。
今後、格闘技界の発展を考えた場合、ペーパービューという選択はありなのでしょうか?
今回こそ50万人がチケットを購入して大成功に終わりましたが、今後はどうするべきかをよく考えておくべきでしょう。