選択的夫婦別姓制度がダメな理由

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日本では、夫婦の姓が同一であることが当たり前ですが、以前から姓を別にする夫婦別姓を望む声もありました。
別姓を選ぶことができる、選択制夫婦別姓制度の導入も考えられていますが、必ずしもいいことばかりとは限らないのです。
選択的夫婦別姓制度がダメといわれるのはなぜか、解説します。

なぜ選択的夫婦別姓が必要なのか

日本において、夫婦の姓は一緒であることが当たり前ですが、近年では別姓にすることも選べるようにしたいと望む声も増えているのです。
なぜ、選択的夫婦別姓が求められるのかというと、まずは改姓することで各種手続きが必要になるという点があります。

結婚をして姓を変更するときは、非常に多くの手続きをする必要があるため、できれば避けたいという人も多いでしょう。
戸籍を変更する必要があるのはもちろん、健康保険証やマイナンバーカード、運転免許証の名義変更も必要となります。

また、銀行口座の名義も必要となるのですが、銀行口座については各銀行でそれぞれ手続きをしなくてはならないのです。
会社に登録する氏名も変更となるため、社員証や使用しているメールアドレスなども更新する必要があり、かなり時間がかかってしまいます。

もし結婚後にどちらの姓を名乗るのかを自由に選択できるようになれば、改姓しないという選択肢も生まれるため、名義変更の手続きの多くが不要となるのです。

また、改姓することで個人の自己認識にも影響を与えてしまうことがあるため、別姓を希望するという人もいます。
婚姻による改姓は、職場での人間関係に影響を与える可能性もあり、社内の人や取引先との関係がリセットされてしまい心理的負担が生じることもあるのです。

通称として結婚後も旧姓で呼ばれるという人も多いのですが、法律で認められているわけではなく個別での対応とされています。
自己認識を守りながら不便な点を解消するために、この制度が必要とされているのです。

しかし、日本においてこの制度が成立することは非常に難しいといわれているのですが、なぜ難しいのでしょうか?

まずは、日本に昔から根強く残っている考え方が邪魔をして、夫婦別姓を受けいれることができないという事情があります。
古くから残る考え方というのは家制度のことで、家族が父、もしくは祖父などを頂点として統括されている状態です。

戦後には一度廃れた制度なのですが、夫婦は同姓であるということが常識という考え方は残ったままになりました。
もし、この制度を正式に導入するのであれば、家族にある伝統的な価値観について理解することも必要となるでしょう。

また、姓が異なる家族は同じ姓の家族と比べて、家族としての一体感が弱くなってしまうのではないかという懸念もあります。
日本の婚姻制度では同じ姓を名乗るというのが基本的な考えとなっているため、家族の象徴のように受け止めている人もいるのです。

夫婦同姓という価値観が浸透している現代において、別姓となると事実婚の様に正式な婚姻関係ではないように感じるかもしれません。

また、別姓が認められた場合は子どもにどちらの姓を名乗らせるかという点も問題となり、家族間で対立してしまう可能性もあるでしょう。
この制度を導入したときには様々な不安が残ってしまうため、制度を実現するための道筋は複雑なものになってしまいます。

選択制夫婦別姓制度が導入された場合のデメリット

選択制夫婦別姓制度の実現は現状かなり難しいのですが、もし導入された場合でも別姓を選択すると、様々なデメリットが生じると考えられているのです。

何より不安なのが子どもの姓をどうするかという問題で、夫婦の姓が異なるものになると子どもに悪影響を与えてしまう可能性があると思われています。
別姓を選んだ場合は、結婚したときに子どもの名字をどちらのものにするかを決めておき、子どもが複数人誕生した場合は全員が同じ姓を名乗ることとなっているのです。

しかし、姓を決める際に対立することもあるなど、子どもの姓に関しては非常に大きなデメリットとなりうるため、慎重さが求められます。

また、現行法のままで夫婦別姓を希望した場合のデメリットとして、まずは正式な婚姻を結ぶことができないという点があるでしょう。
現在は正式に婚姻を結んだ時点でどちらかの姓に代えなくてはならないため、どうしても別姓にしたいのであれば内縁や事実婚という形でしかいられません。

正式に婚姻を結ばないことで生じるデメリットとしては、まず財産の相続権が認められないという点があるでしょう。
正式に婚姻を結んだ場合は、配偶者が死亡したときに不動産や貯金などの財産を相続する権利があるのですが、事実婚の場合は相続する権利がありません。

配偶者の名義の不動産に住んでいた場合などは、死亡後に住み続けるのが難しくなってしまうこともあるでしょう。
ただし、子どもがいてきちんと認知されている場合は、事実婚であっても子どもには相続権があります。

事実婚によって別姓となった場合、婚姻によって得られる税金の公的な優遇措置を受けることができなくなるのもデメリットです。
正式な婚姻の場合は、所得税に配偶者控除があり、相続税も軽減されるなどの優遇措置があるのですが、事実婚では優遇措置を受けることができません。

夫婦別姓という選択によって、経済的な負担が大きくなってしまう可能性もあるため、注意が必要です。

また、現在は正式に婚姻を結んでいる夫婦間に子どもが生まれた場合は、一般的に父親の姓を名乗ることになりますが、事実婚であれば母親の戸籍に入り母親の姓を名乗ります。
父親の姓を名乗りたい場合は、父親が認知したことを証明したり養子縁組の手続きをしたりする必要があるのです。

まとめ

現在、夫婦の姓を異なるものにすることが可能となる制度の導入について話題となっていますが、実際に別姓が可能になった場合は様々なデメリットがあります。
そもそも、日本には今まで培われてきた価値観によって夫婦の姓は同じものというのが常識となっているため、別姓になると家族という実感がなくなるという人もいるでしょう。
また、子どもの姓をどうするかというのが非常に難しい問題になっています。