コロナ禍でのリストラ事情

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新型コロナウイルスの感染拡大によるコロナ禍で、多くの企業が業績を悪化させています。
そのせいで、リストラされ職を失う人も少なくありません。
具体的には、どのような状況となっているのでしょうか?
コロナ禍での、リストラ事情について解説します。

続くコロナ禍とリストラ

コロナ禍も長期にわたって続いており、東京都で最初の緊急事態宣言が発令されてからはすでに1年半が経過しています。
そして、多くの企業もその在り方を変え、コロナ禍に適応した形での事業へとシフトしています。

特に、テレワークを導入して場所を選ばず仕事ができるようにした企業は増えました。
また、飲食店ではアクリル板を設置しているところがほとんどで、多くの店舗や施設はマスクを着用していないと入れないようになっています。

しかし、そういった設備を整え、消毒液なども常備するようになったことで、設置費用や消耗品費などが増えています。
また、それだけ感染対策をしても、多くの企業では売上が落ち込んでいるのです。

度重なる緊急事態宣言と外出の自粛要請、店舗への営業自粛要請によって、赤字となるところも増えています。
営業時間が短縮されたことで、人が余ることもあるのです。

その結果、行われるのがリストラです。
居酒屋などは、深夜営業ができなくなった際に多くのアルバイト店員を解雇しました。
しかし、正社員が解雇されることも少なくなかったのです。

居酒屋や飲食店に限らず、一般企業でもその傾向はあります。
2021年6月の厚生労働省の発表によると、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で解雇・雇止めとなった人は、見込も含めて累計10万人を超えているのです。

特に多かったのが製造業で、累計人数が2万人を超えています。
それに次いで多かったのが、小売業や飲食業、宿泊関係のサービス業で、それぞれ1万人以上にも及んでいます。

製造業は、原材料不足と需要の変化の2つの要因があります。
海外から輸入している原材料の確保が難しくなったことで、製造量が減少して業績が悪化し解雇になったケースと、コロナ禍で今まで需要があったものが使われなくなったり、販売先が倒産、あるいは規模を縮小したことで、売れなくなったりしたケースがあるのです。

小売業は、製造業に近い理由のところと、外出自粛によって購入者数が減少したところがあります。
飲食業や宿泊業は、ほとんどが利用者数の減少を原因としています。

業績悪化=リストラとはならない

会社の経営上の理由での解雇がリストラで、正式にはリストラクチャリングといいます。
日本語では、整理解雇という呼び方もします。
ちなみに、個人に責があり会社を解雇されることは、一般解雇といいます。

この整理解雇には、要件が定められています。
民法で雇用契約の解除については自由と定められているのですが、労働者保護の観点から会社側からの解雇に関しては労働関係の放棄などで修正が加えられているのです。

それにより、解雇をするにあたって客観的に合理のある理由がなく、社会通念と照らし合わせてその判断が相当と言えるものでなかった場合は、権利濫用に該当するとなっています。
その場合、解雇は無効となるのです。

整理解雇については、4つの要件が定められています。
これらの要件に該当するかどうかを総合的に判断して、整理解雇の必要性があったかどうかを決定するのです。

1つ目は、債務整理をして人員を削減する必要があったかどうかです。
会社の業績が悪化し、経営を維持するために人員削減をしなければならないという事態であれば、問題ありません。

コロナ禍によって、売上が大きく下がってしまった時などはこれに該当します。
しかし、財務状況に関しての判断に甘さがある場合や、整理解雇をしたのにすぐ新規採用をしている場合などは、この要件を満たしているとはいえません。

2つ目は、解雇を回避しようと努力していたかどうかです。
整理解雇という方法を選択する前に、経営を改善しようという努力をしたか、それは整理解雇に踏み切ることに納得できるだけのものか、ということを判断します。

人員削減の前に、経費削減や役員報酬の削減を行ったり、助成金の申請をしたり、あるいは配置転換や出向などの方法で解雇を避けようとしていたかなど、解雇を避ける努力をしていたかどうかがポイントです。
整理解雇の前に、希望退職者を募ったかどうかも重要です。

3つ目の要点は、整理解雇の人選に合理性があるかどうかです。
客観的に見て、対象として選定した基準に合理性があるかどうか、ということです。
整理解雇の対象は誰でもいいわけではなく、その基準に合理性があることを求められるのです。

どのような場合なら客観的に見て合理性があると認められるかというと、欠勤・遅刻の回数や懲戒歴、勤続年数、勤務成績、及び全体的な業務への貢献度などです。
そういった点を基準として、解雇するに足る理由があるかどうかを判断するのです。

4つ目は、整理解雇に至るまでのプロセスや手続きが妥当かどうか、という点です。
整理解雇することになった必要性やその時期、規模などを労働組合、及び労働者に説明して、納得してもらえるよう協議する必要があるのです。

こういった要件をすべて満たしていれば、整理解雇は妥当であったと認められます。
内定の取消なども、この要件で判断されます。
要件に該当しているのか、裁判で判断されるのです。

コロナ禍を原因として整理解雇をしたものの、裁判で無効になった例もあります。
例えば、地方のバス会社ではコロナ禍によって月商がかなり減少し、売上が0円になった月もありました。

その後、融資を受けてリース代金の支払い猶予を受け、さらに役員報酬も50%カットしました。
そして、夜間高速バス事業を開始するために運転手の立候補を募ったところ、ごく一部だけが手を上げました。

そして、業績が悪化したため運転手から人員削減をすることにしたのですが、その際に夜間高速バスの運転手に立候補しなかった人員から選びました。
しかし、その点は人選の合理性がなく、本人からの意見聴取や具体的な説明などがなかったことから、無効とされたのです。

まとめ

コロナ禍において業績が悪化した場合、リストラは短期的に効果が得られる方法です。
しかし、リストラも自由にできるものではなく、それを認められるための要件が定められていているため、しっかりとした理由がなければ無効となってしまうのです。
リストラは一時的な経費削減にはなりますが、長期的に見ると経験を積んだ人員を失うことで将来的な成長の妨げになります。
どちらを取るべきか、よく考えましょう。