日本企業が挑戦する、EV化の動きについて

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現在、世界中で脱炭素社会を目指し、EV化の動きが加速しています。
EV化と言えば、車を思い浮かべる人がほとんどでしょう。
しかし、日本企業は新たなジャンルのEV化にも挑戦しています。
車以外では、どのようなEV化を目指しているのでしょうか?
日本企業のEV化の動きについて、解説します。

EV化の歩み

近年、EV(電動)自動車が増えてきています。
これまでも電気とガソリンの両方を使うハイブリッド車は人気があったのですが、最近では一切ガソリンを使わないものが増えています。

EVというのは、電動車両全般を指したものです。
電気だけで動くものは勿論ですが、電気とガソリンの両方を使うHV(ハイブリッド車)やPHV・PHEV(プラグインハイブリッド車)、水素を燃料として電気を動力にするFCVなどもEVに含まれます。

EVの特徴は、動力がエンジンではなくモーターという点です。
その起源については諸説あるのですが、そもそもガソリン車よりも先にEVが誕生したと考えられています。

原型は1830年代に作られて、1873年にはイギリスで実用的な電気自動車が製作されました。
ガソリン車の原型は1870年代、本格的に政策されたのは1880年代からなので、電気自動車の方が先に誕生したのです。

1899年には、電気自動車で時速100kmを超えるという記録も誕生し、トーマス・エジソンも製作しています。
そのまま発展するのかと思われたものの、それ以降はガソリン自動車の技術が発展していき爆発的人気となったため、電気自動車は一度姿を消したのです。

第二次世界大戦の終戦後はガソリン不足から、日本でも一時的に電動自動車が登場したこともあるのですが、その時点ではまだ実験的な存在だったため、すぐに姿を消します。
本格的に再び電気自動車が登場したのは、1990年代に入ってからです。

カリフォルニアで、排気ガスなどの公害問題に取り組むための法律が制定されたことで、自動車メーカー各社が開発にとりかかったのです。
アメリカのGM社では「EV1」のリース販売を開始しており、トヨタ自動車でも「RAV4L EV」を発売しました。

本多技研や日産自動車でもそれぞれ電気自動車を発売し、さらにトヨタ自動車からはコンパクトな2人乗りの電気自動車が登場しています。
第二次EVブームとも言われましたが、これも大きな普及には繋がらず終焉を迎えていきます。

しかし、その後2000年代に入ってからリチウムイオン電池の発達により、小型大容量の動力を得ることができたことで第三次ブームが到来したのです。
EVとしてはハイブリッド車のプリウスが以前から残っていたのですが、各社も本格的にEVの開発へと乗り出していったのです。

第三次ブームで登場したEV者の特徴は、家庭用の100V/200V電源で充電が可能という点です。
その点で、利便性は格段に高まり、販売台数も順調に伸び続けています。

現在、EVのトップシェアを誇っている米国のテスラモーターズも、この頃にスタートしています。
また、他の海外メーカーも次々とEVに参入し、日本にも輸入されています。

車だけに留まらないEV化

車の分野ではほとんどのメーカーがEVに参入しましたが、それ以外のEV化に関してはあまり注目されていません。
そんな中、日本の企業が、新たな分野のEV化に取り組んでいます。

取り組んだ分野は、船です。
現在、電動の船外機を装着した船が試験運用され、北海道にある大正時代に作られた珍しい埋め立て式の小樽運河を40分かけてめぐっていく、小樽運河クルーズに使われています。

観光船は7隻あるのですが、その内電動となっているのは1隻のみです。
電動操船システムはHARMO(ハルモ)といい、開発したヤマハ電動機と船の運航会社は運用しながら課題や使い勝手につい確認しています。

このボートは店員42人で、容量は20kWhと一般的なEVのバッテリー容量の約半分です。
夜に充電しておくと、翌日は追加で充電しなくても運河を7~8周することができます。

また、電気代は1日およそ360円です。
従来の船は、廃油を使ったバイオ燃料によって動いているのですが、その場合は1周当たり300円かかるため、EVの方が断然お得なのです。

また、観光船ということで運行中に歴史や注目ポイントの案内をするのですが、エンジンで動く船の場合はその騒音で聞き取りにくいことがあります。
電動になると静かなので、観光船との相性はピッタリと言えるでしょう。

このシステムは、ヤマハ電動機が10年以上をかけて開発したものです。
この春からは、世界の他のメーカーに先駆けてヨーロッパで販売されています。
今後、環境規制が厳しくなっていくことを考え、必要になると判断したのです。

しかし、電動の場合は共通した悩みがあります。
スピードを速くしたり、長距離を連続で航行したりしたときは、消費電力が大きくなってしまうのです。

搭載するバッテリーを増やせば解決しますが、そうなると販売価格も高くなってしまう上、船の重さも増してしまいます。
そこで、電動の弱みについては割り切ることにしたのです。

ターゲットとするのは、低速で短い距離を航行する船としたため、小樽運河のクルーズがピッタリでした。
時速は5キロほどで、パワーも小さな船を動かすことができる程度に限定しています。

また、東京の海運会社の旭タンカーでは、タンカーのEV化を進めています。
既に、世界初となるEVタンカーが建造されています。
全長は62メートルで、電気自動車およそ100台分のバッテリーを搭載しています。

動力は、モーターによってスクリューを回します。
2022年4月から動かされていて、大型コンテナ船や自動車専用船などに給油するという業務を行っています。

コストはエンジン船の約1.5倍とはなりますが、エンジンが無くなったことでメンテナンス作業も効率化され、将来的には少人数での航行が出来るようになるでしょう。
電動なので排気ガスや振動も少なく、客船でも快適に過ごすことができるでしょう。

まとめ

自動車業界では、徐々にEVがそのシェアを広げています。
かつて何度も登場しては消えていったEVですが、現在のガソリン価格の高騰もありこれからEVはますますシェアを広げていくことになるでしょう。
そして、今やEVは車だけではなく、船でも取り組みが始まっています。
これから、多くのものがガソリンではなく電気を動力としたものに切り替わっていくでしょう。