タックスヘイブンとは?

その他

みなさんは、「パナマ文書」の存在を覚えているでしょうか?
一時期、タックスヘイブンと呼ばれる用語が飛び交い、税金について考える話題で持ちきりでしたよね。
現在は、メインの話題から遠くなっていますが、節税という視点から今一度考えてみませんか?
今回は、タックスヘイブンの基本知識について解説しましょう。

タックスヘイブンの概要

タックスヘイブンという用語を聞くと、税の天国、税制優遇がしやすい場所といった印象を持つ人が多いでしょう。
このイメージに、間違いはありません。
ですが、厳密に説明すると、明確な定義は定まっていないのです。
日本では、「低課税地域」と紹介されることが多いですが、そのような地域には以下のような特徴があります。

・税制優遇が外国籍の法人や個人に適用される
・非常に低い課税率で成り立っている
・地域経済の主力として、富裕層や外資系企業の誘致を図っている

上記3つの特徴が、タックスヘイブンに該当する地域に備わっていますので、税制優遇を最大に受けたいという場合にはピッタリの場所になりますよね。
世界に該当する地域は複数あるのですが、お金持ちが魅力に感じる要素には何があるのでしょうか?
単に、税制優遇と言われても、あまりピンときませんよね。
税制優遇の内容は、主に4つあります。

①優遇措置が企業の特定の事業に行われること
②国外で生じた所得に対しては課税がされないこと
③租税条約を締結していない、無税、所得税がそもそも存在しない地域であること
④配当への源泉課税がない、または税率が低いこと

この文章を関連する用語でまとめると、それぞれタックスリゾート、タックスシェルター、タックスパラダイスとも表現することができます。
日本の税制度に慣れている私たちからすると、極端に税率が低かったり、課税がされなかったりする状況はイメージできませんよね。
特に、無税、所得税の概念がないというのは、日本ではありえないことでしょう。

しかし、地域にとって税収入がないということは、公共サービスに支障が出てしまうのでないかと思ってしまいませんか?
実は、税負担が少ないからこそのメリットがあるのです。
先程、税制優遇や地域の特徴の内容でも触れましたが、富裕層や外資企業関連の誘致を積極的に行っていますよね。
これらの人たちはお金を持っていますから、税で回収しなくても、そのまま地域経済にお金を落としてくれるのです。

要するに、お金持ちがたくさん集まってくれると、その地域での買い物やサービス利用が活発になりますから、経済の活性化に繋がるのです。
例えば、日本でも消費税の問題に対して、「廃止することで消費が促せるのでないか」という意見がありますよね。
みなさんの中にも、「税率が低くなれば買い物を積極的にするのに」と思っている人がいるでしょう。

状況は違いますが、経済的な安定にタックスヘイブンは一役買っているのです。
上記の内容を知ると、一概に悪い制度だとは言い切れませんよね。
考え方によっては、地域経済活性化のための一戦略と考えても良いでしょう。
このような特徴があるならば、魅力的だと感じて行動に移す人が多いことにも頷けますよね。

議論を理解するためにメリット・デメリットを知ろう

概要の解説だけを見ると、タックスヘイブンがなぜ大きな議論になってしまったのかと不思議に思う人もいますよね。
ここからは、議論の本質に迫るために、メリット・デメリットについて見ていきたいと思います。

①最大のメリットは税制優遇
②グレーゾーン的手法で社会的な信頼に関わるデメリット

上記2つの内容を、それぞれ解説しましょう。
①最大のメリットは税制優遇

タックスヘイブン最大のメリットは、何と言っても税制優遇になります。
これは、現状の事業関係、個人資産に関わらず、将来の相続税対策にも活用できますので、しかるべきルールを守ることで大きな利益を得ることができます。
これは、日本の税制度のみの活用ではできないことでしょう。

また、会社の設立が簡単にできることもメリットの1つになっています。
会社の設立には、資産条件や手続き上の手間がかかりますが、該当地域では比較的簡単に済ますことができます。
そのため、税制優遇を利用することを視野に入れて、会社の設立を行っている人も少なくありません。

近年注目を集めている相続税対策は、贈与者と相続人が10年以上該当地域に住んでいないといけないという居住のルールが存在する方法があります。
その他に、会社の設立を行うことで可能になる贈与方法もありますから、節税としていくつかの手法を選ぶことができますよね。
もちろん、贈与金額が高額の場合は、所得税や相続税がかかることもありますが、制度を利用するとそこまで高額になることはありません。
日本では高額になりやすく、低くする手段が限られていることが多いですが、一気に課税額を抑えられるのは嬉しいですよね。

このメリットに敵う制度は、タックスヘイブン該当地域以外にあるのでしょうか?

②グレーゾーン的手法で社会的な信頼に関わるデメリット

次は、デメリットに関係する内容です。
この仕組みは、私たちにとって嬉しいことばかりではありません。
国際社会にとっては、むしろ否定的な目で見られていることが多いですから、好ましくないと思っている人も当然いるでしょう。

実は、この手法には違法性がないものの、悪質に活用されたり、反社会勢力のマネーロンダリングに利用されてしまったりしているのです。
ルールの範囲内で活用する分には、誰も文句は言いません。
しかし、最大限にメリットを利用したいと考える人にとっては、抜け道が多い内容でもあるのです。
特に、個人情報が厳重に守られる特徴はメリットにもなりますが、悪用されても把握しにくいデメリットも孕んでいますよね。

お金の流れを隠してしまうことは、悪質な組織にとって文句ない環境になります。
上記のような事情から、完全な違法行為とまではいきませんが、注意すべき手法として目を光らせていることに納得できるでしょう。
また、このようなデメリットは、適正に利用しているみなさんにも降りかかってきます。

日本の場合、納税の義務があることから、税金を払わないということは悪いことというイメージがありますよね。
しかし、今回解説している仕組みに当てはまる地域はそうではありません。
ですが、払うべき税金を支払っていないということに対して、好ましくないイメージを持っている人もいるでしょう。
このことが、みなさんや会社に対する信頼に関係してくるのです。

さらに、明らかな違法行為があった場合には、追加課税の支払いが求められますので、何も対応がない訳ではありません。
これらのデメリットを踏まえると、容易に手を出して良いものでないことに気付く人もいるでしょう。
世界的な視点からも、あまり良いイメージは持たれていませんから、今後の規制等の動きに注目していくべきです。

ここまで、メリット・デメリットについて解説しましたが、現状ではきちんとルールを守って行うならば、有効なビジネス手法の1つになります。
また、自分の資産を考える上でも、有効な選択肢になることは間違いありません。
該当する地域は、まだまだ賛否両論の絶えない所だと考えておくべきですね。
みなさんは、メリットとデメリット、どちらを重視して考えるでしょうか?

まとめ

今回は、タックスヘイブンの基本知識について解説しました。
グローバル展開を視野に入れる企業にとっては、税制優遇は魅力的な要素になりますので、戦略の1つとして考えられやすいです。
しかし、社会的信用やグレーゾーンの部分が多いデメリットを考えると、企業にとって大きなリスクになる可能性は十分にありますよね。
これを視野に入れる場合は、リスクをしっかりと認識した上で慎重に行動するようにして下さい。