個人事業主が突然死した場合に想定されるリスク

近年、個人事業主として活躍している人が増えています。
一般的な会社の経営とは違っている部分もあり、様々な手続き面において複雑に感じる人もいますよね。
そんな中、個人事業主本人が突然死してしまった場合、残された人は何に注意すべきなのでしょうか?
今回は、想定されるリスクについてご説明します。

金銭面や相続に関わるリスク

個人事業主が突然死してしまった場合、事業に関わらず、個人の資産は親族に渡りますよね。
これに関しては、多くの人が問題ないと感じるでしょう。
ですが、個人事業主に関わらず、よく相続時には何の資産を相続するのか、放棄した方がいいのかと迷ってしまう人が多いですよね。

突然死してしまった場合は、そもそも何を残しているのか、周囲の人が分かっていないことがほとんどです。
そんな中で、相続の有無を決定するのは難しいですよね。
つまり、満足できる形で相続が行われない可能性がある、というリスクを孕んでいるのです。
そのため、どうすべきか悩んでしまう人は、通常の場合よりも多い傾向があると考えて下さい。

また、明確な状況下での相続が望めないだけではありません。
最大のリスクは、資産にとってマイナスになり得る借入に関しても、引き継がなければならない可能性があることです。
一般的に、残された資産より借金の方が多い時は、相続しないという判断をすることで債務の相続を回避することができますよね。
マイナスとなる資産をあえて引き受ける必要はないのです。

ですが、個人事業主の場合だと、少し事情が違ってきます。
実は、個人の資産でない事業用の資産であっても、それらは相続の対象となってしまいますから、仕事関係は自分たちに関係ないとは言えません。
例えば、個人資産に対しては借金がなかったとしても、事業用の資産にある程度の借金があったとしましょう。
このような場合は、個人資産だけを見ると受け取った方が良いと思いますよね。

ですが、個人資産だけでなく事業用の資産も対象になると知った時、みなさんはどう考えますか?
借金を背負いたくないと考えてしまう人もいるでしょう。
場合によっては、それを拒否することができず、両方とも相続しなければならないという人も出てくるかもしれません。

従って、突然死してしまった場合、残された親族にはマイナスも受け入れなければならない状態になってしまうでしょう。
多くの人が、債務や負債となるべく無縁でいたいと思いますし、なるべくなら住宅ローンのように最低限の形にしたいですね。

また、個人事業主が家計における主体だった場合、残された家族の生活面に不安が生じます。
生命保険等に加入していた場合は、必ず保険金を受け取るようにしましょう。
残された家族にとって、収入の主体である本人が死亡してしまったとしても、生活し続けなければなりません。

そのため、突然死してしまった場合でも、家族が生活に困らないように保険等へ加入することをオススメします。
最近は、収入面を保障してくれる内容もありますので、本人の死亡によって収入が途絶えてしまうことは防げますよね。
事業関係のお金や資産の状況ばかりに目を取られてしまいますが、日常生活での支払いも待ってはくれません。
相続面に備えるだけでなく、家族への生活保障も一緒に考えておきましょう。

事業自体が機能不全に陥る可能性も

個人事業主が突然死した際に考えられるリスクは、他にもあります。
資産面以外の内容で取り上げられるものとしては、事業に関わる内容になるでしょう。
個人事業主の場合、大規模な形で事業を行っておらず、例えば1人で仕事をしているということもありますよね。
そのため、事業を担っていた人が死亡してしまうと、仕事面が全部ストップしてしまいます。

想定される内容は、次の通りです。

・個人事業主だけが知っている情報の扱いが大変

まず想定される内容としては、個人事業主だけが知っている情報の扱いや対応をどうするのかということです。
例えば、取引で使っている口座に、親族が顧客への対応を一時的にしようとした場合を考えてみて下さい。
暗証番号等の情報は、死亡した本人しか知らなかった場合、その口座を利用しての対応ができませんよね。

その他にも、従業員を雇っていた場合は、本人が死亡したとしてもその人へのお給料を支払わないといけません。
その処理や手続き面で支払えないとなってしまうのだけは、絶対に避けたいですよね。
このように、通常の業務でも個人事業主しか知らない情報はたくさんあります。
その結果、本来なら循環しているはずのお金の流れが止まってしまうリスクが出てくるでしょう。

知らないことが多い状態では、親族や仕事関係の人は困ってしまいますよね。
そのため、いざという時に備えて、直接必要な情報を教えていなくても、緊急時の対応をファイル等にまとめておくといいかもしれません。
最低限の情報が分かると、残された側も最低限の対応を取ることができますし、事業に関するトラブルを小さくできますよね。

従業員がいる場合は、いざという時の対応を話し合っておくといいでしょう。

・後継者がいる場合~あまりにも突然すぎて引継ぎができない~

2つ目に想定されるリスクには、後継者関係です。
例えば、長年行っているような事業だと、後継者がいるというのは珍しくありません。
昨今は、経営者の高齢化の状況も後押しして、早めに後継者を探して仕事を覚えてもらっているという人もいるでしょう。

ですが、後継者がいたとしても安心できません。
なぜなら、突然死してしまったタイミングによっては、そもそも仕事を教える前の段階だったということもあり得ますよね。
仕方がない状況かもしれませんが、これでは後継者も今後どうすべきなのか分からないまま放り出されてしまったことになります。
そのため、従来の事業を満足に維持できないということが起こってしまうでしょう。

最悪の場合、せっかく後継者を設定したにも関わらず、その人が事業を承継できなかったという事例もありました。
できる対策としては、後継者を考えている場合はタイミングに関わらず、教えられる内容を早めに伝達しておくことです。
また、それが難しい場合は、事業や仕事の内容をまとめて記録しておくというのも一つの方法になるかもしれません。

・利益を生みだす事業を壊してしまう

個人事業主の中には、様々な事業を行い、利益を生みだしている人がいますよね。
ですが、突然死してしまうと、本来ならば利益を生みだすだろう事業の可能性を大きく壊してしまうリスクがあるのです。
中でも、事業内容に精通人が不在だった場合は深刻な状況に陥ってしまうでしょう。

多くの場合、可能性のある事業を検討している段階は、多くの人に公表されていませんよね。
そのため、突然死によって事業そのものが実現しないということにもなり兼ねません。

ここでは、事業に関わるリスクを3つご紹介しましたが、どれも事業自体をストップさせてしまう要因になりますよね。
事業がストップするということは、事業に関わるお金の動きを止めることにもなるでしょう。
特に最初に紹介した経理面での情報は、取引先との関係にも関わってきます。
本来なら入るべきはずのお金が入ってこないというのは、親族にも事業に関わってくれている従業員にも迷惑をかけることになるでしょう。

まとめ

今回は、個人事業主が突然死した場合のリスクについてご説明しました。
相続面に関するリスクもありますが、事業がストップすることで将来性を摘んでしまうリスクもあります。
個人事業主が1人で仕事を全て行っている傾向はまだまだありますので、不測の事態のことだけでも最低限周知させておくようにして下さい。
また、家族がいる人は必要に応じて保険を活用すると、生活面での不安を限りなく少なくすることができるでしょう。