働き方改革と採用リスクの関係

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政府が提唱する、働き方改革という施策により、今後の労働環境は大きく変化していく事になるでしょう。
この中で、残業時間の上限や賃金格差の解消などには注目が集まっているのですが、採用についての影響にはあまり注目されていません。
働き方改革と、採用リスクとの関係について紹介します。

働き方改革について

現在の日本では、少子化や高齢化といった問題が大きくなっています。
生まれてくる子供が少なくなり、定年を迎えた高齢者が多くなってくると、日本の社会を支える労働者人口はどんどん減っていくことになります。

しかし、日本の労働者の働き方は、働く人が沢山いた時代から変化していませんでした。
高度経済成長期に確立された、朝9時までに出勤し、夜は5時から6時の間に定時を迎えて就業となる、という働き方でした。
1日8時間労働が基本であり、これは年齢が違っても同様です。

働き手となる人口が減っても、働き方が同じままだったため、労働者一人当たりにかかる負担は大きくなります。
そうなると、労働時間が長時間になり、残業や休日出勤などが増えてきます。

このように硬直した現状を打破しようと、働き方改革が提唱されました。
労働者の人数を増やすために、高齢者や主婦が再び働き手となれるようなシステムを構築し、勤務時間も開始時間や終了時間を一定にせず、柔軟に調整可能とすることで、それぞれのライフスタイルで働き方を変えられるようにしていくのです。

また、働く場所についても変革することが考えられています。
働く場所を問わず、オフィスに出てこられなくても自宅で作業し、会議などもオンラインで行うようにすることで、オフィスでの拘束時間が問題となる人も働けるようになるのです。

働く人が増えることは、人手不足の解消につながります。
各世帯においても、収入が増えることで消費も増えることにつながり、国に治める税金も増えることとなるでしょう。
それにより、景気回復にもつながっていくのです。

こうした働き方改革は、政府が提唱したとしても各企業が積極的に取り組んで行かなくては、何の意味もありません。
これまでのやり方に固執する企業も少なくはないのですが、そうした企業は今後ますます人手不足に悩むこととなるでしょう。

変わる採用リスク

働き方改革については、関連した法案が制定されて今後順次導入されていくことになります。
それを踏まえて、今後の採用リスクはどのように変化していくのでしょうか?

これまでの場合、企業が考える採用リスクとしては採用して早々に辞めてしまう人材や、情報漏洩をしてしまいそうな人材、ストレスに弱い、もしくはストレスを感じなさすぎる人材、金銭的な問題を抱えやすい人材などが当てはまります。

しかし、それ以上に日本の企業で重要と考えられているのは、周囲の和を乱さないような存在であることです。
協調性がない人材を採用してしまうと、会社という組織自体に影響を与えかねません。

しかし、働き方改革によってこの採用リスクには変化が起こります。
働き方改革で、働く場所や時間帯が自由に選べるようになった場合、重要なのは強調性よりも自分の仕事をしっかりとこなすことができる能力になるので、その能力を持っているかどうかを見極めて採用しなくてはいけません。

例えば、今の会社組織では常に上司の指示を仰いで仕事をする社員も少なくはありませんが、これは上司が同じ時間に、同じオフィスで仕事をしているからこそできることです。
これが、上司とは勤務時間も、休日も、働く場所も異なっていた場合はどうなるでしょうか?

まず、仕事を割り振った後上司に何度も電話やメールで指示を仰ぎ、それの返事を待たなくては仕事ができないとなると、仕事の効率はかなり悪くなるでしょう。
また、上司も仕事中以外にそういった相談を受けることになるので、気の休まる暇もなくなるでしょう。

また、会社としては非正規雇用社員がいれば、安い賃金で仕事量を増やすことができるため、人件費を抑えることができたのですが、非正規雇用社員の人件費を正社員と同程度にした場合、人件費が高騰することになるので、少ない人員で同量の仕事量をこなせるように優秀な人材を集める必要が出てきます。

残業時間の削減という点でも、採用リスクがあります。
社員にとっては、残業をすればするほど残業代がもらえるのであれば、たとえ基本給が低くても大丈夫、という面がありました。

しかし、働き方改革によって残業時間が制限された場合、残業手当も必然的に上限を設けられることになるので、基本給を高くしなければ社員が集まらないことになってしまうでしょう。

また、残業してでも仕事を終わらせるということができなくなるので、仕事の納期を長くするか、もしくは仕事が早い人材を多く雇用するなどの対策が必要となります。
この、仕事が早い人材を見極めなくてはいけないという採用リスクもあります。

働き方改革によって、これまでとは求められる人材が異なってくるために、企業にとっての採用リスクも異なってくるのです。
企業は、こうした採用リスクを避けるために、どのような対策を講じるべきでしょうか?

採用リスクの対策

企業は、働き方改革によって変化する採用リスクを避けるために、いくつかのことに気を付けなくてはいけません。
気を付けるべきポイントについて、考えてみましょう。

まず、企業は採用するべき人材を見極めるために、企業のロードマップを作成して、その具体的な内容について考えてみなくてはいけません。
まずは数年後の大きな目標を決めて、そこからさかのぼって必要なことを決めていく、というやり方が効果的でしょう。

目標を決め、そのためにやることを決めた場合、それを実現するには何が足りないのか、という点が見えてくるでしょう。
その中で、どういった人材が足りないのかを考えて、その条件に合った人材を確保するようにしましょう。

例えば、目標を実現するには営業職が多数必要になるものの、今いる営業職では人数が足りないので、営業に向いているような人材を確保することになります。
そうなると、営業が取ってきた仕事を処理するための事務職も必要になるでしょう。

これが、技術職ばかりを採用していたらどうなるでしょうか?
これ以上採用人数を増やせないのであれば、社内にいる人員を営業職に回さなくてはならず、技術職であっても経験のために、という名目で営業することになるでしょう。

意に沿わない仕事をさせられた社員は、営業がよほどうまくいかない限りはストレスを溜めながら仕事をするはめになってしまうでしょう。
それが原因で、早期退職に繋がっていくかもしれません。

採用する前には、まず企業にはどんな人材が必要なのかを見極めて、その条件に合う人材を見つける必要があります。
しかし、そのような人材を見極めるのが難しい、という企業もいるでしょう。
そういう時は、採用業務を採用のプロが代行してくれる、採用代行サービスを利用するのも一つの選択肢でしょう。

まとめ

政府によって提唱されている働き方改革の導入が開始された今、企業でも変化する採用リスクに応じた対応を求められることになります。
働き方改革によって、これまでの企業での勤務とは大きく異なる点もあるので、その目的に合った人材を探していかなくてはいけないのです。
採用だけでその能力などを見極めるのはかなり難しいでしょう。
どんな人材が必要か、まずは将来的な予定を考えるところから始めていきましょう。