M&Aによる経営資源の有効活用での生き残り

経営戦略

近年、後継者不足のためM&Aによって事業承継を行う中小企業も増えています。
しかし、M&Aが活用されるのはそれだけではありません。
経営が厳しくなったことで、M&Aで経営資源を有効活用して生き残ろうとする企業も少なくないのです。
生き残るための、M&Aによる経営資源の有効活用とは、どのようなことなのでしょうか?

M&Aによる買収での生き残り

M&Aは、買収、合併、分割の3つに大きく分けられます。
このうち、買収というのは買い手が売り手の株式を過半数得ることで経営権を掌握すること、もしくは事業を買い取ることを言います。

M&Aの買い手となるのは、経営に余裕がある企業がほとんどでしょう。
しかし、中には経営にそれほど余裕がなくても、業績を上向かせるための戦略としてM&Aを行う企業もあります。

例として、とある地方の包装資材の卸売りを行う企業のM&Aを挙げます。
地域密着型企業であり、近隣県にも営業所を置いていたのですが、地方の人口減少による地域市場の減少や地元企業の廃業による取引先の減少などもあり、成長が頭打ちとなっていました。

現状を打破する方法として、首都圏への進出を考えます。
しかし、従業員は地元志向が強いため、本社の移転や転勤などは難しい状況でした。
そこで、自社単独で首都圏に進出するのではなく、M&Aで同業者の経営資源を獲得して有効活用しようと考えたのです。

民間の経営支援団体が開催するM&Aセミナーにも参加し、買収する企業を探しました。
食品関連企業を探して十数社を候補にして検討、交渉を続けていき、結果として選んだのが異業種である、食品業界などに顧客を持つ印刷会社です。

この企業は、他の企業と比べて従業員が若く、元気があることも魅力です。
また、真面目な社風なので一緒に手を取り合って発展していくことも望めるというのも、決め手の1つです。

そうして、首都圏市場への参入も果たすことができました。
今後は首都圏から外貨を稼ぐことを目標として、さらには世界へと進出できるよう事業展開をしてさらに成長していきたい、と語っています。

また、かつて協力関係にあった企業が経営危機に陥ったことで、M&Aで事業承継を行ったという企業もあります。
資本関係はないものの、創業者が個人で出資していた企業なので、協力関係にあったため注目していました。

その企業が業績不振になって自主再建が難しくなったことで、事業譲渡のために引受先を探しているのを知り、手助けになればと入札によって落札することとなりました。
しかし、それだけではなく、近年注力していた事業における強みがあったことも重要な理由です。

その結果、注力していた事業ともう1つの事業を譲受するということで合意し、M&Aが実行されています。
事業を譲受した結果、その事業の規模が拡大して売上や利益が約2倍になっています。

いくらかつては協力関係にあった企業だからといって、何の利益もないのに助けることはできなかったでしょう。
M&Aが実行されたのは、その企業の経営資産によるものです。

とある地方のスーパーでは、地元密着型の営業をしていたものの後継者がおらず、過疎化が進行したことで売り上げも減少してきていました。
そこで、高齢になり事業存続の可否を検討した会長は地域の買い物の利便性を守るためにも、第三者への事業承継を考えました。

事業引継ぎ支援センターや商工会に相談する中で、東京での生活を離れてキャンピングカーで全国を旅していて、この地域に移住した男性と知り合い、後継者を探していることを伝えたところ引き受けてくれました。

このスーパーの経営資源は、従業員もさることながらこの地域の料理家による無添加の総菜や寿司職人が作った寿司などの高付加価値商品が周囲にあったことでした。
それらの商品の充実を図るとともに、採算度外視の廉価品も取り扱うようになりました。

さらに、全国的にも珍しいオーガニックワインをそろえた結果、地元住民の中でも新規顧客となる人も増え、旅行客も来店するようになったのです。
地元の魅力を発信できるというのも、立派な経営資源になるのです。

経営資源の見つけ方

M&Aでは、経営資源を有効活用することで生き残ることができます。
自社には経営資源と言えるものがない、という企業もあるかもしれません。
しかし、本当に何の経営資源もないのでしょうか?

経営資源は、企業を経営する上で役立つ要素や能力のことです。
特によく言われる経営資源は、ヒト、モノ、カネ、情報の4つです。
その中でも、特に重要とされているのがヒトです。

どのような企業でも、必ず働いている人はいるでしょう。
そのため、必ずヒトという経営資源はあるのです。
つまり、経営資源が全くない企業というのは存在しないことになります。

また、近年はITの発達によって情報の重要性も高まっています。
情報には、企業が持つノウハウや顧客データ、地域やコミュニティなどとのつながりのような、無形の資産も含まれています。

特に、AIを活用する企業ではビッグデータを分析・活用して無関係に見える情報も関連付けることで、経営に資する情報にします。
情報の価値は、取り扱いによって増していくのです。

モノは製品や設備などすべてを含むのですが、それらを扱うにはヒトが必要です。
経営資源を活用するには、ヒトが最も重要となるのです。
たとえM&Aで買収されたとしても、ヒトはそのまま買収した企業の元で働くことができるでしょう。

まずは、自社の魅力についてよく考えてみましょう。
同業他社と比較して、異なる点の中でも優れているという点を見つけるといいでしょう。
そうして経営資源を有効活用して、厳しい中でも生き残りを目指しましょう。
どうしてもわからない場合は、対応機関で相談してみてもいいでしょう。

まとめ

事業承継において、買収する企業の経営資産が魅力的でそれを有効活用することは珍しくありません。
実際に、事業の拡大に役立つ人材や技術などを求めて買収する企業も少なくありません。
経営資産は、ヒトやモノ、カネ、情報の4つがあり、特にヒトが重要とされています。
M&Aを行うことを検討するのであれば、まずは自社が持つ経営資産についてよく考えてみてください。