自民党が都議選で大敗した理由

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6月22日に東京都議会議員選挙の投票が行われたのですが、自民党は127議席中21議席しか獲得することができませんでした。
都議会における自民党の歴史において最小議席数となったのですが、なぜ都議選で大敗してしまったのでしょうか?
大敗の理由について、解説します。

首都である東京の問題点

東京都では、空港や道路、鉄道などのネットワークを構築し、今もなお発展を続けており近隣の自治体や政府とも協力して直径100kmに及ぶ都市構造を作り上げているのです。
世界有数の交通ネットワークを築き上げ、高度情報化時代になってさらに激しくなる人やモノの流れを円滑にさばいています。

しかし、東京都の都市活動においては、住宅価格の異常なほどの高騰がネックとなっているのです。
1964年に開催された東京五輪のときは、東京の成長限界は水にあるといわれていたものの、水路を建設したことで解消されています。

道路交通の成長限界も圏央道やトンネル建設によって解消し、空港の成長限界も乗り越えてきたのですが、住宅価格の高騰は異常な状況となっているのです。
東京23区のマンション価格は前年同月比で36.1%上昇しており、平均価格は1億4000万円余りとなって多くの人には手が届かなくなっています。

今回の都議選では、物価対策が最大の争点の1つとなっていたのですが、東京都の場合は住宅対策が物価対策の中心となるのではないでしょうか?

分譲マンションの価格だけではなく家賃も上がっていて、自民党を含めた各党は住宅購入費や家賃補助を物価対策の一環として掲げていました。
しかし、対策としては一時しのぎという面が強く、基本的な大都市政策である人口集中については議論されませんでした。

今後も東京の人口増加を受け入れるのか、住宅はどこに増やすのかは、国政の第一党である自民党が議論しなくてはいけないことかもしれません。

マンション高騰の原因は?

東京都都市整備局の発表によると、2023年の新築分譲マンションの平均価格は区内で75平方メートル当たり1億2953万円と、平均年収の15倍になっているのです。
2000年頃は7倍ほどで、1989年のバブル最盛期でも12倍だったのに、現在はさらに高騰していてマンションバブルの様相を呈しています。

自民党では、東京都の公式アプリを活用して子育て世代に家賃補助として月2万ポイント、住宅購入補助に100ポイントを支給しているのです。
また、中小企業の中で賃上げや住居手当の支給に取り組む企業の後押しをすることも宣言しています。

しかし、内容的には共産党の月1万円の家賃補助や賃上げした中小企業に1人当たり12万円の助成とあまり変わらないでしょう。
マンション価格が異常に高騰している現在に必要となるのは、対症療法ではなく根治療法としての施策だと思われます。

都内のマンション価格が高騰している原因としては、建築費等のコストアップがあるでしょう。

しかし、さらに大きな問題となるのが、世帯と人口が増加したことで需要の圧力が増したことでしょう。
東京都の人口は1425万人と過去最高になっていて、日本の人口が減少を続ける中で東京都の人口だけがコロナ禍を除いて増え続けています。

特に問題となっているのが世帯数の増加であり、平成30年間で人口は16.6%増加しているのですが、世帯数は400万世帯が710万世帯と、47.9%も増えているのです。
世帯数が増えているのは、未婚や非婚、晩婚などで世帯の細分化が急速に進んでいることが原因であり、世帯数の増加に伴ってマンションの需要も増えています。

東京都の人口は、2020年の調査で昼間が1235万人だったのですが、夜間人口は973万人と昼間の方が4分の1以上多いのです。

統計を見ると、東京23区内には雇用を中心とした活力があり、吸引力によって人口や世帯が増えていることがわかります。
活力を削がずに東京区部の世帯数を増やさない政策、またはマンションの増加策を実施しない限り、マンション価格の高騰は止まらないでしょう。

例えば、大中小の民間企業や大学、専門学校などの中には東京都内に立地してなくてもいいものがあるため、近隣の県や各地方に移転させるべきという意見もあります。
長い間、移転に関する議論は首都移転論や首都誘致運動を誘発する恐れがあるため、タブー視されていたのです。

しかし、現状を鑑みるに首都移転論への飛躍がないようにしたうえで東京都側から問題提起するべきとも考えられています。
シリコンバレーのアップルやグーグルの本社は、広大な平屋建てのスタジアムのような建物となっているのです。

縦型のオフィス構造は従業員どうしのコミュニケーションを妨げ、異分野の専門家どうしの閃きや思いつき、開発ヒントの交換の機会をつくらないと考えています。
日本でも新たに勃興して大企業となっていく企業は存在するのですが、今後は郊外立地が構想されるべきでしょう。

たとえばリニア中央新幹線が完成した場合は、品川から甲府まで約20分で移動できると想定されているため、どう活用するか議論する必要があります。
リニア中央新幹線は品川から橋本まで7分程度、橋本から八王子、町田まで既存の鉄道で10分程度となるため、関東とその周辺の都市構造はまだまだ変わっていくでしょう。

圏央道も成田空港のすぐ外側の芝山トンネルが近く供用開始される見込みで、成田空港からの貨物は圏央道・アクアライン経由で届けられるルートも可能となります。

当然ながら、東京区部におけるマンション増加政策も議論されるべきで、特に注意したいのが老朽化しているマンションです。
区部周辺部を環状に走る大動脈の環状7号線道路の沿道には、高度経済成長期に建設された膨大な中小マンション群が建て替え時期を迎えています。

マンションの老朽化が進むと、手をつけることがますます困難になってしまうため、早急な対策が必要となるでしょう。
容積率や高さ制限を見直して、建替えプロジェクトを可能にする政策も議論すべきですが、新しく構成される都議会は大都市政策についても議論するべきと思われます。

まとめ

2025年6月の東京都議会議員選挙において、自民党はわずか21議席の獲得に留まり大敗といえる結果となったのです。
自民党が大敗した原因には、現在の東京都が抱えるマンション価格の高騰に対して議論せず、補助金だけで抜本的な解決策を講じなかったことが原因と思われます。
今後、東京と周辺の交通がさらに成長するに伴って、他県への施設の移転なども検討する必要があるでしょう。