中小企業のゾンビ化はなぜ起きているのか?

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新型コロナウイルスの感染拡大によって経営難に陥った企業は多く、特に中小企業は大きなダメージを受けてゾンビ化と言われる状態になっているところも少なくありません。
中小企業のゾンビ化とは、どのような状態なのでしょうか?
また、それはなぜ起こるのでしょうか?
その理由について、解説します。

中小企業のゾンビ化とは?

2021年度は、倒産した企業が前年比で22.4%減の6,030社と、57年ぶりの低水準を記録しました。
コロナ禍によって2020年度は休廃業・解散となった企業が過去最多となったのですが、それも10%以上減少しています。

そんな中で増えているのが、本来であれば倒産しているはずの状態でまだ経営が続けられている企業です。
中小企業にみられるこの状態を、ゾンビ化と言います。

対外的には、正常な支払ができていない企業などがゾンビ化していることになります。
バランスシート上で、債務超過の状態になっている企業などはゾンビ化していると言えるでしょう。

ゾンビ化の定義はいくつかありますが、国際決済銀行ではインスタント・カバレッジ・レシオ(ICR)が3年以上継続して1未満になっている設立10年以上の企業としています。
この定義が、最も広く使われています。

インスタント・カバレッジ・レシオというのは、利払いの負担に対してどれだけの利益があるかという比率を示したもので、これが1以上なら利払いよりも利益のほうが大きいということになります。

これは企業の経営の健全さを示す指標で、倍率が高ければ高いほど財政に余裕を持っている健全な企業となります。
しかし、ゾンビ化している企業の場合はこれが1未満の状態が続いているのです。

元本の返済ではなく利払いなので、1未満になれば利息すらも支払えない状態となっていることを示しているため、そのような状態の企業は健全とは言い難く、近いうちに破綻するのが目に見えているでしょう。

そのほかの定義としては、銀行からの融資の返済条件を変更してリスケをする企業や、過剰債務となっている非効率な企業なども当てはまります。
また、政治的には雇用の確保ができない企業、マクロ経済学的な視点では生産性の低い企業とされています。

ゾンビ化が起こる理由とは?

日本企業のゾンビ化が起こったのは、何もここ数年のことではありません。
特に深刻な状況となったのは、2008年に起こったリーマンショックによるものでした。
この時は、2010年度から2012年度の3年間で、10%以上の中小企業がゾンビ化の定義に当てはまっていました。

この時にゾンビ化した企業が倒産しなかったのは、2009年に施行された中小企業金融円滑化法によるものです。
これは、困窮している中小企業が金融機関から受けていた融資に対して、返済猶予や金利の減免が認められるようになる法律です。

これは2013年に終了したのですが、それまでに金融円滑化法の適用を申し込んだ企業は延べ437万件に達しました。
ただし、1社で複数の金融機関に申し込んでいたため、企業数は明確になっておらず、東京商工リサーチの独自調査ではおよそ30万社と発表されました。

その後、政府では経営コンサルタントなどを集めて中小企業再生支援協議会などの組織を作って困窮している中小企業の経営改善を目指していたものの、中小企業金融円滑化法で資金繰りを改善できた企業はわざわざそこに足を運ばなかったため、根本的な経営改善がなされないまま10年が経過してしまったのです。

そして屋台骨がしっかりとしない状態で、コロナ禍に巻き込まれることとなりました。
再び中小企業を救うべく、コロナ禍によって売り上げが減少した企業には実質無利子・無担保の融資を行う「ゼロゼロ融資」と言われる融資が実施されました。

元々は、政府系金融機関の日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などで融資を開始しました。
しかし、利用を希望する企業が想定よりも多かったことから、民間の金融機関でも受付を行うようになりました。

この融資では、実質無利子で個人事業主、もしくは零細企業であれば最大6000万円、中小企業には最大3億円まで融資を行いました。
返済が滞るリスクももちろんありますが、その場合は信用保証協会が元本の8割、もしくは全額を肩代わりすることとなり、利子についても各都道府県が支払うようになっています。

用途によって期間も異なり、運転資金として必要な場合は最長で15年、設備投資のための資金は最長で20年借りることができ、最初の5年間は元金の返済が免除されるケースもあります。
コロナ対応のための融資総額は、ゼロゼロ融資を中心として合計56兆円以上にもなりました。

本来は倒産の危機に陥った企業は融資を受けるのが難しいのですが、この融資は要件さえ満たしていれば借りることができるため、延命のために借りる企業も少なくありません。
その結果、再びゾンビ化が進んできたのです。

ゾンビ化する企業は建設業が多く、次いで製造、卸売りなどで、サービスは1割ほどです。
また、従業員が5人以下の企業や6~20人の従業員がいる企業が7割を占めています。

倒産件数も増加傾向にあり、更にゼロゼロ融資の元本返済が始まっています。
2021年末からは返済期限となった企業が増加し続けていて、2022年の夏には返済を開始する企業数がピークになりました。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大は思ったよりも長引いており、想定よりも売り上げが回復していない企業も多いため、返済は難しいでしょう。
特に、ゾンビ化している場合は非常に困難です。

そのため、今後は中小企業の倒産リスクがかなり高まると予測されています。
しかし、多くの企業が倒産することになれば、連鎖倒産も起こって経済的混乱も生じるため、今のうちに対策が必要となるでしょう。

まとめ

中小企業のゾンビ化は、10年以上も前から問題となっていました。
しかし抜本的な解決策を打ち出すことができないまま、単に延命をしてきた状態で今回のコロナ禍に見舞われることとなり、再びゾンビ化する企業が増えてきたのです。
今後、融資の返済を迫られる企業の中で、経営の改善が果たせなかったところはあきらめ廃業なども増えて倒産する企業も多いため、経営者は取引先の状況をしっかりと把握しておく必要があるでしょう。