ソウル雑踏事故、主催者なしのイベントでの責任は?

事故・災害リスク

韓国の首都・ソウルの梨泰院で起こった、大勢の人が犠牲となった雑踏事故は、ハロウィンで多くの人が集まっていたことが原因でした。
しかし、イベントで事故が起こったとはいえ、どこかで主催していたわけではありません。
この場合、事故の責任はどうなるのでしょうか?

事故が起こったイベントとは?

今回、雑踏事故が起こったソウルの梨泰院では、10万人以上の人が集まっていました。
当日は梨泰院でハロウィンイベントが行われており、仮装した若者が毎年大勢集まっているのです。

しかし、今年は例年以上の人数が集まりました。
それは、2020年に日本でも大ヒットした「梨泰院クラス」という韓国ドラマに登場したクラブが梨泰院にあるため、聖地巡礼のように多くの人が訪れていたのです。

事件当時、人口密度は1平方メートル当たり10人を超えるところもあり、ぎゅうぎゅう詰めの状態でした。
そんな状態だからこそ、群衆事故が起こったのです。

通常、イベントにおいては主催者が来場者の安全を確保する義務を負います。
イベントの開催を計画し、会場を決めて来場者数を予測し、その人たちがイベントを楽しむことができるようシミュレーションなども交えて警備体制も含めて予定を立て、実行します。

しかし、今回のソウルのハロウィンイベントには主催者がいません。
主催者がいないのに、これほどの人が集まることになるのかが不思議かもしれませんが、そういったことはありえなくもないのです。

日本でも、主催者がいないイベントに多くの人が集まることはあります。
その最たるものが、渋谷のハロウィンイベントです。
これも主催者はいないのですが、毎年非常に多くの人が集まっています。

主催者がいないということは、安全を確保するための取り組みなどもありません。
参加者の良識によって守られるべきなのですが、今回は近くに著名人がいたため一目見ようと群衆が一方向に動き、事故が起こったのです。

多くの人が集まるイベントなので、韓国警察庁では警備の人員を出していました。
これも、日本の渋谷のイベントと同様です。
渋谷のイベントでも、毎年多くの警察官が警備をしています。

主催者がいるイベントの場合、主催者が警備員を動員します。
主催者がいないと、誰も警備員を用意しません。
多くの人が集まる場所は犯罪も起こりやすいため、警察官が警備のために動員されるのです。

ソウルの梨泰院では、今年のハロウィンの参加者は例年より人数が多くなると予想されていました。
そのため、例年であれば動員される警察官の人数は30人から90人ほどなのですが、今年は137人が動員されていたのです。

ただし、その役割は主に犯罪防止であり、現場の統制についてはあまり考えられていませんでした。
そのせいで、群衆の動きについても制限していなかったので、事故が起こりました。

警察に責任はあるのか?

今回の事故では、韓国警察に責任を問う声も上がっています。
警備にあたっていた警察官がしっかりと制御していなかったから事故が起こったという意見なのですが、そもそも警察にはその責任があるのでしょうか?

イベントは警察が主催しているわけではないので、直接的な責任はありません。
しかし、警察には治安を維持する責任があります。
今回、イベントの警備をしていたのもそれが理由です。

イベントでは多くの人が集まるので、様々な犯罪行為が行われる可能性があります。
特に警戒されるのが、窃盗や性犯罪です。
また、トラブルからけんかになる可能性なども考えられるでしょう。

警察では、こういった犯罪行為を防止することを念頭に置いて警備を行っていたため、それ以外のことには基本的に手を出さなかったのです。
そのため、群衆の動きについては特に関わっていません。

実際に動き出したのは、群衆雪崩が起こってからでしょう。
雑踏事故を防ぐのではなく、救命活動と事故の後始末を主に行っていたのです。
自己を予防する役割は果たすことができなかったのが、今回の警察の動きです。

今回のイベントで、警察は例年以上に多くの人が集まることを想定していました。
しかし、人が集まることは予想できていても、群衆事故が起こる想定はしていなかったのでしょう。

それはなぜかというと、警察にはイベントに対しての義務や責任がないと考えていたからです。
責任をもって職務にあたるのであれば、面積当たりの人数が一定以上になった時には警察が介入できるよう、マニュアルをもうけておくべきでしょう。

日本でも、マニュアルなどはありませんでした。
しかし、2001年に明石市でお粉われた花火大会の帰り道で事故が起こったため、兵庫県警察では独自に雑踏警備のマニュアルを用意しています。

このマニュアルは注目を集め、SNS上でも役立つという意見が多くみられました。
実際に事故を経験した人の証言も紹介されているため、実地に基づいた対応が可能となるでしょう。

韓国・ソウルの雑踏事故の際も、このマニュアルを Twitter上で取り上げるユーザーが多数いました。
世界に知ってもらおうと、翻訳を望む意見も出ています。

人員が過度に密集した群衆が発生すると予想されるケースでは、マニュアルを踏まえたうえで警察の持つ力を柔軟に行使しなくてはいけません。
特に現場となった場所は傾斜がきつい道で直線となっているため、群衆事故が起こるリスクは予測することができたはずです。

韓国警察では、主催者がないイベントに多数の人が参加した場合のマニュアルがない、と説明しています。
しかし、それは警察側が国民の生命十財産を保護するための法律などを熟知していないということです。

警備の必要性が認められているからこそ警察が出動しているのですから、リスクについても想定し、その対策を考えておくべきでしょう。
安全管理のための人員が不足するようなら、上部機関に支援を要請することも大切です。

まとめ

主催者がいないイベントでは、責任の所在を明らかにするのが非常に難しくなります。
参加した1人1人に責任があるのは確かですが、
しかし、当日警備にあたっていた警察にも責任はあるでしょう。
参加者は、人口密度が高くなってきた時にはその中から外れるなどの対策も必要となります。
警察も、あらゆる事態を想定しておくべきでしょう。