婚姻率低下の原因

その他

現在、日本の少子高齢化は社会問題となりつつありますが、同時に婚姻率の低下についても問題となっているのです。
2000年以降は特に減少傾向にあり、2020年以降はさらに顕著な減少度合いを示すようになっているのです。
婚姻率が低下してしまった原因について、解説します。

若者の結婚離れとは?

現在、未婚男女の恋愛結婚による結婚限界年齢は男性が40.0歳、女性が37.6歳といわれているのです。

婚姻可能年齢から結婚限界年齢までの間の年代で統計を取ると、一生結婚しないという人の割合は男性が1992年に5%だったのが、2021年には20%と4倍になっています。

女性も1992年には6%だったのが2021年には17%と3倍になり、男性の方が割合は高くなっているのです。

様々な努力を重ねたうえで縁がなくて結婚できないという人もいますが、独身でいることを自分で希望する選択的非婚が特に増えています。

ただし、一生結婚しないという人が増えているものの、結婚を前向きに考えている人の割合が減っているというわけではないのです。

1992年はまだ結婚するのが当たり前と考えられていた時代であり、恋愛至上主義とも呼ばれていました。

当時から現代にいたるまでの間、結婚に前向きな層は男性が40%台前半、女性は50%前後で推移してきたのです。

一生結婚しないという考えに変わったのは、主に結婚に対して後ろ向きの考えを持つ層の一部となっています。

以前は、半分程度しか結婚に前向きではなかったのにほとんどの人が結婚していたという時代であり、結婚自体のハードルはかなり低かったといえるでしょう。

現在婚姻率が低下しているのは、個々人の意識の変化よりも結婚のハードルが高くなってしまったという構造の変化が原因として大きいかもしれません。

結婚したいと思っている人のうち結婚できるのはどのくらいの割合なのかというと、1990年代は男性の8割、女性はほぼ10割でした。

しかし、近年では男女とも6割を下回っているため、不本意な未婚は4割以上になってしまっています。

また、年収別に20代から30代の男女の結婚を希望している未婚人口と、結婚している既婚人口の差を比較したデータもあるのです。

結婚に前向きであっても未婚者は全員結婚できるというわけではなく、特に男性の場合は年収によって未婚となるケースが多くなります。

結婚したいのに未婚のままとなっている男性は、年収500万円未満の層が特に多いのです。

最も差が大きいのは年収300万円台で、20~30代全体の中でも特に人数が多い中間層の不本意な未婚が増えています。

年収500万円以上の男性は、特に結婚したいという強い意志がない場合でも、気が付いたら結婚していたというケースがあるのです。

女性の場合は年収200~400万円の中間層がマイナスとなっていますが、女性は結婚や妊娠、出産などのタイミングで離職することもあるので、留意しましょう。

女性は既婚と不本意未婚との差が小さいため、年収による影響を受けるのは年収が中間層以下の男性に偏っているのです。

なぜ中間層が結婚できないのか

中間層が結婚できなくなっているのはなぜかというと、問題となるのは30年間で若者の所得が上がらなかったことがあります。

所得が増えなくても、税金や社会保険料など国民負担率はだんだんと増えていき、若者の手取りはむしろ減りつつあるのです。

さらに近年は物価高になっているため、結婚を考える余裕もなく自分の生活だけで手いっぱいになってしまっています。

ところが、政府は若者を支援するどころかむしろ子育て支援金を徴収するという暴挙に出ようとしているのです。

今後結婚や出産を控えておりお金を貯めなくてはならない若者の負担を引き上げる政策となるため、ますます結婚したくてもできない若者が増えてしまいます。

20代の人が考える結婚を考えられる世帯年収は、2014年の時点では379万円が中央値でした。

しかし以降の10年間はだんだんと上昇しており、2024年の調査では544万円になっています。

また、国税庁の民間給与実態調査によると25~29歳の男性の平均年収は2014年で381万円ですが、2022年には420万円まで上昇しているのです。

つまり、結婚に必要と考える年収も若者の給料も同様に上がってしまうため、なかなか追いつくことができません。

結婚するためには、共働きでなければ必要な年収に達することができなくなるのですが、国税調査では末子が0歳の世帯の6割は妻が無業になってしまうのです。

たとえ共働きのつもりでも、どうしても一時期は夫にだけ頼らなくてはならなくなる可能性がどの夫婦にもあり得ます。

未婚の若者が、結婚や出産を諦めてしまうことがあるのは若者の価値観が変化したというわけではなく、環境構造によって諦める心がつくられてしまうのです。

お金がすべてというわけではないのですが、いくらきれいごとを並べていても結婚は経済生活で続けていくためにはお金が必要となります。

以前であれば問題なく購入できたものも、値段が上がり過ぎて変えなくなってしまうような結婚と出産のインフレが若者には起こっているのです。

婚姻率の低下は出産の減少にもつながり、1人当たりの母親が生む子供の数は1980年代から大きく変化しているわけではないのですが、少子化が進んでいます。

実は第三子の出生割合は近年増えているくらいなのですが、母数が少なくなってしまった結果少子化となっているのです。

2000年から2022年の年収別世帯数の変化を見ると、世帯年収が900万円以上の世帯は減少していないのですが所得中間層である世帯年収300~600万円が激減しています。

中間層が結婚や出産を諦めてしまっているのが日本の婚姻率の低下や出生減につながっているため、価値観ではなく経済環境の問題となっているのです。

中間層の不本意未婚の若者を増やさないためにも、今以上に負担を増やしていくのは避ける必要があります。

まとめ

日本の若者は婚姻離れといわれており、一生涯結婚しないと考えている人が1992年と比べて数倍になっているのですが、実は以前から結婚を望む人の割合は変わりません。
結婚を望んでも年収の面で不安があり結婚に踏み切れない不本意未婚の割合が4割を超え、共働きでなければ生活ができない環境が結婚を踏みとどまらせるのです。
若者が結婚できなければ出生も減少してしまうため、若者の負担を増やすような政策は避けるべきでしょう。