従業員がうつ病を発症して、仮に自殺してしまったとしても労働者の故意とされることで労災認定されないことが通常です。
ただし勤労状態が悪いことなどで、過労が原因でうつ病を発症し、自殺に至ったという因果関係が認められた場合には労災認定され、遺族給付も支払われることになるでしょう。
さらに労災認定された場合には、企業は遺族から損害賠償を請求される可能性があります。
企業に賠償責任が発生するケースとは?
遺族から損害賠償を請求される理由として、精神的苦痛を受けたことに対する慰謝料が挙げられます。慰謝料の相場は過去の裁判例では、2,500~3,000万円で認められています。企業側に賠償責任が発生するケースとして、主に次の3つのケースが考えられます。
・企業側に明らかな過失があるケース
過重労働やハラスメントなどの行為があったことが該当します。
・企業がすべきことをしていなかったケース
企業は従業員の安全面に配慮し、就業規則を設け健康診断を行うなどを行う必要があります。この安全配慮義務を怠っていた場合や、安全衛生管理体制が整備されていなかった場合などが該当します。
・使用者賠償責任を問われるケース
使用者である経営者が直接的に従業員に対するハラスメント行為を行っていなかったとしても、被害を受けた従業員の上司などが行為を行っていた場合には使用者責任を問われます
リスク回避のために会社ができることは?
従業員の安全を守るために労働安全衛生管理体制の整備をすることが重要です。健康診断を実施することや、残業時間の適正な把握などを行い、改善すべき点は改善することが必要です。
また、労働災害総合保険(労災上乗せ保険)に加入することで労災からの補償では不足する部分を補うことができます。
さらに訴訟になった場合のリスクマネジメントとして使用者賠償責任保険などへの加入も検討しましょう。
長時間労働は実質的な改善が必要
他にも生命保険などを活用して弔慰金を充実させておくこと、災害補償規程を整備すること、弁護士などで適切な示談交渉ができる環境を整備しておくことも備えになります。
また、1か月平均の時間外労働が100時間を超える長時間労働は、従業員に対し強度の心理的負荷を与えることになります。
もし労働時間が現在長く、長時間労働である場合には口頭で休憩を取る指導を行うだけでなく、実質的に解消できる体制を構築することが必要です。
最悪の事態を招かないためにも
従業員に対するハラスメントや長時間労働などによる過酷な状況は、肉体的な疾患だけでなく精神的な疾患を発症させてしまい、自殺に至らす危険性を高めてしまう可能性があります。
それと同時に、会社も損害賠償請求されるリスクがあることを十分に理解しておき、改善策を講じることが必要だと言えるでしょう。