経営者の急病で事業承継が困難になってしまうという事に

事業運営リスク

中小企業では、経営者が高齢になっていることも珍しくありません。
経営が困難になる前に後継者を見つけて事業承継するのが望ましいものの、近年は後継者不足に悩む企業が増えているため、なかなか見つかりません。
事業承継の前に経営者が急病になると、事業承継が困難になることもあります。
なぜ、困難になるのでしょうか?

急病によって事業承継が困難になる例

近年、中小企業の経営者は高齢化が進んでいます。
引退したくても、後継者がいないため事業承継ができず、仕方なく経営を続けているのです。

企業の経営を辞めてしまうと、企業で働く従業員の雇用も止まります。
従業員の生活を守るためにも、いきなり経営を辞めるというわけにはいかないのです。
また、取引先にも迷惑がかかるでしょう。

しかし、自分の意思とは裏腹に経営ができなくなることもあります。
例えば、急病の時です。
急に倒れて入院することになった時、悠長に事業承継をしている余裕はないでしょう。

緊急時ということで、親戚や従業員の中でも古くから働いている人が事業承継をすることもあります。
しかし、事業承継は単に経営者の椅子に座ればいいというわけではなく、きちんと引継ぎが必要です。

いきなり経営をしろと言われて、すぐに仕事ができる人はいないでしょう。
どうしても混乱が生じ、仕事がうまく回らず業績も悪化します。
そして、会社の存続自体も危うくなってしまうのです。

また、もしも死亡してしまった場合は、更なる混乱が生じることもあります。
例えば、遺言書などを作成しないまま急死して、2人の子どもが相続することになった場合に、兄は会社経営に参加していたものの弟は会社経営に関わっていない場合、事業存続が危うくなります。

兄は、事業承継して社長となり、遺産の中の事業用不動産を相続したいと弟に行ったものの、弟は遺産分割を主張して事業用不動産は2人に相続されることとなり、相続後に相場より高く買い取るよう弟が兄に申し出た場合、兄は事業存続のために買い取るしかなくなります。

弟の相続は正当なものではありますが、後から高額で売りつけるためにいったん相続するというのはあまり褒められた行為ではないでしょう。
また、余分な出費が生じたことで、経営も危うくなるかもしれません。

急病になってもスムーズに事業承継するには?

人間誰しも、いつ病気になるかはわかりません。
また、事故などで入院するケースもあります。
いつ起こるかわからないことなので、日頃から備えておく必要があります。

事業承継も、いつ何があってもいいように備えておかなくてはいけないのです。
起こりうるトラブルはいくつかありますが、いくつかの備えをしておくとほとんどの場合問題なく事業承継できるのです。

最初に行うべきことは、事業承継を早期に始めて、計画を立てて進めていくということです。
そもそも事業継承は一朝一夕に終わるものではなく、5年から10年ほどの時間をかけて行うべきものです。

後継者を探しているのになかなか見つからないということも多いため、将来スムーズに事業承継ができるように早くから取り掛かるようにしましょう。
また、後継者が見つかったからといって、すぐに経営を教えるというのも焦り過ぎです。

まずは、従業員に交じって十分な経験を積んで、会社の業務内容や社風、雰囲気などを覚えることから始めましょう。
そして、経営者としての自覚を育てるのです。

事業承継に関する計画書をどう立てればいいかわからないという場合は、専門家に相談してみてください。
承継には何が必要かをリストアップして、余すことなく計画に盛り込んでいきましょう。

事業の後継者には、事業を継続して今まで以上に成長させることができる人材を選ぶようにしましょう。
経営者としての資質を見て、ふさわしい人物を選ぶようにしてください。

経営環境は常に変化していくため、変化に対応できて事業を確実に持続して成長させることができるリーダーを選ぶためには、いくつかの点に注目しましょう。
全ての点において基準を満たしていれば、安心して経営を任せることができるでしょう。

まず、明確な経営ビジョンを持っている人を選びましょう。
経営ビジョンがないと、いちいち足を止めてどうするべきかを考えなくてはいけません。
明確なビジョンがあれば、後は道のりを決めて進んでいくだけです。

組織に対しての責任感を持っている、という点も重要です。
経営において大切なのは、従業員を守ることです。
従業員を守ることが組織を守ることにつながるため、組織を率いていくためには必要な点です。

事業は現状維持を望むだけでは、いずれ衰退していきます。
成長させていくという意欲を持っていることも、大切です。
守るだけではなく、さらに発展させていこうという気持ちを持っている人を選びましょう。

経営における実務能力があるかどうかは、非常に重要です。
実務能力に欠けている人材では、経営も滞ってしまうでしょう。
また、事業の発展の妨げにもなります。

事業承継の後継候補者が複数いる場合は、上記4つのポイントについて比較し、判定すると選びやすいでしょう。
急病になる前に、後継者をはっきりとさせるべきです。

相続が発生したときのトラブルを防止するために、遺言書を作成しておくか生前贈与を行いましょう。
遺言書では、後継者をはっきりとさせ相続についても方針を明確にしておいてください。

遺言書には、自分で作製する自筆証書遺言と公正証書遺言、秘密証書遺言があります。
それぞれ、作成方法や手続き、保管の方法などが異なるため、不安がある場合は専門家に相談してから作成しましょう。

スムーズに事業承継をするために、信頼できる専門家を探しておくことも大切です。
税理士や弁護士の中には、事業承継を専門にしている所もあります。
また、M&Aコンサルティング会社もおすすめです。

まとめ

経営をするうえで、後継者が決まらないうちに経営者が急病となった場合は、事業承継が困難になることがあります。
問題なく事業承継を進めるためには、急病や事故、死亡時などを想定して事前に様々な準備を進め、いざという時に備えておきましょう。
後継者が複数いる時などは、基準を決めて比較し、後継者を決定しましょう。
また、遺言書も早めに用意しておくべきです。