化粧品や健康食品を扱うEC事業者様、薬機法と景品表示法を知っておいてください。

契約・取引業務(民法・商法等)

近年、オンラインショップでの取引が増えていて、EC事業者になる人も多いのですが、もしオンラインショップで化粧品や健康食品などを扱う場合は、注意しなくてはいけません。
化粧品や健康食品を取り扱う場合は、薬機法と景品表示法を知っておかなければ大変なことになるかもしれないのです。
なぜ必要なのか、解説します。

化粧品や健康食品の広告表現に注意

ECサイトを自社で運営する際に対策が不十分となりやすいのが、広告表現に関する法律対策です。
商品やサービスについて、消費者に魅力が伝わるように表現するのは当然ですが、法律にも気を付けなくてはいけないのです。

実際に、EC市場が拡大していくにつれて、広告表現が不適切であると行政からの処分を受ける例が増えています。
法律面を無視して広告表現を続けていくのは、危険があるのです。

特に広告表現が厳しいのは、化粧品や健康食品です。
薬機法は、正式には「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」という名称で、医薬品や医療機器を対象とした法律です。

化粧品は薬機法の対象

化粧品並びに薬用化粧品も薬機法の対象に含まれていて、表現できる効能や効果について、薬機法で範囲が定められています。
範囲から外れている効能効果は、広告などで打ち出すことができないのです。

化粧品業界において、薬機法で定められている範囲は常に意識されるものであり、限られた範囲内で化粧品の魅力をどう伝えればいいかというのが、全体に共通するテーマにもなっています。

健康食品は景品表示法を意識しなくてはならない

健康食品にも、薬機法は影響します。
健康食品なのに、医薬品のような効能、効果を表示して、医薬品の様に思わせると、薬機法違反になります。

しかし、健康食品は薬機法以上に、景品表示法に注意しなくてはいけません。
EC事業者のうち健康食品を扱っている事業者は、景品表示法を強く意識しています。
消費者庁も力を入れて取り締まっているので、行政処分が出されることも多いのです。

景品表示法は景表法と略されることもありますが、正式な名称は「不当景品類及び不当表示防止法」といい、サービスや商品の販売について、「優良誤認表示」と「有利誤認表示」を禁止しています。

優良誤認表示というのは、商品やサービスの品質、規格などを実際のものよりも優れているかのように偽って表示することです。
痩せる効果がないのに、飲んだら痩せるといった表示をすることなどが該当します。
宣伝内容に合理的な根拠に基づく証拠があるかどうかが、判断基準となります。

有利誤認表示は、販売価格などを実際よりも有利と誤認させることを言います。
数量制限がないのに個数限定とつけたり、特に違いはないのに時間を限定して販売していると表示したりすると、違反になるのです。

薬機法と景品表示法の違い

薬機法と景品表示法は、似ている点も多いのですが、様々な違いもあります。
具体的な違いを解説していくと、まず管轄に違いがあります。
薬機法の場合は厚生労働省と都道府県庁、警察ですが、景品表示法は消費者庁と都道府県庁です。

内容の違いは、薬機法であれば元々表現できる範囲が定められていて、範囲から外れた表示があると違反になります。
景品表示法は、価格などに偽りや誇大広告があると違反です。

罰則の内容として、薬機法の場合は行政指導ですが、ひどい場合は刑事処罰を受ける可能性もあります。
景品表示法は、同じく行政指導と、措置命令が出されることもあります。

どちらに気を付けるべき?

EC事業者は、薬機法と景品表示法のどちらにも気を付けなくてはいけません。
しかし、どちらをより重視する必要があるのでしょうか?
特に注意しなくてはならないのが、景品表示法です。

罰則を見ると、刑事処罰がある薬機法の方に注意が必要に思えます。
しかし、薬機法の場合は表示できる範囲がきちんと定められているため、違反しないように気を付けるのは難しくありません。

しかし、景品表示法は意識せずに違反することが多いのです。
景品表示法に違反してしまうと、措置命令が出されて自社のWebサイト上と日刊紙2紙に広告を出して、誤認させるような広告を出していたと公表し、再発防止措置を社内で取る必要があります。

また、違反していた広告を行った期間の売上は、3%が課徴金として課される課徴金制度もあります。
景品表示法違反になると、企業に大きなダメージを与え、運営にも影響するでしょう。

特に措置命令を受けることが多いのが健康食品、特にダイエット系の商品です。
また、化粧品も景品表示法の対象に含まれるので、シミ対策を前面に押し出した化粧品は消費者庁からではなく、都道府県庁から措置命令が出されていました。

また、機能性表示食品が措置命令の対象になることも増えています。
機能性表示食品は機能性を届け出る必要があるのですが、中には届け出た機能性を超える効能効果の広告を出した場合は、景品表示法違反になるのです。

薬機法違反で行政処分を受けた場合は、景品表示法とは違って公表されることはありません。
商品の回収や販売中止になることはあるものの、指導レベルで終わることが多いのです。

ただし、悪質なケースであれば刑事罰が適用されてしまいます。
悪質と判断されるのは、未承認の医薬品や医療機器を販売した場合などです。
指導を受けた場合は、表示を全面的に改定するなど速やかな対応が必要になります。

定期購入を行っている場合も、注意しましょう。
定期購入は近年トラブルが増加していて、気付かずに購入して解約できなくなるというケースもありました。

定期購入に関しては、きちんと一目で定期購入と分かるようにしなくてはならない、という改定があり、厳しくなっています。
薬機法にも課徴金制度の導入が検討されているなど、EC市場の拡大に伴って規制は今後さらに厳しくなっていくでしょう。

まとめ

化粧品や健康食品を扱うEC事業者様は、薬機法や景品表示法などによる表現の規制などがあるため、広告を出したりホームページを作成したりする前に確認しておく必要があるでしょう。
どちらにも気を付けなくてはならないのですが、特に注意が必要となるのが景品表示法です。
近年は行政処分を受けるEC事業者が増えているため、厳しくなっています。
違反がない様に、注意しましょう。