川勝知事のリニア問題について

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リニア問題で話題となっていた静岡県知事の川勝平太氏が、4月2日に辞意を表明しました。

問題発言などがあったのですが、辞意を示したのはリニア問題が理由だと述べる川勝知事に、大きな批判が集まっているのです。

知事が辞意を示す理由となったリニア問題とは何だったのか、解説します。

リニア問題とは?

2011年に東日本大震災が起こって福島第一原発が大打撃を受けたことで、日本が大きなダメージを受けてしまった同年5月、国は日本再生のための国家的な大規模プロジェクトを発表しました。

発表されたのは、新幹線と二重系化して中央新幹線としてリニアを走らせる、リニア中央新幹線計画です。

品川駅から新大阪駅までつなぐことを計画していて、静岡県も通過予定に含まれています。

しかし、静岡県を通過するのは北端部にある南アルプスの地下、およそ10kmだけです。

長野や山梨、岐阜などは主要なエリアを通過するため、計画に対しての注目度も高かったのですが、静岡ではほとんど他人事のように考える人が多く、ニュースなどでも小さく取り上げられるだけでした。

静岡空港の問題

静岡では、富士山静岡空港を2009年に開港していて、年間160万人以上の利用客を見込んでいたのですが、2010年の利用客は60万人にも満たないものでした。

採算ラインの半分に満たない結果となったため、静岡県の経済停滞の象徴とも呼ばれることになったのです。

さらにリニアが開業した場合、東海道新幹線の役割が奪われることとなり、さらに静岡県の経済が停滞し衰退に向かってしまうという声が、地元経済界から聞こえるようになり、どんどん増えていきます。

計画当初は、リニアが開業することで東海道新幹線には余裕ができるため、静岡空港の近くに駅を新しく造るという構想にもプラスになるという理由から、開業を支援することを表明していたのですが、2017年に川勝知事はJR東海に対して怒りを明らかにします。

大井川の水環境問題について話し合っていたのですが、JR東海の対応に納得できずリニア計画に対して反対する姿勢を見せたのです。

JR東海は、大井川流域の利水者と協定を結ぶための話し合いをしていたのですが、理事の元には不満の声が集まっていたのです。

知事が交渉内容を聞くと、工事で湧水が出た場合は一部戻してやるから工事をさせろという傲慢な態度に感じられたようです。

県では、JR東海に工事で出た湧水を全量大井川に戻すよう意見書を提出しました。

また、もしリニアが開業したとしても、静岡県は一部をかすめるように通過するだけなのでメリットがないことにも言及されています。

メリットがないことに協力するのだから、県民には誠意を見せなくてはならないという意見が出ていました。

しかし、JR東海では特に反応しなかったため、県では地質構造と水資源、生物多様性に関して2つの専門部会を設けたうえで、ハードルを想定より高く設定して解決方策を求める議論が開始されました。

JR東海の金子社長は、2018年6月に静岡市で田辺市長とリニア建設への協力並びに地域振興に関して、合意書を結びました。

静岡市は工事に必要な東俣林道の通行許可などの行政手続きを速やかに対応し、JR東海は南アルプスから市の中心部を結ぶ県道に140億円のトンネル建設を行うという内容でした。

しかし、川勝知事は話を聞いていないと激怒し、田辺市長とJR東海に対する不信感を強くしたのです。

市役所のすぐ隣にある県庁で議論を続けているのに、何の説明もなく金子社長も訪問していませんでした。

リニア問題は地元の理解を得られるのか

県が提唱する水環境についての議論は、なかなか合意に至りません。

JR東海では、静岡市との合意後に水環境に関して、県外に流出する湧水は原則すべて戻すという表明をしたのですが、問題解決には至りません。

どのようにして全量を戻すのかという具体的な方法について議論を酌み交わしていたものの、結局1年近く経過してから湧水を全量戻すのは無理、と前言を翻し、山梨県や長野県に一部が流出することを認めたのです。

金子社長は、議論を進めるために全量戻すとは言ったものの、できる見込みがなかったと会見で発言したため、地元の利水者の態度は硬化してしまいます。

しかし、2020年4月に国交省が立ち上げた有識者会議で、高い要求を課して中央新幹線の着工を認めないのは法律の趣旨に反するという意見が述べられました。

また、静岡県が事業者に求める内容には無理があり、達成できなければ工事が認められないという対応については、適切に対処して欲しいとも言われ、川勝知事らは猛反発しました。

金子社長は発言を撤回して謝罪したことで決着したものの、地元では不信感だけが残ったのです。

金子社長は初めて県庁を訪れ、川勝知事と面会してトンネル本体工事に向けた準備工事を再開できるよう要望を出し、国土交通省の藤田事務次官も同様に要請したのですが、川勝知事は地元の理解を得ることができないとして、県条例の運用、拡大解釈によって認めませんでした。

金子社長は、静岡県の着工が認められないため、予定していた2027年の開業は難しいと述べたことで、リニア開業は静岡問題によって遅れるとメディアで報道されたのです。

工事は、準備工事以外にも河川法に基づいた県知事の許可が必要となり、さらにハードルが高いため、着工はさらに遅れる可能性が高いのです。

どちらが地域貢献となるのか

静岡県では、国土交通省鉄道局長に宛てて、意見書を送付しています。

意見書内では、有識者会議の議論がJR東海の説明を基にして行われ、中下流域の地下水への影響がほとんどないとまとめられていたものの、データ内の水収支解析に関して批判されていました。

川勝知事の姿勢は、リニア工事の着工を認めるにはあくまで地元住民の理解を得ることを求めています。

リニア工事を認めることと反対すること、どちらが地域貢献となるのかが論点となるでしょう。

しかし、川勝知事はリニア問題について区切りがついたという理由で、2024年4月に辞意を表明しました。

区切りという表現が、リニア工事を遅らせることを目的としていたと取られて、大炎上することとなったのです。

川勝知事の発言は、これまでメディアで取り上げられるたびに曲解、あるいは誤解を生むように切り取られていたとも言われています。

また、前日には失言があって県民からも苦情が多数届いたことから、辞意の表明につながったのかもしれません。

まとめ

川勝知事は、品川から新大阪までをつなぐリニア中央新幹線計画において、反対する立場に回りました。

最初は、静岡県最北端の南アルプスを通るだけなので静岡にメリットがない以上、大井川の水を減らすことがないよう要求する内容でした。

しかし、JR東海から納得のいく回答が得られなかったことで問題が長期化し、だんだんと泥沼化したことで批判も増えてしまったため、辞意を示すこととなったのでしょう。