マイナ保険証は2024年12月から始まっており、2025年12月1日には従来の保険証が廃止となってマイナ保険証への移行が本格化してきました。
しかし、現場では多くのトラブルが起こっているといわれており、まだ移行していない人の中には不安に思う人もいるでしょう。
マイナ保険証で多く起こっているトラブルについて、解説します。
マイナ保険証で起こりやすいトラブルとは?
マイナ保険証を利用する際は、医療機関の受付にあるカードリーダーでマイナンバーカードを読み取り、保険資格確認を行う必要があるのです。
確認の際は顔認証や暗証番号による認証を求められるのですが、普段使うことのない暗証番号なので忘れてしまったという人は少なくありません。
顔認証なら大丈夫かと思っても、何回やり直しても顔認証がうまくいかないというケースも多いのです。
顔認証はリーダーの画面に表示されている枠内に収まるように顔を向ける必要があるのですが、顔を上げてじっとしているのが難しいという人もいます。
また、車いすに座っている人は届かない高さにあることもあり、意識がない状態で運ばれてきた人であれば指示に従うこともできないでしょう。
顔認証はなりすましを防ぐためのものなので本人が行わなくてはならないのですが、発熱外来で院外での対応をした場合にマイナ保険証しかないケースもあります。
保険資格が確認できなければ10割負担になってしまうため、認知症の母親に持たせなくてはならないのかと不安に思っている人もいるのです。
顔認証や暗証番号をクリアしたら、次は検診情報や薬剤情報などを提供することに同意するかという問いが出るため、操作する必要があります。
しかし、若い人であればあまり気にならない設問だとしても、操作が増えるという点で高齢者からはわかりにくい、面倒という声が出ているのです。
薬剤情報は診療報酬明細書が確定してから反映されることになるため最大で90日ほどかかり、検診情報も検診事業者の請求後に反映されます。
しかも、反映される検診情報は健康保険で受けられる検診である特定検診などに限られるのです。
また、氏名に常用漢字以外の漢字が使われているときは●で表示されることもあり、結局は診療申込書やカルテで確認することになります。
こども医療費やひとり親、重度心身障碍者などの自治体独自の公費受給者証にも資格確認に対応していないという報告もあり、紙の受給者証が必要となるのです。
3月から対応すると資格確認システムを提供する会社から返答があったとのことなので、急いでマイナ保険証を普及させたことでシステムが追い付いていないことがわかります。
生活保護利用者に対して、マイナ保険証による資格確認となるため生活保護の医療券を発行しないことにしたという自治体もあるようです。
医療券は生活保護者が無料で医療を受けるための資格者証ですが、生活保護利用者が全員マイナ保険証を持っているという前提は成り立ちません。
資格情報の正確さも信頼できず、国保と社保、協会けんぽなどを変更したのに情報が変わっていないというケースや、名前の読み仮名が違うというケースが多発しているのです。
カードリーダーなどの機器の動作不良や再起動、メンテナンスなどの問題があって受付ができなくなるという問題も起こっています。
メンテナンスはオンラインで行われるのですが、メンテナンス中はマイナ保険証のシステムが全て止まるため資格確認が全くできなくなるのです。
また、接続が途切れやすく頻繁に処理中と表示されて保険証の確認が止まってしまう、新患の人の資格確認で保険証と異なる情報が表示されたといった問題もあります。
医療費の自己負担割合の間違いもあり、カードリーダーが正常に起動しないせいで交換になったというケースもあったようです。
読み込みができないケースにはマイナンバーカードの電子証明書の期限切れや磁気不良、カード自体が読み込めなくなっているというケースもあります。
トラブルが多発する原因は?
マイナ保険証はなぜトラブルが起こりやすいのかというと、一本化した出発点が患者や利用者の利便性を高めるためではないからです。
マイナンバー制度が始まったのは2015年10月、マイナンバーカードの発行は翌年1月から始まりました。
制度を始めた目的の1つが個人を特定したうえで社会保障の給付抑制と負担増で、実際に2015年の閣議決定でも明言されているのです。
医療保険や介護保険ではマイナンバーを活用することで、負担を求める際に金融資産等の保有状況も考慮するという仕組みを検討すると述べました。
背景にあるのは大企業の税や社会保障負担を減らして国民に求めるようにしたいという、財界の思惑です。
経団連でも、公正・公平な制度の基盤としてマイナンバーと所得、銀行口座などの資産の紐づけを義務化するよう主張しています。
また、個人情報を集めることで民間企業が利益を得るために活用できる仕組みを作るというのも目的の1つです。
マイナ保険証は今後、あらゆる個人情報を一本化するためのスタートであり、最終的には国が国民を監視して言論統制なども行うのではないかと危険視している人もいます。
マイナ保険証は不便で危険と考え、やめた方が良いと訴える人もいますが、薬局のカードリーダーで強引に紐づけされたという人もいるのです。
不本意に紐づけされた人は決して少なくはなく、解除申請は数万件にも及んでいるといわれています。
しかし、押しつけに反対する人々の運動の甲斐あって、資格確認書の期限は当初の1年から5年まで延ばされたのです。
今後はマイナ保険証を避けたい人のために、紙の保険証を再び発行させることを目的としています。
まとめ
マイナンバーカードと保険証を紐づけて一体化したマイナ保険証は、便利なように見えて様々なトラブルが起こっているのです。
特に多いのが顔認証のトラブルで、カードリーダーの顔認証がうまくいかないという人や、具合が悪くて枠内に顔を向けてじっとしていられないという人もいます。
カードリーダーの故障やメンテナンスなどが必要になって読み込めないケースもあるため、マイナ保険証の押し付けに反対する運動もあるのです。

