日本のお米が海外で売られる理由

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米の価格は下がる様子を見せず、米が消えているという噂もある中で政府は備蓄米を売却する方針を定めたのですが、気になるのは輸出されている米です。
政府では、2030年までに米の輸出量を大幅に増やす目標を掲げようとしているのですが、なぜ海外に売却する必要があるのでしょうか?
日本のお米が海外で売られる理由について、解説します。

米の輸出量は増やさなくてはならないのか

日本の米は、品質が高く味がいいと世界各国で高い評価を得ているのですが、主に輸出されている国はご存じでしょうか?

2023年の輸出量の統計では、最も多いのが香港で、次いでアメリカ、シンガポール、台湾となっています。
特に多い国は元々米を食べている国であり、さらに国民の所得水準が高く効果となる日本産の米を購入できる土台があるのです。

また、外食をする人の割合も高いため、米の消費量が大きくなるというのも、輸出先上位の国の特徴といえます。
アメリカの場合は日経小売店で精米して販売される需要が中心となっているのですが、近年では日本食レストランも増えていて日本産米を購入しているのです。

特によく売れるのは、知名度の高いコシヒカリやあきたこまちなどで、2023年にアメリカで米が不作となったことで輸出量が増えています。
アメリカでは多くの米が栽培されているのですが、不作となったことと生産コストの高騰、さらには円安のため値ごろ感があったことで、日本産米の人気が高まったのです。

また、台湾も香港やシンガポールと同じく所得水準が高く、ジャポニカ米も生産されています。
日本と同じ種類の米を生産していて食べなれているため、特に日本産の米の品質が高く評価されていて日本からの輸出量も増加しているのです。

2024年の米の輸出量の合計は約4万6千トンで、2020年から見ると2倍以上に増えています。
政府の方針としては、2030年までに約8倍になる35万トンまで輸出量を増やすようです。

食料などの基本計画は5年おきに変更されるのですが、この度閣議決定されて米の輸出増を目標とすることが決まっています。

主食用の米の収穫量は、2024年で679万2千トン、輸出量は0.7%にあたる4万6千トンでした。
年間の収穫量が現状維持となった場合、目標となる35万トンは全体の5%を超えることとなります。

なぜ政府は米の輸出量を増やそうとしているのかというと、日本国内での需要が減少していることを踏まえて海外需要を開拓しようとしている可能性があるのです。

農林水産省の発表では、国内では毎年10万トンずつ米の需要が減少しているため、海外での需要を開拓することで米の消費量を維持しようとしていると考えられます。
日本の米は世界中で人気が上昇していて、おにぎり専門店がアメリカやフランスなどで4店舗展開しているケースもあるのです。

日本のソウルフードともいわれるおにぎりは他の国でも人気が高く、国内と海外のどちらも具材としてはサケが一番人気となっています。
アイリスオーヤマでは、2022年に海外向けのパックご飯の販売を開始していて、台湾からスタートしたのですが2024年にはアメリカでも販売しているのです。

しかし、輸出量を現在の8倍にまで増やすことができるほど需要があるのか、不安に思う人もいると思います。
確かに、海外への輸出は輸出コストが上乗せされる分価格は高くなり、さらに日本の短粒種は市場が限られていてインディカ米などの長粒種が世界のスタンダードです。

また、政府にとっては、輸出を増やして米の需要を維持することができれば、いざというときは国内向けに変更することも可能という思惑もあるのかもしれません。

ただし、すでに海外で販売契約を結んでしまっている分や自然災害などの緊急事態を考えると、あまり簡単に考えることはできないでしょう。

国内の米の価格はどうなる?

海外に輸出する米の量が増えた場合、国内での米の価格がどうなるのかという点が気になるかもしれません。

ただでさえ今は米不足だといわれていて、店頭価格も5kgで4千円を超え備蓄米も売り出すことになっているのです。
国内の米が不足しているのに輸出量を増やしてしまえば、国内の米の価格はさらに高くなってしまう可能性が高くなります。

ただし、今すぐに輸出量を8倍にするというのであれば間違いなく高騰しますが、5年先の生産状況次第ではどうなるか不明です。

海外でどれだけ日本の米の需要があるかによっても変わるため、国内の価格がどうなるかは見通しが難しい状態といえます。

また、国内では輸出用の米を栽培している農家もあり、以前米の価格が大幅に下がったため作り始めたのです。
輸出米の栽培については、国から補助金が出されるため安心して生育できるのですが、今後増やすつもりはないといいます。

流通経費が高額になってしまうこともあるため、輸出米を育成していても農家も卸売業者も利益がほとんどないといわれているのです。
輸出用の米については、規模を拡大してコストダウンすることで栽培するというのが政府の持つイメージだといわれています。

しかし、日本は地形的に不利な面もあるため、海外と競争になるほどの規模にするのは難しく、補助金は日本国内向けの増産に出した方が良いのではないでしょうか。

食料品が輸入だよりになってしまえば、いざというときに主食さえも食べられなくなってしまう可能性があり、もしかしたら日本が米の輸入国になるかもしれません。
農水省のデータでは、日本の食料需給率はカロリーベースで38%にとどまり、生産額ベースでも61%しかありません。

ほとんどが輸入によって賄われているのですが、米に関しては基本的に100%自給できているのです。

しかし、米農家は苦しい状況に置かれており、米まで輸入するようになれば主食も食べられないときが来るかもしれないといわれているのです。

まとめ

日本の主食である米は、現在かなり高騰していて米不足とも言われていますが、政府は海外への輸出量を現在の8倍まで増やすことを目標として掲げています。
海外では日本の米は人気がある一方で、日本では米の需要が年々減り続けているため、いざというときに備えて海外向けの米を増産しようとしているのではないでしょうか。
しかし、まずは国内の米不足の解消と価格の高騰を抑えなければ、輸出を増やすのは難しいでしょう。