コロナ禍で起こりうる雇用トラブル

その他のリスク

新型コロナウイルスの感染拡大が続いている今、企業もその在り方を変容する必要性が生じています。
その中で、雇用トラブルが起こることが懸念されています。
具体的に、どのような事が起こり得るのでしょうか?
コロナ禍で起こりうる雇用トラブルについて、解説します。

コロナ禍による有効求人倍率の変化

バブル崩壊後は就職氷河期と言われていましたが、近年では有効求人倍率もかなり向上していました。
リーマンショックが起こった頃は再び下がったものの、それ以降は向上を続けて2017年には、バブル期を超える1.6倍以上にもなっていたのです。

しかし、2020年には大幅に低下しています。
年間の平均で1.18倍と、前年の1.60倍から見れば非常に低くなっているのです。
正社員有効倍率も、4月から12月までの9カ月は1.0倍を下回っていて、特に6月以降は0.8倍前後で推移しています。

2021年もこの傾向は続いていて、10月時点では有効求人倍率が1.1倍前後、正社員有効求人倍率は常に1.0倍を下回っています。
最も低かったのは1月の0.77倍で、それ以降は若干回復しつつありますが、それでも0.9倍台です。

2020年3月と2021年8月の求人データを比較すると、新規求人数が最も増えているのは建設業で16.3%増加しています。
以下、製造業が8.5%、サービス業が7.0%増加しています。

一方で、生活関連サービス業・娯楽業の新規求人は14.8%減少していて、卸売業・小売業は12.6%減少、情報通信業は11.0%減少しています。
宿泊業やサービス業では、6.0%減少しています。

業種別にデータを見ると、娯楽や小売業、宿泊・飲食サービス業はコロナ禍の影響が大きく、下がり幅も大きくなっています。
建設業や製造業は新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた当初はリストラをするところも多かったのですが、現在増えているのは業績が多少なりとも回復してきたということでしょう。

コロナ禍によって起こり得る雇用トラブル

では、コロナ禍においてどのような雇用トラブルが起こると想定されるでしょうか?
考えうるトラブルを想定して、その対策を講じておくと、いざ直面した時に適切な対応をしやすくなるでしょう。

まず既に起こっている問題として、非正規労働者の解雇や雇止めの問題があります。
既にかなりの人数がこのトラブルにあっていて、特にこういった立場の人が多い製造業や飲食業、観光業で被害に遭った人が大勢います。

また、外国人研修生や技能実習生の受け入れの停止というトラブルもあります。
2019年末には300万人近くの在留外国人がいたのですが、コロナ禍によって入国拒否措置を設けられたことで、来日できなくなったのです。
また、既に国内にいた外国人研修生も、企業が倒産して職を失うケースが相次いでいます。

コロナ禍で一躍注目を集めたテレワークでも、雇用トラブルに関係する問題が生じています。
リモートワークを強制的に進めている企業も少なくないのですが、その制度についてのルールが曖昧であり、労働時間の管理や情報セキュリティ対策が不十分なケースもあるのです。

ルールが不十分だと、例えば残業が認められないこともあります。
また、セキュリティ対策が不十分でトラブルが起こった時、その責任を個人に問うようなこともありえます。

トラブルの解決方法は?

このようなトラブルが起こった場合、どのように解決すればいいのでしょうか?
状況によって、解決方法は異なります。
コロナ禍におけるトラブルの解決方法を解説します。

まず、これまで通りの雇用を維持するのが難しい場合、従業員シェアという方法があります。
これは、人材の出向という形で従業員の働く場を確保するためのものです。

コロナ禍の影響で、経済活動はかなり停滞気味です。
事業を縮小したり、従業員を休業したりするなどの対応をしているところも多いでしょう。
しかし、一部の業種では急激に需要が拡大しているものもあるのです。

医療や介護、農業、物流などの業種は、需要が増えています。
そういったところに、従業員を一時的に出向させることで、雇用維持と人材不足の問題を一度に解決できます。
こういった動きを、ワークシェアリングといいます。

例えば、中国では多数の店舗のうち大半を営業中止することになった大手外食チェーンで、休業中の従業員を別の企業で受け入れてもらいました。
その企業にある、生鮮スーパーのデリバリー部門へと出向することにしたのです。

その人材には必要な研修を実施し、出向期間中の賃金等をスーパー側が支払います。
そして、大手外食チェーンでは従業員の雇用を維持し、社会保険等の費用を負担します。
大手外食チェーンでは雇用を維持することができ、スーパー側は急激に需要が増えたデリバリーに対応することができました。

日本では、これまで外国人技能実習生が働いていたため人材不足になっている農業に対して、観光業で働く人たちをマッチングするケースがよくあります。
人材会社が、こういった間を取り持つ役割を果たしています。

また、テレワークを導入した企業に対して、その支援となる人材を紹介するケースもあります。
例えば、テレワークを推進しようとしている企業に、その環境を構築できる人材を紹介するというケースがあります。

中小企業などでもテレワークを必要とするケースはありますが、情報システムの知識に明るい人材が都合よくいるとは限りません。
そういったところに、知識を持った人が出向できるように人材会社が間を取り持つのです。

また、在宅勤務ができる仕事に人材を派遣することもあります。
人事や総務、経理、企画などの仕事であれば、自宅でも十分に仕事ができるでしょう。
採用難易度が高い職種もありますが、そういった職種でも優秀で経験のある人材を採用できるため、コスト削減にもつながります。

まとめ

コロナ禍では、今までにないような雇用トラブルが生じています。
そういったトラブルに対して適切な対応をするには、あらかじめ備えておくことが大切です。
そのためには、起こりうるトラブルとその対処方法について把握しておきましょう。
雇用の継続が難しい場合なども、解決する方法はあります。
諦めずに、その方法を試してみましょう。