なぜ派遣を雇ってはいけないのか?

経営戦略

コロナ禍で影響を受けているのは、正社員よりも派遣社員が多いですよね。
彼らの雇用形態は、正社員より職務が限定されていますが、企業では重宝されている存在になります。
一方で、経済的な視点から見ると、積極的に雇うことは好ましくありません。
実は、マイナスに働いてしまうのです。
一体、何故なのでしょうか?

国民経済における3要素の原点を知ろう

派遣を雇ってはいけない具体的な理由をご説明する前に、まずは国民経済の根本的な考え方を抑えておきたいと思います。
根本的な考え方を理解するためのヒントは、2つにあります。

・国民経済の3要素とは何か?
・生産性の向上になぜ関わってくるのか?

上記の内容について、それぞれ見ていきましょう。

・国民経済の3要素とは何か?

みなさんは、国民経済には何の要素があって成り立っているのかを学んだことがありますか?
経済と聞くと、お金が関係してくるだろうと思ってしまいますよね。
しかし、国民経済を正しく捉えるためには、お金は必須の項目ではありません。
3要素として列挙される項目は、「モノ」・「人」・「技術」になります。
これらをもう少し詳しく表現するとなると、モノは資本、人は労働を意味することになるでしょう。

経済というのは、お金の動きで判断されますよね。
しかし、そのお金を生み出すことは、自然と発生する物ではありません。
根本的な発生原因は、経済活動をすることによって、お金の動きが見られることになるでしょう。
ところで、経済活動を行うといっても、これは簡単でないことに気付けるでしょうか?

例えば、企業の経済活動をイメージしてみて下さい。
その企業では、お菓子の販売をメイン事業としている場合、お菓子を生産するための工場や、販売店に売り込みをするための人材が必要になりますよね。
また、お菓子を作る際に、加工するための技術も必要になってくるでしょう。
要するに、1つの商品が消費者の手元に届くためには、数多くの工程がかかっていますよね。

これらを、先程ご説明した3要素に当てはめてみると、全てに合致します。
一方で、上記の3要素が重要な理由は、生産性や経験の蓄積に関係してきます。

・生産性の向上になぜ関わってくるのか?

3要素として挙げられる項目は、常に投資を行って強化することが必要になりますので、この時点でお金の話が関わってくると思って下さい。
ここで言う「投資」とは、先程のお菓子事業で例えると、事業の生産性の向上を図ることに繋がります。
代表的な例を挙げると、お菓子の生産スピードを上げるために、新しい設備を開発したり、最新の技術を導入したりして生産することになるでしょう。

3要素に対して投資で強化を図るというのは、設備や人材、公共面・技術に対して投資を行うことを意味します。
この投資は、企業にとって生産性を向上するために不可欠な部分になります。
仮に、この部分を怠ってしまうと、新しい事業への参入や、既存事業の発展が難しくなってしまいますよね。
そうなると、企業のレベルアップだけでなく、国民経済の発展にも繋げられません。

そして、この生産性向上とは、従業員の視点から考えると長く働き続けることで得られる要素になります。
例えば、企業に入社した当時は何も分からない状態ですが、勤務する時間や年数が経つことでできる業務内容が増えてきますよね。
できる業務内容が増えるということは、生産性のアップになるのです。
何より、可能な業務はその人の経験によって積み重ねられていきますから、長く働くというのは企業にとってプラスになると言って良いでしょう。

業務について理解している人が多いほど、業務遂行への効率性は上がりますよね。
ここまでで、蔑ろにしてはいけない要素であることが理解して頂けたかと思います。

なぜ、派遣を雇ってはいけないのか?

ここからは、今回の記事の本題である派遣を雇うことについて、お話ししていきましょう。
先程、ご説明した内容を頭に入れた上で、以下の項目を見ていくようにして下さい。

・人材投資特有の特徴とは?
・派遣を人材投資的な視点から見るとどうなのか?

この項目が理解できると、国民経済のマイナスになっている原因が明確になりますから、様々な疑問がクリアになってくるでしょう。

・人材投資特有の特徴とは?

人材投資は、他の要素の投資に比べると、比較的失敗するリスクが少なく、かかる費用が少ない特徴があります。

例えば、設備に対して投資をするとして、工場を建設することを考えてみて下さい。
工場の建設となると、どこに設けるのか、周辺住民が理解してくれるのかといった検討や調整が必要になりますよね。
また、工場の建設から実際に稼働するには、多くの時間がかかりますから、1か月やそこらで実現できることではありません。
何より、建設費には莫大な金額が求められますから、時間的、資金的にも影響が大きいことが分かるでしょう。

それに対して、人材投資はどうでしょうか?
確かに、正社員として雇うとなると、その分の人件費がかかりますよね。
しかし、工場の建設にかかるほどの高額な費用でないはずです。
また、個人の能力によりますが、入社からきちんと教育して業務を行ってもらえれば、3年くらいで1人前として行動できるようになるでしょう。
人に対しての投資は、比較的早い段階でリターンが得られることが理解できますよね。

この視点を理解した上で、改めて派遣社員の働き方を考えていきましょう。

・派遣を人材投資的な視点から見るとどうなのか?

派遣社員は、基本的に働ける期限が決まっていたり、正社員から言われた仕事を行ったりする立場になります。
正社員と比べた時に、業務で負う責任が違うということで、給料的な差が表れていることに納得できる人もいるでしょう。
企業側から見ると、正社員1人を雇うよりも、人件費が多少でも浮くということで積極的に活用している所があるかもしれません。

ですが、国民経済の考え方からすると、派遣は人材投資的には役に立たないのです。
その理由は、生産性が向上するために必要な、「長く働くこと」と「経験の蓄積」ができないことに由来します。
確かに、派遣でも同じ職場で長く働いている人もいますよね。
ですが、今回のコロナ禍でも現実になったように、派遣切りという形で失業してしまう人も多いでしょう。

また、派遣だからということで、できる業務に限りがある場合もありますよね。
そうなると、企業にとって大切な業務の知識やスキルの蓄積ができないことになります。
さらに、期限が来てしまうとその職場は去らなければならない。
このような状況では、業務に必要なスキルが身に尽きませんよね。

従って、正社員と比べると、人材が育たないといった特徴が派遣にはあるのです。
仮に、派遣の割合が多い職場の場合だと、人の移り変わりが定期的にありますから、その度にやり方を教えていかなければなりません。
これを繰り返していると、正社員も大変だと思いませんか?
その結果、生産性が中々上がらないという問題を抱えてしまうと言えるでしょう。

今回のテーマに対する回答を一言でまとめると、「派遣は都合の良い労働力でなく、職場の生産性に直結しない」ことになります。
本当の意味での生産性向上を見込むならば、人を「正社員」として雇うべきなのです。

まとめ

派遣は現在、一般的な働き方の1つになっています。
人件費の節約ができるということで積極的に雇っている企業もありますが、国民経済の根本から考えると、職場にとってプラスにはなりません。
むしろ、スキル面の定着や短期間での労働契約ということで、企業の成長を阻害してしまっている可能性があります。
企業の経営面を考える場合、人件費の削減は真っ先に行われる項目ですが、本当に正しいのか、今一度考えたいものです。