医療ミスのリスクについて

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医療に携わる人にとって一番避けたいのが医療ミスですが、実際に医療ミスが起こった場合はどのようなリスクがあるのでしょうか?
医療ミスのリスクには、金銭的なリスクだけではなく信用を損なうリスク、人命にかかわるリスクもあるのです。
医療ミスの具体的なリスクについて、解説します。

医療ミスによって生じるリスク

医療に携わっている医師や看護師、あるいは歯医者や歯科衛生士などの立場にいる人は、医療ミスを起こしてしまう可能性があるでしょう。
医療ミスというのは、医療過誤によって患者に何らかの負担や苦痛を与えてしまうことで、場合によっては死亡に至る可能性もあります。

患者に与えてしまう負担や苦痛には、身体的なものや精神的なもの、あるいは経済的なものがあるでしょう。
医療過誤が原因である場合、患者は自身が受けた負担や苦痛に応じて医療訴訟を起こす可能性があります。

医療ミスが起こる原因としては、医療従事者の多忙や過労によって注意力が低下してしまったり、研修を十分に受けていなかったりすることなどが考えられるでしょう。
また、使用する薬剤の名称が類似していて取り違えてしまうことや伝達ミス、機器に生じた不具合、確認プロセスの標準化不足なども原因となります。

医療ミスが起こった場合のリスクとしてはまず患者がリスクを受けることになり、不必要な痛みや不快な経験、障害を負う可能性があるのです。
治療が遅れてしまうことや合併症により、追加の医療費や生活の質の低下など、経済的な負担が増加することがあります。

また、医療ミスの内容には様々なものがあるのですが、重大なミスの場合は患者の生命に関わる深刻なリスクへと発展する可能性もあるでしょう。

医療ミスが原因で患者が損害を被った場合、病院や医療従事者に対して損害賠償請求などが可能となる民事責任が発生します。
リスクの内容によっては医療訴訟に発展するケースもあり、判決が出るまで時間がかかってしまうでしょう。

もちろん医療機関や医療従事者にもリスクがあり、民事上の損害賠償責任があるだけではなく、内容によっては法的責任を問われることもあります。
また、刑法において罪に問われることもあり、行政上の責任を問われるケースもあるでしょう。

何より、医療ミスは医療従事者としての信用を損なうことになり、他の患者からの信頼も失われてしまいます。
医療ミスを起こした医療従事者の立場によっては、医療機関そのものの評判も悪化してしまうリスクがあるでしょう。

医療ミスは、あまり悪影響を与えない些細なものから、生命に関わるほど重大なものまであるのですが、たとえ些細であっても起こすべきではありません。
医療現場において、患者は医療従事者を全面的に信頼しなくてはいけないので、信頼にこたえるためにも万全な対応をするべきなのです。

医療ミスの主な原因と対策

医療ミスというのはめったに起こることがないものではありますが、果たして何が原因で起こるのでしょうか?

医療ミスの原因には、人的要因や技術・システム的要因、組織の仕組みや環境などの要因があるため、それぞれの具体的な原因を解説します。
人的要因となるのは、医療従事者の過労や多忙によるもので、疲労が蓄積したことで集中力や注意力が低下し、医療ミスが起こるのです。

例えば、手術をした際体内に入れたものを取り忘れてしまうといった医療ミスは、注意力が低下したことで起こります。
気力と体力が十分であれば起こりえないようなミスをしてしまった場合は、疲れが溜まっていることが多いでしょう。

また、勉強や指導の体制が不十分であることが原因で、知識不足によって起こる医療ミスもあります。
例えば、手術においてチェックするポイントの教育が不十分だったため輸血パックの取り違えが発生したという事例があるのです。

また、手術後体内に異物が残ったままとなった事例では、看護師が使用した器具のカウントをする必要性に気づかなかったという教育不足が原因になることもあります。

人が行うことなのでどうしても完璧とはならずミスが起こってしまう、ヒューマンエラーが原因となることもあるでしょう。
伝達ミスで必要なことが伝わっていなかったり、気の緩みでミスが起こったりするヒューマンエラーは、医療ミスの原因として最も多くを占めています。

技術・システム的要因となるのは医療機器の不具合や操作ミスなどがあり、機器の入れ替えを行った後や経験不足の医師が操作するときによく起こるでしょう。
類似名称の薬品がある場合には、薬を取り違えてしまう誤薬のリスクも起こる可能性があり、ダブルチェックを怠ったヒューマンエラーも同時に原因となります。

情報システムの機能不全や情報漏えいなど、病院側の過失というよりも医療機器メーカー側の過失となる可能性があるケースもあるのです。
病院側でも、確認プロセスの標準化やガイドラインなどを定めておく必要があるのですが、不備があって十分に機能しなかったことで医療ミスにつながることもあります。

組織的・環境的要因として、近年の医師不足に伴って慢性的な人員不足に悩む病院も多く、人材不足に伴って労働環境が悪化することもあるでしょう。
患者の識別や検査結果の共有などの環境が整っておらず、確認や共有ができずに医療ミスへとつながることもあります。

医療機器のリスクを軽減するための対策としては、まずダブルチェックを徹底することが重要となるでしょう。
薬剤投与や検査、患者の確認などの際に複数回確認を行うことで、見落としを減らすことができます。

日々の業務においては標準化された確認プロセスやマニュアルを導入し、手順を明確にすることでミスの発生を抑制できるようになるでしょう。

事故には至らなかったものの、事故につながりそうになったヒヤリ・ハットのケースを収集・分析して、再発防止策を検討するようにしましょう。
医療従事者の過労はヒューマンエラーにもつながるため、過労を防いで適切な労働時間と休息を確保することで、注意力を維持してミスを減らすことができるのです。

医療従事者に対しては継続して教育や研修を行い、知識やスキルの向上を図ることでエラーを削減できるようになります。

まとめ

医療ミスがあると、患者さんに不利益を与えてしまうだけではなく病院側や医師、看護師にとっても信頼を損なってしまうリスクがあるでしょう。
医療ミスの原因には人的要因や技術・システム的な要因、組織的・環境的要因などがあり、ヒューマンエラーは特に多くのケースの原因となっています。
医療ミスのリスクを減らすためには、教育を受けられる環境を整えてダブルチェックなどのルールを厳格に定め、過労を防ぐことが重要です。