不動産の相続登記放置が起こすリスク

相続関連

本来、不動産を相続した際は相続登記をしなくてはいけません。

2024年から義務化されたものの、以前から手続きをせず放置されていた不動産の中にはまだ登記をしていないものも多く、義務化されたことを知らずに放棄しているケースも少なくありません。

相続登記を放置することで、どのようなリスクが生じるのかを解説します。

相続登記をしないと不動産は売却できない

相続した財産の中に不動産が含まれている場合、特に利用する目的もない場合は売却を考えるでしょう。

しかし、登記していない不動産は売却できません。

住宅ローンを利用する時の担保にしようとしても、抵当権の登記ができないため認めてもらえません。

担保にする場合も、先に登記しなくてはならないのです。

不動産は、換価分割という方法で相続人が分け合うこともあります。

換価分割は、財産を換価、つまり売却して平等に分ける方法です。

しかし、相続登記をしなければ換価分割もできません。

相続する不動産の名義は、自動的に変わるわけではありません。

故人の名義のままでは、相続人が売却することはできないのです。

不動産の名義が異なると、売却したくても認められません。

不動産の名義を記録している登記簿には、所有権が移動したときの記録がきちんと残っています。

登記簿を見ると、過去の所有者も把握できるため、最新の所有者が自分になっているときだけ売却できます。

不動産を換価分割する場合は、すぐに売却することになるので、相続人の誰の名義になっても問題はありません。

しかし、場合によっては登記名義のせいでもめることもあるでしょう。

登記名義は、売却代金を受け取る割合に応じて登記するという方法もあります。

例えば、3人で平等に受け取る場合は、3人の名前で登記するのです。

しかし、複数人の名義にすると売買手続きは全員の同意が必要となり、複雑になってしまいます。

一般的には、誰か1人が代表して行います。

売却手続きも1人が代表して行うので、相続人が多くても複雑にはなりません。

ただし、相手を信用できるかどうかが大切です。

また、すぐに売却できなかった場合は、固定資産税が課されるかもしれません。

代表者に納税通知が来るので、納付の責任も代表者にあるのです。

売却代金を分けることを目的とするため、事前に固定資産税や売却代金の分割の割合も決めておきましょう。

遺産の分割割合は、遺産分割協議で決めて明記しておかないと、後から売却代金を分割した際に贈与とみなされる可能性もあります。

トラブルを防ぐために、きちんと記載しておきましょう。

不動産が差し押さえられるのはなぜ?

相続の際は、相続人がどの財産を誰が相続するのか、話し合って決定します。

場合によっては、財産を換価して分けることもあるでしょう。

不動産は、特に相続で分割するのが難しい財産です。

広い土地なら問題ありませんが、普通の一軒家程度の土地は分割すると使いづらくなることもあります。

不動産を売却するか、あるいは相続したい人が代金を支払う、もしくは他の財産と合計して調整する、などの方法で相続することが多いでしょう。

しかし、不動産を相続登記しないまま放置してはいけません。

名義変更をしないまま放置していると、不動産を差押えられてしまう可能性があるのです。

差押えを受ける原因は、不動産の名義が故人のままになっているため、所有者が相続人全員になっていることです。

借金のある相続人がいて、返済を滞納した場合は、たとえ所有しているのが一部だけでも不動産の差押えができるようになるのです。

ただし、差押えができるのは不動産全てではなく、債務者の相続人の法定相続分だけです。

本来、相続登記をしていない不動産は差押えができないことになっていますが、相続人である債務者が法定相続分を相続登記することで、差押登記ができるようになります。

債務者が、最終的に不動産を相続しなかった場合でも、一度登記した差押え分は無くなりません。

一度差し押さえを受けると、他の相続人が相続した場合でも差し押さえられたままになるのです。

もし、差押登記をされてしまった場合は、どうするべきでしょうか?

実は、差押登記には対処方法があります。

そもそも、債務者と無関係な財産となった場合は、差押登記も無効になるのです。

故人の借金であれば、相続人にも責任があります。

しかし、相続人の1人の借金は、他の相続人には関係ありません。

差押を受けるのも、債務者である相続人の相続する財産だけとなります。

方法としては、まず債務者となっている相続人が相続放棄をします。

相続放棄によって、相続する財産がなくなるため、差押登記も無効になるのです。

ただし、相続放棄は相続が発生してから3カ月以内という期限があります。

相続登記が遅れた場合のデメリット

不動産を相続しても、相続登記をしていないと土地の売却などができません。

登記をしなくてはならないことを知っていても、面倒で後回しにしている人もいるでしょう。

書類を用意して作成することも面倒だ、と考えているかもしれません。

しかし、相続登記をすぐにしない場合は、様々なトラブルが起こるかもしれません。

例えば、遺産分割協議で決まっているのに、改めて自分にも権利があると主張する相続人が出てくることもあり得るのです。

また、相続登記に必要な書類は多く、他の相続人にも書類を用意してもらわなければならないケースもあるため、時間がかかることもあります。

売却したいときに登記をしようとしても、なかなか終わらないこともあるでしょう。

相続登記をしないままの不動産は、相続人全員の共有物になっています。

名義が亡くなった方なので、権利は相続人に受け継がれるのです。

相続登記をしないまま新たな相続が発生すると、相続人はどんどん増えていきます。

不動産の売却手続きを進めてしまい、契約が結ばれてから相続登記をしていないと発覚した場合は、引渡し日までに名義を変更しなければ、契約違反として違約金を請求されるかもしれません。

相続したら、すぐに相続登記をして名義を変更しておきましょう。

相続登記は、弁護士や司法書士などの専門家に相談すれば、スムーズに話が進みます。

しかし、自分で行うと依頼費用を節約できるので、自分で行う人もいるでしょう。

まとめ

不動産を相続して登記をしなくてはならないとき、登記をしないまま放置していても今までは罰則がなかったのですが、2024年からは義務化されたため、登記の手続きをしなければ罰金が科されることとなりました。

登記をしていない不動産は売却もできず、相続人全員の共有物とみなされてしまうため、相続した後はなるべく早く登記することをおすすめします。

放置していると、相続人がどんどん増えていくでしょう。