日本の外国人運転免許問題について

事故・災害リスク

日本に来た外国人が、海外で取得した運転免許証を日本の免許証に切り替える外国免許切替、外免切替という手続きが大きな問題になっています。
手続きが簡単であることで、一時滞在の外国人も手続きに殺到しており、切替後に事故を起こすケースも多発しているのです。
外国人運転免許問題について、解説します。

外免切替制度の抜け穴

外国人が日本で車を運転したいと思ったときは、3つの手続きのうちどれか1つの手続きをする必要があるでしょう。

1つ目は、日本の公安委員会が指定した自動車教習所に通い、単位を取得して卒業し、試験を受ける方法となります。
日本人が運転免許証を得るための手続きと同様の手続きとなり、費用は約30万円かかるでしょう。

2つ目の方法は、多数の国で運転免許証として認められている国際免許を取得することで、ジュネーブ道路交通条約に基づいた制度となっています。
ジュネーブ条約に加盟している100余の国で利用できるのですが、加盟していない国の国民は取得することができません。

また、6つの国や地域で発行された免許証は、日本政府が認めた機関で日本語の翻訳文を付帯することで、日本でも有効な免許証にするという方法も可能です。

3つ目の方法が外免切替という制度で、外国の免許証を持っていて日本の試験場で知識や技能の確認をすることで、日本でも有効な免許に切り替えるという制度となります。
希望する場合は運転免許証とパスポート、日本での居住地が記された住民票や一時滞在許可証などを揃えて、各都道府県の公安委員会で申請できるのです。

運転免許センターで知識や技能の検査を受け、合格すればすぐに日本の免許に切り替えることができます。

なお、外国人が日本に90日以上滞在する場合は住民登録が必要となるのですが、外免切替の場合は住民票による居住地確認が必須というわけではないのです。
一時滞在許可証をホテルなどで発行してもらうだけでも手続きができるため、観光ビザで入国した場合でも免許を切り替えることができます。

外免切替制度の抜け穴といわれていて、手続きのハードルが低いため制度を利用する人が急増しているのです。

外免制度を特に利用している国

2014年に外免切替を利用して免許を取得した外国人は3万人近くに及び、以降は外免制度の利用者が急増しています。
急増した背景には、在留資格「特定技能」認定者の拡大やインバウンド政策、円安によって外国人観光客が増えたことなどがあるのです。

2018年になると利用者は4万人以上となり、2023年になると6万人以上が利用しています。
2024年に外免制度を利用した人は約7万5千人と、10年で2.5倍にも膨れ上がることになったのです。

特に利用者が多いのはベトナムと中国で、ベトナムから来た人が最も多いという結果になっています。
どちらもジュネーブ条約に加盟していないため、国際免許が取得できないという問題があるのですが、外免切替をすると国際免許を取得できるのです。

外免切替だけなら日本で運転できるようになるだけですが、国際免許を取得できれば世界100カ国以上の国で自由に運転できるというメリットがあります。
コロナ禍が開けてから、中国ではSNSやサイトなどで情報が共有され、外免切替の希望者が殺到したのです。

しかし、外免切替の利用者が急増したことで大きな社会問題が起こっており、日本政府の外国人労働者の受け入れ拡大が危ぶまれることになりました。

問題が表面化したのは2024年になってからで、外国人労働者の受け入れを推進していたことで試験の多言語化や免許の円滑な切替なども進めてきたのです。
以前は英語だけでしたが、今は外免切替の試験において24言語が使用されるようになりました。

しかし、2024年の夏ごろからは必要な交通法規の知識、並びに運転技術が欠けているのに外免切替で日本の免許証を得た人が事故を起こすケースが目立つようになったのです。

事件は全国各地で起こったのですが、ハンドルを握っていたのは外免切替によって運転が可能となった外国人だったといわれています。

例えば、2024年8月には、山口県でレンタカーを運転していた中国人女性が赤信号を無視して交差点に進入し、中国人夫妻をはねて死亡させるという事故が起こったのです。
2024年9月には、埼玉県で中国籍の18歳男性が酒気帯び運転で一方通行の道路を時速125kmで逆走し、日本人男性の運転する車と衝突し日本人男性が死亡しています。

2025年5月には、同じく埼玉県で中国籍の男性が飲酒して運転し、下校中の小学生の列に突っ込むという事故が起こっているのです。
小学生4人が重軽傷を負い、運転手は現場から逃走したものののちに逮捕され、過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱として送検しました。

2025年5月には、三重県の新名神高速道路においてペルー国籍の男が高速道路を14キロも逆走し、車4台と衝突して女性1人にけがを負わせるという事故も起こったのです。
外免切替制度を利用した外国人が起こした事故は、テレビや新聞で大きく報じられただけではありません。

事故前後の様子は、市民のドライブレコーダーなどで記録された映像がYouTubeなどに投稿・引用されて拡散されているのです。
事故について知った国民の間では、外免切替の制度はこのままでいいのかという大きな疑念を生む結果となりました。

一連の問題は、国会質疑や閣僚の記者会見などでも次々と取り上げられ、問題視されているのです。
外国人の働き手を増やすという観点は後景に退き、制度の緩さを戒めるものばかりになってきました。

切替試験では、知識確認の問題が簡単すぎて、日本の交通ルールをよく理解していなくても合格できるといわれているのです。

また、ホテルなどの一時滞在場所を『居住地』として認めてしまえば、事故を起こしたときなど、適正に対応できるのかという点も不安視されています。

日に日に高まる世論に押される形で、政府は外免切替制度の見直しに着手する考えを示すこととなったのです。
現状としては、知識確認の問題を見直すことや、住所確認では住民票の提示を必須とするなど厳格化を図る方針となっています。

まとめ

外国人労働者の受け入れ拡大を目指す日本政府では、外国で取得した免許を日本でも有効なものに切り替える、外免切替という制度を設けています。
外国人は日本で試験を受けることで切替が可能となりますが、一部の国では切替によって国際免許を取得することができるということで希望者が急増しているのです。
しかし、制度の利用者が重大な事故を起こす事例が増えていることで、今後は厳しい試験が課されるようになるかもしれません。