経営者のみなさんは、企業経営において「リスク管理」「危機管理」という用語をよく耳にするでしょう。
この両者について、同じ意味だと思っている人はいませんか?
実は、似ているようで、そうではありません。
今回の記事を通し、正しい用語の意味や捉え方を改めて一緒に学びましょう。
リスク管理と危機管理のそれぞれの意味を確認しよう
2つの言葉の根本的な違いを簡単に言うと、どこまでの範囲に注意して経営を行っていくのかということになります。
経営が安定している時はあまり考えないことかもしれませんが、状況が良くない時は苦しいくらい悩みますよね。
何に対して注意すべき期間がどこまでなのか、このことに注意して用語の意味を考えていきましょう。
①想定されるリスクを抑えるための「リスク管理」
②生じてしまった出来事に対処する「危機管理」
きちんと理解してしまえば、経営上の何に注目すべきかがはっきりと分かってきますよね。
早速、見ていきましょう。
①想定されるリスクを抑えるための「リスク管理」
リスク管理とは、何かの事業を行う前後を通して、発生する可能性のあるリスクをリストアップします。
その結果、想定されるリスクを事前に阻止、影響を最小限に小さくすることができることを言いますので、事業の動向に予測を立てることになりますよね。
リスクの存在は、本当に起こり得ることだけではありません。
例えば、サイバー攻撃を受けてシステムが止まった場合に、どう対応して解決するのかという部分にも関係してくるでしょう。
事業内容によっては、大げさに考えすぎているという内容があるかもしれません。
しかし、業務を行っていて、少しでも起こり得る可能性があるならば、軽視すべきでないですよね。
そのことは、経営者のみなさんがよく理解しているはずです。
また、リスクの中には緊急度の高い内容だけでなく、小さな内容もありますよね。
これらを一緒に考えてしまうと、優先的に解決策を考えるべき内容が分かりにくいと思いませんか?
そのため、リスクを洗い出した後は、緊急度や優先度順に内容をリストアップして、対策を考えておく必要があるでしょう。
優先度順にリストアップするというのは、意外と大切です。
この手法を突き詰めると、リスクの発生を未然に防いでしまうことになるでしょう。
一方で、この場合に想定されるリスクは、悪い物だけではありません。
中には、企業にとってプラスになる要素に対しても、リスクとして捉えることがあります。
例えば、偶然の要素として起こった事象に対して、どのように対応すべきかということが考えられるでしょう。
このように、リスクの定義や考え方は企業によって違いますから、検討する場合には一定の基準を設け、それを土台にしていくことが求められますね。
②生じてしまった出来事に対処する「危機管理」
一方で、危機管理はリスク管理とは違い、事業自体に実際に危機的な状況が発生した時に行う方法になります。
リスク管理は予測になりますが、危機管理はその場での対応がメインになると考えて下さい。
発生したトラブルに対して、適切な対応・行動をすることが第一になります。
分かりやすい事例としては、販売商品に不備があった場合になるでしょう。
商品に重大な不備が発覚した場合、企業では対応窓口を開設するとともに、消費者に商品の回収を呼び掛ける広告を出すことになりますよね。
これらを徹底することで、事態の収束を行っていきます。
そして、みなさんは危機管理で大切なことがもう一つあることに気付けるでしょうか?
それは、原状回復を行い、通常の業務が行えることになります。
危機管理で重視されるのは、実際に起こってしまったトラブルへの対応だと思われがちですが、それでは不十分なのです。
本当に大切なのは、今まで通りの業務が行える状態に戻すことになりますので、より先を見据えた管理が求められると考えて良いでしょう。
つまり、想定されるリスクに対して備える、回避策を取るというよりは、いつか生じる可能性の有る出来事に対してどのように早期回復すべきかが求められます。
もちろん、生じた出来事に対して迅速に対応するためには、事前のリスク管理が行われていなければできません。
両者には共通点がありますが、どの段階で対応行動を取るのかという部分が大きな違いになるでしょう。
リスクの「マネジメント」を徹底する理由
上記では、両者の用語の意味の違いを確認しました。
最後に、両者は全く別物として捉えるのでなく、共通している部分があることについても触れましたよね。
ここでは、その点についてもう少し詳しく見ていきましょう。
リスクに対するマネジメントを徹底する理由を理解するためのポイントは、以下の通りです。
・これからの企業で大切になるリスクマネジメントとは?
・優先順位をつける理由
・企業経営で重視されることは?
これからの経営にも関係してくる内容になりますから、熟読しておきたいですね。
・これからの企業で大切になるリスクマネジメントとは?
1つ目のポイントは、リスクマネジメントの重要性です。
2つの管理活動は、事前に防ぎ、迅速な解決を図るためだけではありません。
もっと深い部分に触れると、コントロールすることに繋がるのです。
確かに、発生するリスクの中には、まだまだ企業対応では回避、解決が難しい内容もありますよね。
ですが、そのような難易度の高いリスクの発生を最小限にできたり、そもそも起こらないようにできたりするとどうでしょうか?
企業としても、今後の負担を考えればできるに越したことはないですよね。
何より、リスクを小さくして対応するとなると、労力にも違いが出てくるでしょう。
このように、対応しやすい形にコントロールができると、対応する側も非常に楽だと思いませんか?
そのため、2つの管理手法を徹底しておくことは、経営者だけでなく、実際に対応が求められる従業員にとってもメリットに繋がるのです。
・優先順位をつける理由
2つ目のポイントは、上記のコントロールを成功されるためにも、やはり優先順位付けを確立しておくことでしょう。
これは、発生する可能性だけでなく、対応に必要な人員やコスト面を把握するためにも重要になります。
例えば、あるトラブルの対応がきちんとできたとしても、その解決のために莫大な費用がかかったということもあり得ますよね。
企業によっては、そのコスト部分で再びダメージを負ってしまうことも考えられるでしょう。
複数の要素からリスクを捉えることで、注視すべきリスクの存在を把握することができるようになります。
このことは、経営者だけでなく企業全体でリスクに対するイメージを具体的に共有することができますから、大切な作業になると考えて下さい。
・企業経営で重視されることは?
3つ目のポイントは、上記の流れを実現するために、リスク管理と危機管理を分断せずに行わせることです。
企業の中には、リスク管理と危機管理を別の部署で別個として行わせていることがあるかもしれません。
ですが、先程もご説明した通り、両者には共通点がありますから、お互いに協力しながら取り組んでいくべきなのです。
別個で行動されてしまうと、かえって効率が悪いですよね。
お互いに協力体制を築きながら取り組めるようにできると、より完成度の高いマネジメントが実現できるでしょう。
まとめ
今回は、リスク管理と危機管理の用語の意味や、その違いについてご説明しました。
両者には共通点がありますが、違いがあるとすると、何に対して管理、対応を行っていくのかという部分になるでしょう。
特に、危機管理は業務を正常に戻す部分にまで関わってきますから、長い期間が必要になりますよね。
どちらの場合も、実際に対応するとなると様々な負担が発生しますから、事前のリストアップは重要な行為になると考えて下さい。