医療の現場/病院の医療事故

医療事故が起きた時、患者や家族に謝罪すると訴訟を起こされ不利な状況に立たされると考え、非を認めない医療機関も以前は少なくありませんでした。
しかし最近では患者や家族に対して隠すことなく事実を伝え、ミスを認めてすぐに謝罪する医療機関が増えています。
しっかりと真実を説明することで患者側との信頼関係が回復でき、紛争に至らないという状況に繋がっていると考えられます。


医療紛争が減少した理由は謝罪が増えたこと?
医療事故が発生した直後は何が原因かは明らかでないことが多いので、一般社団法人全国社会保険協会連合会(全社連)の旧指針には医師個別の感情や判断で安易に責任を認めることや補償の約束を慎むことが明記されていました。
しかし2008年9月から導入された新たな指針には、ミスがあったことを判断した場合は即座に患者や家族に責任承認謝罪を行うことが記載されています。
他にもミスが明らかでない場合も、例えば「期待に応えることができず…」といった言葉や、「非常に残念です」といった患者や家族の心情に共感する共感表明謝罪を伝えることが必要とされています。
結果、示談や和解による解決の割合は新指針導入前の3割から5割に増えています。
1つの医療事故に複数のスタッフが存在していることも
医療事故が起きたら謝れば良いでは済まされません。大切なのは、医療事故が起きないようにすることです。未然に医療事故を防ぐために、医療事故の起こる背景について確認しておきましょう。
まず医療機関で発生する医療事故には、発生プロセスに様々な医療スタッフが関係していることがあります。
例えば医療事故の中で発生頻度が高い薬剤の誤投与による事故などは、医師だけでなく調剤する薬剤師、準備や投与する看護師なども関係してきます。
手術に関しては患者の取違え、部位の間違い、異型輸血など、スタッフ間の連携ができていないことも要因ですし、誤診についても医師単独の誤りではなく、背景に血液検査や放射線検査によるミスが関係していることも考えられるでしょう。
医療事故の多くは誰かが単独で起こした事故だけでなく、複数が関係することで起こることもあると理解しておくべきです。
様々なスタッフが関係することが事故防止に繋がることもある
1つの医療行為には色々な職種の様々なスタッフが関係しますので、1人のスタッフがミスをしても別のスタッフによる発見で未然に事故を防ぐこともできるでしょう。
医師による誤りはその後仕事を行う看護師や薬剤師によってその半分が発見され、患者に影響を及ぼさずに済んだというケースもあります。しかし薬剤師の誤りが事前に発見されるのは約3割、看護師の誤りについてはたったの2%程度です。
看護師に何らかの誤りがあっても、その多くはそのまま患者に影響してしまうと言えますので、より慎重な判断や行動が求められます。
スタッフ同士のコミュニケーションが医療事故を防ぐ
医療の現場は人の手によって医療行為が行われていますので、判断や行動、全てにおいて何らかの事故に繋がる可能性があります。
夜勤や残業で疲れていることが1つのミスに繋がり、それがやがて大きなミスへと発展することも考えられなくはありません。
しかし事故によって被害を受けるのは、医療機関を信頼して訪れた患者ですので、勤務体制の改善はもちろん必要ですが、スタッフ同士の連携やコミュニケーションについても考えていく必要があるでしょう。