今年4月から出産育児一時金が増額します

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出産の際にかかる費用は保険が適用されないため全額自分で負担しなくてはならないのですが、その代わりに出産育児一時金が支給されます。
その金額は2009年から変わっていなかったのですが、2023年4月からは増額されることとなりました。
どのくらい増額されるのか、その背景には何があるのかを解説します。

出産育児一時金の増額について

2022年12月に、岸田首相が子供を出産した際に公的医療保険制度から支給される出産育児一時金を増額すると発表しました。
2023年4月1日から、変更後の金額に変更されます。

この増額の目的は、近年の出産費用の高額化による子育て世帯の負担を軽減するためです。
全国の平均出産費用は2021年度で約47万円、首都圏に限れば50万円以上となっています。

岸田首相が掲げる政策が、こどもの最善の利益を第一に考える「こどもまんなか」改革なので、子どもを育てる世帯の負担を軽減するために増額することとなりました。
これまでは42万円だったのですが、4月以降は50万円が支給される見込みとなっています。

過去に出産育児一時金が引き上げられたのは2009年なので、14年ぶりの増額です。
そして、今回の8万円の増額は過去最大の額です。
出産費用を受け取る際は、直接支払制度や受取代理制度などの方法があります。

直接支払制度は、健康保険組合から直接医療保険に支払う方法です。
この方法なら、まとまったお金を事前に準備しておく必要がありません。
50万円を上回った場合は、その差額分を自分で支払います。

受取代理制度は、医療機関が代理となって一時金を受け取る方法です。
直接支払制度は導入していない産院もあるので、その場合にこの方法が使えます。
ただし、この方法は出産予定日まで2カ月以内の場合のみ手続きができます。

どちらも利用しない場合は、出産後に申請して自分で受け取ることになります。
その場合、先に自分で出産費用を全額支払っておく必要があるので、まとまった金額をあらかじめ用意しておくか、クレジットカードなどで支払う必要があるでしょう。

この一時金は、健康保険に定められている給付内容の一種であり、出産手当金や傷病手当金と同様のものとして扱われます。
受け取ることができるのは、公的医療保険の被保険者、もしくは被扶養者である場合に限られるのです。

また、早産や死産、流産や中絶などを含めて妊娠4カ月以上で出産したというのも条件です。
病院側が参加医療保障制度に加入しているかどうかでも金額は変わってくることになるので、正式発表が出たら確認してみましょう。

会社を退職したことで受給資格が喪失している時も、出産日が退職日の翌日から6カ月以内であり、退職日までに1年以上継続して被保険者だった場合などは、受給できることがあります。

出産一時金を受給する手続きは、出産日の翌日から可能です。
ただし、2年間で締め切りになるため、2年以内に手続きをしなくてはいけません。
具体的な手続きは保険者によって異なるため、保険の種類に合わせて確認してみましょう。

出産一時金の増額の効果

出産の際は、入院費や正常分娩以外になった場合の分娩料、新生児管理保育料、検査・薬剤料、処置料、個室や特別室になった場合の差額の室料、参加医療保障制度の費用などが掛かります。
その合計が、2012年度の頃よりも2021年度のほうが、5万円以上高くなっているのです。

妊産婦が優先するサービスは、病室の環境です。
しかし、良い病室ほど差額負担が大きくなってしまうのです。
今回増額されることで、病室の差額もカバーしやすくなるでしょう。

出産費用は都道府県ごとに異なり、令和3年度の平均は全国で473,000円ほど、東京都は最も高く565,000円、鳥取県は最も低く357,000円ほどでした。
50万円を超えた分は、自己負担となります。

また、令和4年以降に生まれた子供から参加医療保障制度の対象が変更されていて、分娩機関が支払う掛金も減額されています。
そして、今回の増額によってさらに見直しが必要となるかもしれません。

出産費用は、年1%前後増えています。
そして出産費用は、ある程度病院側で決めることができるようになっています。
そのため、出産育児一時金が増額されると、病院側も便乗して値上げする可能性があるため、事前によく確認してみましょう。

実際に、もう値上げをしている病院もあります。
きっちりと増額分の8万円を上乗せするようになっているため、こういった病院を利用すると増額の意味はないでしょう。

では、増額される分の財源はどこなのでしょうか?
これまでの一時金は、74歳未満の現役世代が補っていたのですが、仕組みを根本的に変えることとなり、75歳以上の高齢者も負担するように変更されています。

現在の予定では、一時のうち7%は後期高齢者医療制度から負担することとなっています。負担額は、試算の結果130億円とされています。

出産育児一時金は、令和元年度に91万件が受給していて、合計の支給額は3827億円となっています。
このほとんどはそれぞれの保険組合が保険料で賄っていますが、市町村国保は3分の1を地方交付税、国保組合の場合は4分の1を国庫補助で賄っています。

これは、もはや異次元となった現在の少子化対策のために支給されるものです。
出産費用や子育て費用の負担が大きい若い世代が積極的に子どもを産み、複数人出産できるようにするためのものです。

しかし、病院が値上げをしていては、出産費用の負担を軽減することにはならず、病院のための補助金となってしまうでしょう。
これでは、意味がありません。

この一時金の増額を意味あるものとするためには、病院の値上げを防ぐかもしくは出産に保険を適用するかどちらかが必要となるでしょう。
帝王切開に伴う医療行為は保険が適用されますが、正常分娩は病気ではないので保険が適用されないという点には不満の声も大きいので、なるべく早く適用することが望まれます。

まとめ

出産時の費用は保険が適用されないため高額になってしまいますが、その負担を補うために出産育児一時金という制度があり、2023年4月からは8万円増額されることとなりました。
しかし、それに便乗して値上げをする病院も多く、実際には負担が減らないことも多いため、保険を適用するべきという声も聞こえます。
今後、実際に増額される前に制度をもう一度見直すことが望まれるでしょう。