新技術に関するエマージング・リスク

経営戦略

現在、様々な分野で技術が激しいスピードで進歩しているのですが、新技術の登場によって問題となるのが、エマージング・リスクです。
エマージング・リスクは、新興リスクとも呼ばれる、新たに顕在化するリスクのことを言います。
新技術によるエマージング・リスクについて、解説します。

次々に誕生する新技術

人類の歴史における文明の発展には、必ずと言っていいほど新技術が関わっています。
わかりやすい例でいえば、縄文時代から弥生時代への変化は米作という新技術があったのです。

また、世界的な文明の進歩としては、産業革命が有名です。
蒸気機関の開発や金属工学、織物製造業など多くの新技術によって起こった産業革命は、石炭を利用したエネルギー革命から工場制機械工業の成立、さらには交通革命まで広がりました。

現代の新技術で特に大きな影響を与えたのが、コンピュータの開発です。
コンピュータの元祖ともいうべき歯車式加減算機が誕生したのは1649年とかなり古く、以降は軍事用、企業用などの高額なコンピュータが誕生しています。

現在のパソコンの原型となる家庭用コンピュータが誕生したのは、1970年代に入った頃です。
誕生から50年が経過し、今では生活や仕事、学習などあらゆる分野で活用され、なくてはならないものです。

もしも今、パソコンや類するものがすべて一斉に使えなくなってしまった場合、社会は成り立つのでしょうか?
様々な場面で混乱が生じ、文明的な生活もできなくなってしまうことが想像できます。

日本では、高度経済成長期に多くの新技術が登場しています。
例えば、列車の座席予約システムについては1960年に、オンラインシステムとして世界で初めて実用化されています。

現在も活用されている列車に関わる新技術には、自動改札システムもあります。
実は1964年に研究が開始されて、1967年から実用化されている古くからある技術なのです。
現在では、ICカードへの対応などさらに進化を遂げています。

また、1960年代には天然皮革の需要が増えたものの、3分の2は輸入によるものだったのですが、1964年に人工皮革が誕生したことで、需要の多くを賄うことができるようになっています。

現在の建築技術に大きな影響を与えている柔構造建築も、1960年代に誕生した技術です。
当時31メートルまでと制限されていた高層建築の規制を突破できる技術として、霞が関ビルディングを建築できるようになったのです。

また、産業化ロボットに関しても1968年に開発された新技術で、1980年から広く普及されるようになりました。
現在、世界中の産業用ロボットの7割は日本で生産されているのです。

安定成長期になっても新技術は誕生し、警備会社のオンラインセキュリティシステムも1966年に開発されています。
24時間監視でき、連続銃撃犯を逮捕するきっかけとなって、社会的信用を獲得できました。

ちなみに、今は大半の車に搭載されているカーナビゲーションシステムの元祖は、地図型ナビゲーションシステムで、1981年に製品化されています。
一方で、今はほとんど見ることがない自動車電話は、1979年にサービスを開始しています。

上記のように、今まで多くの新技術が誕生し、今後もさらに増え続けていくことになるでしょう。
しかし、新技術が誕生すれば、エマージング・リスクもまた現れるのです。

新技術によるエマージング・リスクとは?

新技術によって誕生するエマージング・リスクというのは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
過去に起こったエマージング・リスクについて、解説します。

最もわかりやすいのが、自動車事故でしょう。
20世紀初めにはフォードT型が大量生産され始めたのですが、当時は自動車事故が起こることは想定されていなかったため、エマージング・リスクだったのです。

また、飛行機事故も同様にエマージング・リスクとなっていました。
飛行機開発が過熱している中、1911年にフランスで首相が巻き込まれる飛行機事故が起こり、日本ではようやく飛行機を取り締まる法律を検討し始めたのです。

2002年とごく最近の出来事でも、炭水化物を多く含んでいる食材を焼く、炒める、揚げるなどの調理で製造した食品には、アクリルアミドが多く含まれていると発表されました。
アクリルアミドは、発がん性を持つ化学物質です。

近年は自動車の自動運転に注目が集まっていますが、自動運転にもエマージング・リスクがあります。
自動車の安全性に関わることと、損害保険に関わることです。

自動車の安全性としては、想定されていない挙動をしてしまった場合や、自動運転への干渉などが考えられます。
想定されない挙動は、例えばセンサーで認識できない物質による障害物がある可能性なども考えられるでしょう。

また、想定されない通行人の動きによって、人身事故が起こる可能性もゼロとはいえません。
ありとあらゆるパターンを学習させていても、例外はなくならないのです。

自動運転への干渉は、ハッキングなどがあるかもしれません。
セキュリティは強固にされていても、必ずと言っていいほどハッキングを試みる人はいるでしょう。

スマホアプリで操作できるようにして、愉快犯のように事故を起こす可能性も考えられます。
二重、三重のセキュリティで、安全性を高めるしか対策はないでしょう。

また、自動運転の普及に伴って損害保険会社が潰れる可能性もあります。
事故が起こる可能性が限りなく低くなると、保険料を払って加入する人は少なくなるでしょう。

しかし、必ず自動運転を信用せず、自分で運転したいという人は少数ながら残ります。
とはいえ少数を相手に保険を提供すると、保険料が高額になってしまうため、どちらにしても続けることはできないのです。

損害保険の消失は、代理店にも大きな影響を与えてしまいます。
損害保険会社は、代理店を通じて広げていた窓口を縮小させ、今までとは異なる方法で加入者を募集する必要が生じるでしょう。

まとめ

新たな技術の誕生は、私たちの生活を豊かにしてくれます。
しかし、新技術が現れるということは、同時にエマージング・リスクも現れるということになるのです。
世界中で様々な技術が誕生し、日本でも毎年のように技術が進歩を遂げている中で、エマージング・リスクも対応が間に合わないほど現れています。
今後登場が予定されている新技術についても、早期に対応できるよう備えておきましょう。